わたしのHAMACHI Vol.01 -朝野高正先生-
【恩返しは、お互いのスタートの祝福を込めて】
【朝野 高正(あさの たかまさ):写真右】
略歴
1978 年 誕生
1996 年 美術系高等学校卒業
1998 年 美術系短期大学卒業
1998 年〜 会社員として働きつつ、恩師の作品制作補助を続ける
2006 年 カルチャースクールにて絵画講師となり、現在に至る
2022 年 栃木県佐野市ご鎮座の朝日森天満宮さまへ、御朱印(書置き)用に作品のご奉納をきっかけに本格的に作家活動を開始(過去グループ展2回開催の他、作品のレンタル、ワークショップ等)
【江口 薫(えぐち かおる):写真左】
合同会社サブマリンCCO
■カルチャースクールの先生同士という間柄
ー本日はよろしくお願いします
朝野:よろしくお願いします。
江口:よろしくお願いします。
ーお二人はどのようなきっかけでお知り合いになったのでしょうか
朝野:もう17年くらいになりますが、私はカルチャースクールで絵画講師をやっておりまして。プログラミング教室ができた際に江口先生が講師として来られたというのが知り合ったきっかけですね。
江口:縁あって私もプログラミング教室の講師になりました。ある時、娘が絵画を習いたいと言い出して。カルチャースクールで学ぶ機会をと考えた時に、朝野先生は「デッサンしかやりたくない」という娘の要望に合わせたレッスンを組んでくれました。個人に合わせた柔軟なカリキュラムを組んでくれる指導スタイルが良かったです。
ーHAMACHIで価値交換をするに至った経緯を教えてください
朝野:カルチャースクールでは年に一度作品展を開いています。その時に江口先生とゆっくりお話しするタイミングがあり、写真をされていることを知りました。その半年後くらいでしょうか、栃木県佐野市の朝日森天満宮に参拝をした折、宮司さまから「御朱印の画を描いてみないか」という依頼を受けました。結果5点ほどご奉納させていただきました。御朱印用の用紙に印刷をするために、写真を撮る必要があったのですが、それを江口さんに相談させていただきました。その際にHAMACHIのことを伺い、それは是非にとお願いさせていただきました。
■価値の交換というやり方は斬新に感じた
ーHAMACHIを実際にされてみて、どのような印象をお持ちになりましたか
朝野:はじめはお金でお支払いをするつもりでしたが、行為で対価を支払えるというやり方は斬新に感じました。お互いの技量で補い合えるということにすごく魅力を感じましたし、(金銭面でも)非常に助かりました。
江口:過去の経験からしても、クリエイターや芸術家の方は金銭的にすごく余裕があるという方はあまり出会ってこなかったので(笑)、HAMACHIを喜んでくださる方が多かったんです。なので今回も提案したら、渡りに船という感じで(笑)。我々の実績にもなるので嬉しかったです。
■新たなスタートをイメージした絵画で恩返しを
ー恩送り(価値提供)に対して、どのような恩返し(対価)をされたのでしょうか
朝野:恩返しは、絵画を2点、お渡しさせていただきました。1点目は小さめの、スズメ桜の枝にとまっているもの。2点目も鳥の絵で、キャンバスにアクリル絵の具を用いて描いたものになります。
ー恩返しをこの2点にされた理由を教えていただけますか
朝野:もともと手持ちであったものよりも、新しい作品を描き起こした方が、新しいプロジェクトの対価としてはふさわしいのではないかと考えました。撮影していただいたのが5枚と多かったので、お返しは2枚にしました。1枚目に比べて2枚目は時間をかけて、額装して飾っていただくことをイメージして描きました。本来なら額装してお渡しするところですが、額も安くないので、裸のお渡しになっちゃいましたが(笑)。
江口:調べたら額も結構高いので、このくらいのサイズがちょうどいい感じでした(笑)。娘の作品もいくつかできてきて、家に飾っている隣に先生の絵を並べられるという嬉しさを感じています。それからいままで絵を飾るということが無かったので、自分の中での新しい試みにもなりました。
朝野:今の日本の住環境を考えると、あまり大きな絵画を飾れないですよね。小さい作品を外国の方みたいに気軽に飾っていただけるような立ち回りをしていきたいという夢もあり、小さい作品を中心に制作しています。今の江口先生の感想はすごく嬉しいです。
ー手持ちの絵ではなく、新たに描き起こそうとされた想いについてもう少し教えてください
朝野:HAMACHIはプロジェクトとして日がそこまでたっていないと感じました。それから代金による対価よりも、得意なことを交換することによって仲良くなりやすいとも想像できました。あとは私自身、作家活動という意味では御朱印の話が初めてでしたので、私もスタート。その3つの想いを込めて、新たに描き起こすことにいたしました。具体的には、1枚目も2枚目も鳥の絵にしました。1枚目は実際のスズメを写真に収め、それを描き起こしました。ふんわりとした雰囲気で、写実性をもって表現しました。2枚目は、やや抽象的に、空の中に鳥が溶け込むように羽ばたいていくというか。モノというのは離れていくと見えなくなるが、確実にそこにはある、昇っていけば見えづらくなるが必ずそこにあるし、いる。HAMACHIが今後、ネットワークが広がっていっても、必ず身近にそこにあるよ、という思いを込めて制作しました。
参考:朝野先生のX(旧twitter)
https://twitter.com/takamasa_asano?s=21&t=TQe_HGP0a71tF_LYwvjvhQ
参考:朝野先生のInstagram
https://instagram.com/takamasa_asano?igshid=MzRlODBiNWFlZA==
■継続的な繋がりのきっかけに
ー作家活動は御朱印がスタートだったのですね
朝野:はい、2年前ですね。今回の件で思い出しましたが、私が作家活動を始めた頃、スクールの生徒さんのご親戚の方がピアノの先生をされていて、コンサートのプログラムのデザインを手助けしてほしいというお話をいただきました。最終的に出来上がった時に、お礼としてコンサート会場に作品を展示していただくということをしていただきました。これはHAMACHIに似ているなと思い起こしました。自分の知らない皆様に作品にふれていただく機会をいただけたことがすごく嬉しかったです。やったことはデザインのアシストをするだけでしたが、依頼主がすごく喜んでくださった。私も嬉しかったです。その後一年後、同じような依頼を受けたりした。つながりの継続性ということも得られたことの一つです。
ー金銭以外の価値交換ならでは、ということでしょうか
江口:より頼みやすくなった ということがあったように感じます。
朝野:私自身も江口先生にお願いするときに、心理的なハードルが下がっているように感じます。継続性という意味では、次をお願いしやすくなる、距離感が近くなる、ということは感じております。
江口:初めは「ほんとかな?」っていう疑惑もあると思うが、一度体験してもらうとリピートいただけるのかなと思います。
ーそれでは最後に一言ずつお願いいたします
江口:今回絵をいただくという初めての経験でした。印刷用に絵の写真を撮る、ということも、あまりなかった経験で、スキルアップになりました。朝野先生にお喜びいただいたことが励みになりました。今後も作品が増えた折にはまた撮影させていただければと思います。朝野先生、これからもどんどん活躍をしてください。
朝野:自分の作品をきちんと形にしていただく作業に協力してくださることが、すごく心強く感じました。江口さんはすごく丁寧で、神社がお持ちの印刷機の特徴に合わせて色調整もしてくださった。各々のスキルが交換できると、非常に世の中に役に立つと感じました。今回は御朱印だったので、拝受いただく方(参拝者)も喜んでくださっています。ツイッターで反応をみると福島からわざわざ御朱印目当ての来訪者もいらっしゃいます。これは一人ではできませんでした。HAMACHIの価値交換は新しいし、非常にいいものだと感じました。
文、インタビュー:山谷文彦(合同会社サブマリン)