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言い切られると弱い系女子

彼の自信はどこから来るのだろう?

幼い頃から私は周囲の視線に敏感だった。
始まりは小学校で同じクラスの男子に悪口を言われたことだった。私にはまるで心当たりがない、本当にただの悪口だった。当時の私はそれでもひどく傷つき、泣いてしまった。そのことを友達に相談すると、友達は親身になって話を聞いてくれて同情してくれた。それで私は一人ではないのだと心強く感じた。それも友人が私の陰口を叩いてるのを知るまでだった。
それ以来、私は常に周りに悪口を言われるのではないかと心配になり出来るだけ目立たないように慎ましく過ごそうと努めてきた。
高校になった頃に私は部活選びに苦労していた。ここでもやはり出来るだけ目立たない選択はどれだろうかと考えていた。そうしているうちに仲間内でも部活を決めていないのは私だけになった。
「まだ部活決めてないの?」
その言葉には棘は感じられない。しかし、本心ではどうだろうか、と勘繰ってしまう自分がいる。部活一つ満足に決められない鈍臭いやつだと思われているのではないか。
その日の放課後、グループの面々はそれぞれの部活へと向かった。私はやはり部活を決めきれないまま一人で下足箱に向かうと一人の男子生徒が立っていた。
「きみ、まだ部活を決めていないんだろう?」
言葉は疑問系だったが、その目は確信に満ちていた。なぜ分かったのだろうか?
「それも帰宅部を決め込んでいるわけではなく、部活選びに迷っている。何かしらの部活には入らなければならないと思っている。」
ズバリと言い切る言葉は麻を断つように私の懐へと入り込もうとする。
「特に好きなものはなく、特に嫌いなものもない。いや、まあ多少は義務感もあるのかな?まあいい。そんな君に相応しい部活を紹介しよう。それは」
彼は大袈裟な身振りで私の方へと手を差し伸べると
「演劇部だ。」
そんな彼の自信に満ちた素振りに私は小さく感動していた。
「そんな、私、あの、演劇なんて、無理です。」
「もちろん初めはみんな無理だ。しかし取り組んで初めて自分の才能に気づく。君には光るものがある。僕が見つけた光だ。きっとみんなも見たくなる。」
まずは演技を見にきてくれ。この日この時間に校舎裏で。
彼はそれだけ言って、用は済んだとばかりに去っていった。
私は返事をしていないのに、来るものだとやはり確信しているのだろう。
私は迷っていた。
今でもあの目で見られるのではないかと怯える自分がいる。
しかし、以前と違うのはそんな自分に期待してくれている人が居るということだ。そしてどうしてあんなにも確信めいたことが言えるのかがどうしても気になった。
それについてだけ確認をしてみよう。
そう思って私は日時をメモ帳に書き留めた。

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