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「過去未来報知社」第1話・第18回

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>>第17回

(はじめから読む)<<第1回
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 その時、笑美の足元で何かが動いた。
「ひやっ?!」
 見下ろすと、丸い毛玉が……いや、
さっきまで大家に抱かれていた黒灰ゴマ猫が笑美の足に擦り寄っている。
「あれ、この子……」
 持ち上げる笑美。
「……重い」
「どれどれ……。あ、また太ったんじゃないの?」
 笑美から黒灰ゴマ猫を取り上げた三宅、眉をひそめる。
「いい年して、これ以上太ったら破裂しちゃうんじゃない?」
 黒灰ゴマ猫はシャーッ! と三宅を威嚇する。
「はいはい、放っておくよ、別に身内じゃないし」
「……なんか三宅さん、猫と会話しているみたいですね」
「少なくとも、さっきの大家の会話よりはスムーズに展開している」
 感心する笑美と男を他所に、三宅は猫と会話(?)を続けている。
 黒灰ゴマ猫はみゃおみゃおと何かを訴えているようだ。
「あ、そうか。今日は満月なんだ」
 急にポン、と手を打つ三宅。
「満月?」
「月齢は13.8から15.8だな」
「余計分かりづらくする解説はいりません」
 無意味に偉そうに言う男に、笑美はサクッと言い放つ。
「じゃあ、集会ですかね?」
 そうだった、と頭を掻く三宅。
 またシャーッ! と鳴く黒灰ゴマ猫。
「すっかり、忘れてたよ。怒らないでよ」
「地域住民の集い、みたいなものですか?」
「まあ、そんな感じ。なんか、ちょっとややこしい案件があるみたい」
「……ゴミの放置とか、不審者とか?」
「なんというか、仲間内の集会だから、役場の人は心配しなくていいよ」
 どことなく歯切れ悪く言う三宅に、笑美は首を傾げた。
「とりえあえず、そこへ行けばネコさんに会えるんでしょうか?」
「多分……。ネコさんがいないと始まらないし。
 でもダメだ。余所者は入れないよ」
「え、それ、ちょと困るんですけど……」
「とりあえず、
 三宅さんにネコさんに伝えて貰えばいいんじゃないですか?」 
「あたしが?」
 根津の言葉にミケはきょとんとする。
「ねづっちが来れば? ねづっちなら皆大喜びだよ」
「そんな地獄に行くのはごめんです!」
 根津は髪の毛を逆立てんばかりに身震いした。
「そんなに恐ろしい集会なの……?」
「女の集まりか何かか?」
「あなたの中の女性像は、いったいどんななんですか?」
 想像して身震いする男に笑美は嘆息交じりに呟く。
「仕方ない、頼まれてやるかー。私もネコさん戻ってこないと困るし」
 三宅はぼりぼりと頭を掻く。
「よろしくお願いします。じゃあ、とりあえず私は市役所に戻ります」
 あなたは? と見上げると男はうーん、と考え、
「ここで、ネコという女を待つ」
「ここで?」
「ああ、それなら僕の隣の部屋が空いてますから、
 そこで待つといいですよ」
 気さくに言う根津。
「いいの? そんなことして?」
「空き部屋にしておくと、また変な人が入り込みますからね」
 ちろ、と三宅を見て言う根津。三宅はぺろり、と舌を出す。
「そんなこと、あるんですか?」
「ありますよ。本当は厳しい入館テストがあるのに、
 この人はそうやってなし崩しにいついちゃってるんですから!
 だから……は」
「え?」
「なんでもないです」

>>第19回

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