布団を洗いにコインランドリーに来た。自動ドアを開け、店内に入ったのとほとんど同時に背後から鈍い音がした。

振り返れば入り口のドアの横に鳩がいた。鳩は地面にうずくまるように座っていた。鈍い音は鳩が透明な自動ドアに誤ってぶつかった音だったのだろう。どこか折れているのだろうか、真横に立っても鳩は首を動かすだけで身体は全く動かさない。

とりあえずコインランドリーで両替をし、布団を洗濯機に入れ終わったが、鳩は微動だにしていない。やや大きめの家の玄関先にある置物なんじゃないかとすら思った。

たしか弱った野鳥を見かけた際は行政に連絡するのが良かったはず。ネットで「野鳥　見つけた」
と検索すると、自分の住む県の窓口の電話番号が二つ見つかった。

わざわざ電話するほどのことなのか、とも思ったが、このまま鳩が動けず死ぬと想像するとなんだか可哀想で、かなり夢見も悪くなりそうなので連絡することにした。
しかし休日だからだろう、どちら窓口にも繋がらなかった。動かない鳩を眺め、無力感を感じた。

何か他に手段があるかとネットを調べるほどに、「野生動物の生存にあまり人間が関与すべきではない」という意見が多く出てきた。
確かに野犬に襲われてるような場合だったら自分をここまでしようとは思わない。なにせ鳩は完全に野生なのだから。

また、鳩が動かない状態は一時的な脳震盪で、しばらくすれば飛べるかもしれないということを分かった。電話がつかない以上仕方ないと自分はそこで諦め、洗濯乾燥が終わりまたコインランドリーに戻っているときに鳩がそこに居ないことを願った。

1時間ほど後、布団を回収しにコインランドリーに戻ると、鳩はいなかった。おそらくは回復し、飛び去ったのだろう。そうあって欲しいという想像をする。
自分は思ったより鳩が好きだったらしい。

ではノシ