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「九尾狐伝1938」 - 超現代的レトロ朝鮮を縦横無尽に彩る幻想と、麗しき妖怪たち

★★★★★+

ついにきたシーズン2!イ・ドンウクの最適解とも思えるこの作品の続きを本当に心待ちにしていました。絶対的ヒロインであるチョ・ボアがシーズン2では不在という話を聞いたときは不安にもなりましたが、物語としてはチョ・ボアとのハッピーエンドを大前提にその続きを描くもの。もろもろ時代モノっぽかったので前日譚説もありましたが、そうではなくタイムスリップでした。新たに登場する主人公イ・ヨンの過去、そしてシーズン1で悲しい別れを遂げてしまった弟との関係を今一度やり直す、そんな物語です。

弟ラン(キム・ボム)の死から4か月後、自身は人間として生まれ変わったものの、ランの転生を条件に再び九尾狐の力を持ちあれやこれやと仕事をしていたイ・ヨン(イ・ドンウク)。ある日、赤い月食に乗じてやってきた何者かが三途の川の決壊を破り、重要な守護石を持ち去ってしまいます。守護石を取り戻すため、出入り口となっているキャビネットに飛び込んだヨン。彼がたどり着いたのは、韓服を着た人と洋装の人が入り交じり日本語も聞こえて来るような町並みでした。そこはまさかの1938年の朝鮮。やることをやって愛するジア(チョ・ボア)のいる時代に帰りたいヨンでしたが、いろいろな登場人物が彼の足を引っ張ってきます。その中には絶賛兄弟喧嘩中だったランもいれば、かつてのいわくつきの友人たちも…。ところがヨン本人的にはこの時代の記憶は希薄でした。というのも当時のヨンは愛するアウム(のちのジア)を失ってどっぷり阿片中毒に陥っており、まさに黒歴史のど真ん中。精算しなければならない過去にも対峙しながら、現代へ戻るために駆けずり回るヨンなのです。

1938年という舞台を思う存分に活かしたレトロ感ともともとの高クオリティなファンタジーが融合した映像世界はドラマとして秀逸に感じます。役者陣の美しさも際立つ際立つ。時代モノになると韓国ドラマで出がちな日本の軍人キャラの日本語が超たどたどしいというあるあるも、「そもそもファンタジーだし」と思うとひとつの世界観として受け入れられる気がして不思議でした。途中から日本の妖怪も登場し、正直発音がかなり厳しくて日本語なのにかなり集中しないと聞き取れないレベルなのですが、それでも頑張って喋り続けているのでこちらもそういうものとして馴染んでくる…気がします(とはいえ苦手な人は苦手そう)。最終話だけちょっとした役で恐らく日本人らしき人が出てきます。

私がシーズン1からこのドラマで好きなポイントのひとつが、いろいろな妖怪が出てくることで全体を覆っている不気味さ。基本的にヨンはめちゃめちゃ強いのですが、相対する妖怪たちは「得体が知れない」という言葉がぴったりなことが多くて、観ていてずっと不安な気持ちになるのです。それがクセになる。そう、童話って残酷なものだよね、という感触。ビターなチョコレートのような、子供のころ好きだったものを大人向けに味付けして出されているみたいに感じます。何か爽やかには解決しきらないような余韻が毎回あって、逆にクセになるのです。

それからやっぱり圧倒的にかっこいいアクションシーンの数々。今作では女性陣の闘いもまたスタイリッシュ。見所がたくさんありました。キム・ソヨン演じる女山神は容姿も振る舞いもひたすら華やかでキャラクターとしての完成度が凄い。クライマックスはどれだけピンチを迎えようとも頭脳戦でも肉弾戦でも桁違いなヨンを存分に堪能することができます。ランのロマンスが描かれるのに伴い、ランもランでこれまでと違う力が顕れてきます。美しくて最強な九尾狐兄弟という幻想的存在を実写でこれだけのクオリティで観せてくれるのはさすが韓国ドラマ。

果たしてシーズン3を想定しているのかは分かりませんが、一旦大団円に向かってシーズン1と全く違う舞台を速度を落とさず走りきる物語はスピード感があり満足度も高かったです。ともかく永遠に眺めていられる気すらする九尾狐イ・ドンウク。この続きがあることにも期待せずにいられません。



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