【サバモニ】サバンナオオトカゲの危険性【観察結果】
「サバンナオオトカゲ」で検索すると、2023年に発生した逸走事故・および逸走個体の目撃情報が上位に表示される。
しかしながら、いずれのメディアもサバンナオオトカゲ(ないしサバンナモニター)の性質を正しく報じているとは言い難い。
(あまりにも「怖がっている人の声」と、ソースが不明瞭なネット情報だけに基づいて報道されている)
そこで本記事では、およそ1年間に渡ってサバンナオオトカゲを飼育し、間近で観察を続けてきた筆者が、その危険性について記していく。
(2024/2/26 大きさについて追記しました)
検証① サバンナオオトカゲは狂暴?
まずは誤解されがちな「狂暴かどうか」について。
前提なのだが、サバンナオオトカゲの野生下でのエサは昆虫やカタツムリである。飼育下であれば専用フードや鶏肉などを与えられることが多い。
また、その名の通り本来の生息地はアフリカのサバンナ。ライオンやハイエナといった肉食動物や、ゾウやカバといった大型動物が多く生息することは想像に難くない。
そんな「自分より強い生物がいる環境で、カタツムリを食って暮らしているトカゲ」が、攻撃的な性質であるだろうか?無論そんなはずはない。
実際、サバンナオオトカゲを手で掴むと、もぞもぞと後ろに下がって逃げ出そうとするし、しばらく放っておけば狭い隙間に潜る。
この「逃げる・隠れる」という動きからも、彼らの臆病な性格が分かるはずだ。
そもそも「食べるため」でも「防衛のため」でもない攻撃行動をとる野蛮な生物は人間くらいなものである。
オオトカゲはちっとも狂暴ではないし、繁華街の酔っ払いやらSNSに住むクソリプマンやら、狂暴という語が相応しい怪生物は他に存在する。
結論①:カタツムリを食うようなやつが狂暴なわけない。人間の方が狂暴。
検証② サバンナオオトカゲは噛む?
口を開けているところに指を突っ込み、その状態で口を閉じれば噛む。
同じ性質を持つ生き物に、ヒト・イヌ・ネコ・ウサギ・ハムスター・ヒト・鯉・ヒトなどがいる。
……そう、噛むかどうかと言われれば、そりゃ口があるんだから「噛むという行動はあり得る」としか言えない。
ただし、サバンナオオトカゲは基本的に「攻撃のために噛み付く」性質は無い。口の中という、いわば弱点をわざわざさらけ出して攻撃するような真似はしない。
また、エサを食べる際も、基本的に噛み砕くというよりは丸呑みする。そのため、犬や猫のように「突き刺す・引き裂く」機能に秀でた歯を持っていない。
以上の理由から、噛まれる場合「指をエサと間違えて引っ張られる」パターンである。
ただ、腹を空かせた生き物の前に指を差し出したら、そりゃエサだと思われるだろうという話だ。
飼育者であれば給餌の際に起こり得るが、逸走した個体に噛まれたのだとしたら、それは面白半分で指を差し出した愚か者が悪いに決まっている。
なお、もちろん噛まれれば痛い(筆者も何度か噛まれた)。
しかし、それにしたって他の生物と比較して飛び抜けて危険ということはない。
見れば分かるのだが、サバンナオオトカゲは口の大きさも歯の長さもチワワに劣る。
チワワの頭骨画像は用意できなかったため、チワワと同じイヌ科から、タヌキの頭蓋骨を掲載した。鋭く大きな歯が見えるだろう。
サバンナオオトカゲの歯は大型個体でも長さ数ミリ程度。犬猫に比べれば、深い傷になるリスクは遥かに小さい。
ただし、口内細菌のためか噛まれた部分が腫れたり痒くなったりすることは注意。
結論②:口がある生き物は全部噛むに決まってる。チワワの方がヤバい。
検証③ サバンナオオトカゲの大きさは?
生体で全長80~90cm。
ネット上には120cmという記述が見られるものの、これはおそらく他種と混同されていた時代の情報がそのまま転載されて残ったもの。120cmという報道は調査不足と考えて構わないだろう。そういうとこだぞ。
また、当然ながら「全長」というのは頭部の先端から尾の先端までの長さ。
そして、サバンナオオトカゲは体の4割ほどを尾が占める。
ということは、頭と胴体は合計しても50cm前後。ネコと同じか少し小さめ程度である。サバンナオオトカゲは手足が短いぶん、猫より小柄に感じる。
ちなみに我が家の個体は亜成体であり、全長はおよそ50cm。胴体は男性の片手に余裕を持って乗せきれる大きさだ。
これを大きいと感じるかは人それぞれだが、「1m越えの巨大トカゲ」という報道は過度な煽りであることはお分かりいただけるのではないだろうか。
結論③:頭胴長50cm弱。ネコと同じかちょい小さい。
総括 サバンナオオトカゲは危険?
というわけで、サバンナオオトカゲが危険かどうかと言われれば「犬猫や人間の方がよっぽど危険」というのが、身近で観察してきた筆者の見解である。
もちろん、逸走させた飼育者の不注意は問題だろう。
しかし、管理が甘かったとはいえ、逃げたサバンナオオトカゲは飼育者にとって大切な家族だったはずだ。
家族――愛犬が、愛猫が、愛鳥が、あるいは幼い子供が、目を離した隙にどこかに行ってしまった。
そんなときに、不注意を責めるだけでなく、「無事に見つかるといいね」と思うのが人情ではないか。
いなくなったのがオオトカゲだったというだけで、その人情を失うような輩と、そうした感情を扇動する報道。
たかだか80cmのトカゲ1匹より、そんな醜い精神の人間の方がよっぽど危険ではないかと筆者は考えてしまうのだ。
心無い報道が検索結果から姿を消すよう願って、本記事を締めくくりたい。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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