見出し画像

「Bad and Crazy(バッド・アンド・クレイジー)」 - スタイリッシュな狂気の麻薬

★★★★

やっぱりイ・ドンウクが好きで、これはもう「トッケビ」でこの沼に飛び込んだ以上は仕方がないのかもしれません。それにしても、いつもどこか同じような気怠い世界観を纏っていながら、毎回背景も性格もまったく違うキャラクターになってそこにいるからイ・ドンウクという役者から目が離せないわけで。「悪霊狩猟団: カウンターズ」の監督、脚本家が手掛ける作品というのも興味を惹かれるところ。

今回のイ・ドンウクは能力は高くてもどこか情けなかったり権力に弱いフシがあって微妙にかっこよくないのですが、それでもイ・ドンウクなので最終的にかっこいい。さらにテンポよくスタイリッシュな展開が交わってなんとも洒落た狂気を感じさせる作品に仕上がっていました。

有能だが「悪い奴」である警察官のスヨルが、「正義」だが「クレイジーな奴」であるKと出会い、ともに警察の腐敗を暴いていくというのが公式のイントロダクション。スヨル(イ・ドンウク)は高卒ですが警察幹部試験出身で異例のスピード出世を遂げたムンヤン警察反腐敗捜査係のチーム長です。実力は間違いないですが出世のためなら権力に跪き、プライドなくゴマをすり、手段を選ばず利害の計算で動くタイプ。

ところが当然できると思っていた昇進話が流れてしまい、国会議員のト・ユゴン(イム・ギホン)のいとこである刑事ト・インボム(イ・サンホン)による交番巡査テギョン(チャ・ハギョン)への暴行事件を担当することになります。

そんなスヨルの前に突然現れる謎だらけのヘルメット男、K(ウィ・ハジュン)。登場から不条理なKはスヨルをボコボコにします。このまさにクレイジーなK、実はスヨルの中の正義感が表出したスヨルの別人格なのです。正義感とは言えぶっ飛んでいるKに戸惑いまくるスヨルですが、やがてふたり(?)は協力して悪い奴をぶっ倒すことになり…。

冒頭でどことなく察することはできるのですが最初は二重人格であることは明かされず、2人が1人の人間を演じるという切り口がなかなか新しいので、序盤ずっとKの存在が不思議で面白い気分に陥ります。次第に観ている側も慣れていって、スヨルとKが当たり前に会話をしていても側から見ると一人芝居状態である状況を感覚的に掴めるようになりますが、実に個性的な世界を築き上げていると思いました。結構オープンに二重人格者として行動するスヨルが面白いです(同僚に「俺の別人格のKだよ、挨拶して」とKを紹介するスヨルがなんか好きです)。

物語自体はわりとノーマルな気がしますが、テンポが良くて重くなりすぎない演出なので(そして全12話)とても観やすく、スヨルとKのそれぞれのキャラクターを眺めているだけでも充分楽しめました。ウィ・ハジュンという役者がまるまる当てはめられることで別人格であるKがくっきりと存在できて、スヨルがKに対して抱く友情のような感覚をリアルに受け容れられるのかもしれません。スヨルと元カノであるヒギョム( ハン・ジウン)とのロマンスもちょっと混ざってはいるのですが、作品内でのベストカップルはやっぱりスヨル×Kといった感じ。かっこいい以上にぶっ飛んでて気持ちの良いドラマ。



▼その他、ドラマの観賞録まとめはこちら。

喜怒哀楽ドラマ沼暮らし

この記事が参加している募集

コンテンツ会議

テレビドラマ感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?