26歳のシカゴ ナンパって受け方が難しい

フェイスブックを確認すると2015年12月にポストしているので、26歳になったばかりだった。くだらない仕事に嫌気が積もり積もってそもそもくだらないのは私自身じゃないのと気づいてじゃあどこに行っても同じじゃん、で、どうせどこにもいけないのなら〜って歌を何百回も再生したipodclassicを買ったのは大学1年の頃だったか。そもそもipodを間近で見たのはアメリカであったわけだしいやそれは2007年のことだからそんな訳はないのだけどしかしまあ私の記憶の中にはじめて登場したスティーブ・ジョブスの産物は2007年の12月なのである。

だからってわけじゃないけど知り合いの結婚式に呼ばれたとき、今考えれば3年目で何が煮詰まっただけど煮詰まって前述のロックバンドに傾倒し、毎日同期に歌詞を送りつけるという中二病も真っ青の所業で徳を積んでいたので、それくらいやってもバチは当たらんだろうと弾丸アメリカを決行した。北米行きのアメリカンエアラインで往復9万もしなかったとはいえ、毎月24日には銀行口座残高が300円を割りこむ私には大きな出費で、行きの便は飲み放題付き映画館と思ってワインを5杯ほどお代わりし、ウィークエンドシャッフルで宇多丸さんも絶賛していたインサイドヘッドで嗚咽を漏らしながら号泣。すぐにシカゴについた。

シカゴについてから結婚式まで1日時間があり、一人で過ごした。airbnbで借りたアパートの1室はヒップなエリア(当時アメリカからヒップの概念が輸入されたところだったから今はダサいのかもしれないけどそう呼ぶ)にあって、シブいレコード屋やクラブ、シカゴで一番のパンケーキがぜんぶ歩ける距離にある。結婚式に着ていく服を買おうと、古着屋が並ぶエリアに目星をつけ、電車を乗り継いで古着屋ホッピングに出かけた。土地勘がないため「いい感じ」の印象を受けた店はわりと低所得者層のエリアにあるようで、同じ駅で降りた白人のおばさんに「結婚式で着る服を探しに」来たことを告げると「多分・・・ないと思うけど」と怪訝そうな顔をしていた。振り返ってみるとおばさんはいかにもなソーシャルワーカーで、記憶の中では青いボードに書類を挟んでいて、おそらく訪問に来てたんだろう。おばさんのいうことは正しくて、中心部からかなり外れたところにあった古着屋は掘り出し物がある時もあるのだろうが状態が悪く店も小さくてとてもじゃないけど結婚式に着ていけそうな服はない。店内を見るともなく眺めていると、近くに住んでいるのであろう半ホームレス風の黒人のおばあちゃんが怒鳴り込んで来て「なんでこれ買い取ってくれないの!?」と大暴れしていた。アメリカってすごい。他にも目星をつけていたところを回ってみても、やはり結果は同様で、最終的に借りた部屋から5分の古着屋でh&mのドレスを10ドルで買った時にはもう20時を回っていた。

そのヒップなエリアは当時chicago hip areaなんて検索すると上位に出てくるような街だったので、夜がふけてくるとビールを片手に持った若者がうじゃうじゃ湧き出て、道端のバンド演奏とクラブの音漏れに体を揺らす。開けた通りに出てこの光景をみたときの言いようのない開放感と興奮ったらない。うまくいかない人間関係くだらねー仕事ダルいおっさんとの飲み会上がらない給料それ以前に何やっても中途半端でダサい自分そういうもの全部置いて知り合いがいない街の金曜の夜の混沌が眼前にあり、その街に自分が存在しているランダムさ、全部に興奮していた。

時差による強烈な眠気との狭間で一杯だけ飲みに行こうか!とうきうきしていると、唐突に「友達が可愛いっていってるんだけど」と言われ、その友人らしきグループを指差していた。「ありがとう!シカゴは地元じゃないからオススメの場所教えて、飲もう!」くらいが良かっただろうに、ナンパされたことがない私は、咄嗟に「私は旅行してる外国人。パスポートがないと飲めない。」と誘われてもないのに2歩先読みした回答をしてしまった。(アメリカは飲酒の際に身分証が必要、外国人はパスポートと読んだばかりだった。)「あ、あぁ・・・」とそのあと会話が続かなかったのは言うまでもない。ナンパってどう受けるのが正解なのか。

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