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マイ ディア ミスター

Netflix。
韓国ドラマ「マイ ディア ミスター」(私のおじさん)を観た。

昨年末12/27に亡くなった俳優、イ・ソンギュンの代表作の一つの本作で、彼の演じるパク・ドンフンの苦悩、まっすぐな人柄、柔らかな美声に引き込まれた。
彼は管理職だが根っからエンジニアで、人事のあれこれより自分が関わった建物の安全性の方が気にかかる。家族を大切に思い、親孝行で真面目。その彼は、誰にも言えない苦悩を抱えて生きている。

かたや幼い頃から障害を持つ祖母のため働き、祖母を殴った借金取り立ての男を殺してしまい、身を隠して生きている若い女、イ・ジアン。彼女は誰から見ても不幸のかたまりだが、ドンフンの苦悩はジアンと共鳴する。

エンジニアとして優秀なドンフンは一流企業の部長。経済的に破綻している兄二人と、その二人のため苦労が続く母を助けている。
そんなある日、ドンフンは出世闘争に巻き込まれ、愛する妻の不倫を知って悶々と過ごしながら、派遣社員イ・ジアンの暗い過去を知り、正義感から彼女を守ろうとする。
言葉の出ない障害を持つ祖母を抱え、借金取りに追われているイ・ジアンは、周りの大人や世の中に何の期待もせず生きている。人が信じられない彼女は会社でも孤立している。彼女の心を動かす人は祖母だけであり、自分を助けてくれるのは引きこもりのゲーマーと、幼い頃の学校の用務員さん。

ドンフンとイ・ジアン。二人が出会い、運命の歯車は回り始める。
二人のやりとりはとても良いし、ドンフンの兄と弟のダメさ加減も良い。お金を生み出すのが下手な二人だが、人情は熱く、母とドンフンを心から愛している。

ドンフンとイ・ジアンだけのやり取りのドラマならば、この半分の長さでも良さそうだが、それぞれの家族の状況が混み合っており、それを丁寧に描いている。これが韓国ドラマの王道であり家族の絆なくしてドラマはないのかもしれない。

とはいえ、親族や同郷といった仲間意識の強さ、縛られているさまは時に重く、先に進まないもどかしさに一気に飛ばしたい気持ちになる。しかしこれは我慢。

ドンフンは、妻の不貞に耐え、実家の母や兄たちの期待に応え、イ・ジアンに迫られ心が揺れても大人の分別を見せ優等生だ。辛くても耐え抜くのだ。
しかし、ただ一度、号泣するシーンがある。
家でたった一人で食べるシーン。

韓国ドラマは食べるシーンが多く、飲む回数はハンパない。だからドンフンはいつも人に囲まれ、人に誘われて飲み食いしている。
その彼が、たった一人で食べる孤独。
張り詰めていた糸が切れたように彼は泣く。
それまで大人の表情しか見ていなかったから、子供のように泣く彼がとても印象的だった。

ご飯は人と食べた方が楽しい

これは私の信条だが(もちろん一人でもよく食べているけだ)、人と食べながら喋る時間は、心を癒してくれる時間でもあるのだなあと強く感じた。
一人で済ますご飯は、栄養補給。
人と食べるのはランチとかディナーと呼びたい。
もちろん気の進まない相手と食べるのは嫌だけど、ものすごく美味しかったら、相手に対しての気持ちも和らぐ可能性がある。

食べて楽しい相手がいるのは幸せだ。
美味しいと感じ、そのリアクションが同じだったりすると幸せになれる。

ドラマの話より食べる方に行ってしまいました。
食いしん坊なので。

良い映画です。オススメ。
イ・ソンギュンのご冥福を心よりお祈りします。


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