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「黒い太陽」 - 骨太な物語を全身で演じる圧倒的に強いナムグン・ミン

★★★★

Instagramでナムグン・ミンの尋常じゃないパンプアップを見てしまったらもうこの作品をスルーできませんでした。「ストーブリーグ」でがっつりハマったころの、シュッとスーツを着こなしてパワーより頭脳で戦う線が細めの美男の印象は跡形もなく、ちょっとやそっとでは揺るがなそうな体幹と常に獲物を睨みつける死地を潜り抜けまくってきた視線に釘付けになります(間に挟まる「昼と夜」が絶妙にその中間ですが)。それでも話し方だけはナムグン・ミン。これはこれでかっこいいのです。

国家情報院でも指折りのエージェントだったハン・ジヒョク(ナムグン・ミン)。1年前に任務の遂行中に行方不明となり死亡扱いにされていた彼が、密入国した船の中で獣のような姿で発見されるところから物語が始まります。

ジヒョクはこの1年間の記憶を失っており、何が起こったのかまったく分からない状態。死んだとされていたジヒョクが生きていたことに国家情報院では動揺が走ります。そして記憶をなくしたまま国家情報院に復帰したジヒョクは、自分たちを陥れた陰謀を探っていくことに。

やがて内部の誰かが裏切っていたことが見えてきて、ジヒョクが記憶を失っている理由にも意外な秘密があることが分かります。ジヒョクに協力する女性情報分析官のユ・ジェイはじめ、登場人物それぞれに思惑がありそれが絡まり合うので、敵味方も順次入れ替わって物語は深みを増していきます。

この系統のドラマとしては鉄板ですが、次第に個人の枠組みよりも政治的な背景が広がっていって、最初は暗闇の中にいるような気分だったのがオープンエアに晒されていく展開。結果的には思ったよりシンプルな構造なのでちょっと物足りなさもあると言えばあるのですが、前半戦は敵側のキャラクターが何層にもなっていて安易に先を見通せず、一方で重みのあるアクションシーンや騙し合いの積み重ねが物語の地盤を強固に作っているのでドラマとしてしっかり下味がついている感があります。また個人的にはもろもろの原点になっていた動機に納得がいったので、ラストに至って腑に落ちる気持ちになりました。

いかんせんナムグン・ミンが圧倒的に存在感を放っているのが印象的。肉体改造はダテでなく、もはや歩き方からブラックエージェントとしての説得力がありました。結構血まみれになりがちなドラマなのでもともと19禁での放送だったようですが、ナムグン・ミンの美しさがあるとそれもまた見応えというか(しかしてこの後はまた神経細かそうな美男も演じてほしい)。

その他、ジヒョクの同僚ソ・スヨン(パク・ハソン)が低めの声が独特の艶を出すハンサムな美女で気になりました。ジヒョクの上長であるト・ジンスクを演じるのはチャン・ヨンナム。最近、ドスの効いた綺麗な妙齢のお姉様といえば必ず彼女とも言える女優さんです。「サイコだけど大丈夫」でも「悪魔判事」でも「普通に怖いわ!」と思わされる狂気がありましたが、そのイメージをもってこのドラマに臨んだときにどうなるか…というのも面白さのひとつでした。

陰謀、野望と個人の怨念と、そういったものをまとめて煮詰めて豪快なアクションで仕上げる一本。やっぱりハードボイルドって日本のドラマよりも韓国の作品の方がしっくり来ます。日常的なストーリーに飽きてきたと思ったときにオススメです。


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