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解決すべきは作業効率の改善です


宇宙一外食産業が好きな須田です。

飲食店で販売する商品は、勿論、料理とドリンクです。
製造している場所は厨房であり、販売している場所はホールです。

シンプルな考え方です。

どなたも異論はないと思います。

製造と販売と考えると、
例えば、自動車産業をモデリィング出来るのではないかなと思います。

モデリィングとは、ざっくりとした説明を致しますと、成果を上げている対象を決めてそれを真似てみる手法のことを指します。

武道の世界では「守・破・離」と表現されることの「守」の部分です。

トヨタ自動車で有名な「カイゼン」、今や世界中でモデリィングされていることですが、飲食業界も導入してはいかがかと常々思っております。

トヨタ自動車では部品や工具の設置位置を変更して、ある業務を行うスピードを秒単位で短縮していき、結果的には数億の利益を向上させたそうです。

数秒で数億


事業規模の大きさがこの差を生むとは思いますが、さて、我々が従事している飲食業界では如何でしょうか。

私は常日頃、厨房を生産部門、ホールを販売部門と捉えております。
普通ではない、非常識な考え方と思います。

自動車産業では、生産部門は工場にあたり、販売部門はディーラーになると思います。
仮に生産部門の能力が強大だとして、販売部門がそれに相応しい販売力と販売網が揃っていれば販売力は強力なものとなり、とてつもない成果が表れると思います。

しかし、生産部門の能力が過剰な場合は、過剰生産となり在庫がだぶつきます。
生産部門を維持するコストが経営を圧迫します。
生産部門の方々は、販売部門に圧力をかけ出します、「もっと売って来い」となり、成果を上げろと欲求し、チームとして非常にアンバランスな結果となってしまいます。

逆に、販売力だけが巨大な場合は、受注はバンバンとれます、製造依頼もバンバン入ってきます。が、製造が追いつかず納期は3か月待ち6か月待ち1年待ちとなり、キャンセルが相次ぎ悪い評判が立ち、経営は頻拍します。

生産と販売、わかり切ったことですが、
このバランスが非常に重要になります。


ここまでは異論を挟む方はいらっしゃらないと思います。

では、さて、あなたのお店では如何でしょうか?
この生産と販売のバランスはとれていますでしょうか?

適切な厨房面積で適切な人員で、適切な機材が揃っていますでしょうか?
客席数は足りており、卓数も満足できる状態でしょうか、ホールスタッフは十分確保されておりますでしょうか。

厨房もホールも、スタッフは十分に教育されており戦力的に問題無く十分に闘える状況でしょうか?

そうなっているお店も違っているお店も多々あると思います。

そこで、今日は生産部門である厨房が広くなってしまう原因に関して考察したいと思います。

先だって、酒屋さんから知り合いの方が居抜きで店舗を売却したい意向があるので、買ってくれるところを紹介して欲しいとの連絡があり、平面図をメールしてきました。

平面図を確認したところ、一見すると問題なさそうでしたが、検証するとやはりオペレーションに非常に苦労するレイアウトであることが判明しました。

居抜きで手に入れた物件を改装した物件で、34坪56席、坪1.64席の肉バルのようでした。
都心の一等地にあり、土日は効かないですが平日は問題ない集客力が、特にランチは爆発しても良いような物件した。
実は、このお店も厨房が圧倒的に広すぎて、店舗面積のおよそ30%が厨房で、厨房スタッフの数が必要な厨房レイアウトで、ドリンクステーションがカウンター席を併用してホールに突き出ているレイアウトです。

厨房内の動線は1mもあり、何かをするにしても移動距離と時間を取られ、客数・皿数に対して下げ場が小さくバッシングされた食器が溢れることが想像でき、大きな柱が厨房とドリンクステーションを分断している状況です。

ここもお客様の受け方を間違えた店舗でした。


入店と同時に、最初に何を見せてどのようなメッセージを伝えるのかを理解せずに作ってしまった店舗です。

居抜き物件の怖さはここにあります。


理解せずに内装が綺麗とか、機能的に見えるとかで手を出すと痛い目にあいます。

居抜き物件の場合は、その店がダメだったということを踏まえて、希望的観測と自己イメージの高さを排除して、厳しく物件を検証する必要があります。


さて、厨房が広くなってしまう原因は複数あります。

中華業態の様に中華レンジの奥行きが90cmもある場合もありますが、通常は奥行き60cmか65cmです。


前後並列に厨房機器を並べて、奥は冷蔵庫や火のラインにして、通路を挟んでフロントはコールドテーブルとすると、厨房内は1,900もあれば十分です。

通路幅は700の想定です。


因みに、この店は2,500もありました、私には理解不能です。
バックもフロントも奥行き750の機器を設置してありました。

このような、前後で機器が並ぶレイアウトが最も一般的なレイアウトと思いますが、面積をとってしまう原因は通路幅です。

通路幅を確保する理由は一つだけです。
厨房内ですれ違うことが出来ないから。
これだけです。

では、日に何度すれ違いますか?
それは、どのくらいの頻度で発生しますか?
その必要性はどの程度ありますか?
そもそも、すれ違わなければならない理由は何ですか?

このような検証もせずに厨房のスタッフの要望だからと言って厨房を拡げると、客席を確保出来ずに売上が伸びなく、このお店のように撤退を余儀なくされる事態となります。

自動車産業に例えるなら、生産能力を充実させたつもりが、非効率な製造ラインで維持コストがかさみ、思った生産能力を発揮することなく、脆弱な販売力で何とかカバーしなければならない状態です。
これでは経営を圧迫してしまうのは火を見るよりも明らかです。

実は、根本的な原因は通路幅ではなく、
通路幅を広く確保したい厨房スタッフの欲求に、
根本的な原因はあります。


この欲求の出何処をカイゼンしないと、
本当のカイゼンにはつながりません。

厨房スタッフは、いつも狭くて暑くて環境の悪いところで仕事をしております。

そこで、新店を出すときにはその不満を解消したくて、
会社側に厨房が狭い、
作業効率が下がっている、
環境も劣悪だ、
カイゼンして欲しいとなってしまいます。

私が以前中華のデリバリー企業で社外ブレーンとして働いていた時に、この現象は実際に経験しました、他のクライアントの案件でも同様の経験はしてきました。

厨房スタッフは不満の塊です、
そこを解決しないと厨房はコンパクトになりません。


中華のデリバリーのお店を作った時に、コンパクトな厨房にしました。

その結果、今までよりも動く距離が短縮され、一つの業務を集中して行えるようになり、排気風量も増価させ空調も完備させ、疲労度も下がり環境も改善されました。

新店の料理長は、
「この店汗をかかないで作業が出来ます。
無駄に動くこともないので疲れないし、
今までよりも早く商品が出せています」と、
言ってくれました。


彼は都心の高級中華の料理長を務めた経験もある、非常に優秀な方でした。
この1店舗を作ってから、新店を計画する際に厨房を広くして欲しいと、他の厨房スタッフから要望が出ることは無くなり、不満は解消されていきました。

私が若いころ、和食の板長をなさっていた方がカラオケボックスの料理長に就任した案件がありました。
料理をウリにして集客を図り、月商1,500ほど上げており、原材料費は売上対比12%の業態でしたが、その料理長に怒られたことがありました。

その方は厨房に入るなり、

「こんな狭い厨房で働けるか!今すぐ何とかしろ!」

と怒鳴られました。

会社と話しをして、勿論厨房を拡げることは出来ないので何とか納得というか、我慢して働いて頂きました。

オープンして2週間後に訪問した時に料理長が言ったことは、

「須田さん、この厨房最高!
全く移動しないで全部手の届く範囲に必要なものがあるから最高だよ、怒ってごめんね」 です。


彼が経験してきた和食の世界では、広い厨房が常識となっています。

板場の考え方が当たり前で、それは客単価の高い業態で複数の調理人を確保して、事前に多くのパーツを仕込み、提供の段階でパーツを集めて盛り込む場合の厨房が常識となっています。

実はこの現象は、日本の飲食業界に深く広く浸透している常識です。

ここに間違いがあります。


厨房に必要な人数も調理工数も、製造するパーツの種類も数も違っているのに、広さを確保する考え方だけは浸透してしまいました。

以前ある地方都市の洋食レストランでのことですが、広い厨房に調理スタッフが3名で皿を取るのに6歩、商品を提供するのに4歩、洗いあがった食器を取りに行くのに往復で26歩も歩く厨房が有りました。

定点観測して驚きました。

今思えば馬鹿な質問を料理長にしてしまいました。

「疲れませんか?」

当然怒ってくるかと思いましたが、

「いや、20年以上これが毎日ですから、もう慣れました」


違う意味で、驚きました。

この環境に慣れていること、諦めてしまっていること、それを若いスタッフにも強いていることに。

そして尊敬の念が沸いていました。


何とかして差し上げなければと、使命感も沸いてきました

その後、建物ごと立て直し、今までの半分以下の厨房にして作業内容を限定し作業動線を整理した厨房を作りましたが、半分の広さの厨房になり生産量は1.5倍となり業績は圧倒的に向上し、何故か、料理長は血圧が下がりました。

広い厨房を要求してくる

厨房スタッフの気持ちは、痛いほど理解出来ます。


私も沢山の業態で働きましたが、昔は空調機が無いのは当たり前で、厨房排気もまともに確保出来ていない店も沢山あり、熱くて煙くて危ない厨房で働いてきました。

そんな環境を渡り歩いてきた料理人の方々です、ご自身とスタッフの権利を主張したくなる気持ちは十分理解できます。


でも解決すべきは作業効率の改善であり、
広くすることではありません。


その違いを理解なさっていない方々が、残念なことに沢山いらっしゃいます。

客席が狭くなると販売力は格段に下がり、
絶対売上が確保出来なくなります。


明日は、これに関連して起業家が陥る現象に関してお話しします。

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須田光彦@宇宙一外食産業が好きな男

飲食業に関するあらゆる問題を解決。年商1,000億円を超える大手外食チェーンから個人企業まで、約500件の繁盛店を作ってきた実績を持つ。日本テレビ系『有吉ゼミ』の「芸能人の心配な店」に出演中。http://u0u1.net/v70o
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