アラフォー上海留学日記【65日目】

5/1 水

カーテンを開けたら、昨夜は見えなかったウルムチがあった。建物は茶色かクリーム色が多く、乾燥地帯を思わせる。昨日買ったクルミ入りのヨーグルトドリンクを飲む。うまい。シャワーの水圧が強く、あついお湯が出るのがうれしい。テレビで売ってる健康食品もウイグル仕様。

ちゃんと日焼け止めを塗ってから、ごはんを食べるべく大バザールなるところに地下鉄で向かう。地下鉄の荷物検査が厳しく、昨日買ったばかりのライターを没収された。短い命だった。
地下鉄はもちろんウイグル語併記。乗客の外見も中央アジアふうの人が多く、耳に入るのは聞いたことのない言語。異国情緒が盛り上がってきた。中国だけど中国じゃない、そういう場所にきたんだ。光がもう上海とぜんぜん違うもの。乾燥地帯の太陽特有のソリッドさ。木漏れ日も濃い。帽子持ってきてよかった。地下鉄にいたおじさんの帽子がおもしろかった。

大バザールの区画に入るにも荷物検査が必要で、人が集まるところには公安、特警、武警のものものしい警備が睨みを効かせている。ライフルのような銃を持って歩いている警察も多くてギョッとする。警備のせいで、街中がずっとどことなく不穏だ。

大バザールはまあ、単なる土産物市場なのだが、バザールはそもそもそういう特産品の交易の場だし、特産品を見るのは楽しい。デカくて硬いパン、果物、ドライフルーツ、乳製品、ラクダヨーグルトなど。クルミ入りの硬いパンを買った。

ちゃちゃっとごはんを食べてホテルに戻らないと電車の時間が危ういので、向かいの区画にある食べものブースに移動するが、ここでも荷物検査。めんどくせえなぁ、おい。
焼きラクダを食べてみたかったのだが、合わないものを食べて電車内で体調を崩したくないのでやめた。抓饭を買って食べ始めると、強い太陽光で体力を削られたのか、喉をうまく通らない。味はすごくおいしいんだけど。クミンがきいてて、少し酸っぱい漬物みたいなのが合ってる。水で流し込んで、なんとか半分くらい食べた。

バス停に向かう途中で、花のお茶屋さんがあった。いいね。モスクと寺が合体した建物があった。いいね。路上にフルーツ売りがあふれていた。いいね。抓饭屋もおいしそうだし、散歩がはかどる。もう一泊はほしかった。

いちばん物欲がくすぐられたのは謎の油。ヘビとかサソリとかの絵が描いてある。ヘビが入ったタライに油が注がれており、その油を小分けにして売っていた。もし今度ウルムチに行く機会があったらぜったい買う。

バスでホテルに戻り、できる限りスマホを充電してからチェックアウトし、近くのコンビニでライターを買う。1元。安! レジのお姉ちゃんが火がつくかどうかチェックしていたくらいだから、品質は適当なんだろうけど、頻繁に没収されるから安物がちょうどいい。

タクシーがなかなか来ず、泣く泣く51元と高めの車を配車した。15分ぐらいかかってようやく到着した運転手さんと、例のごとく電話であーだこーだして無事乗車。高いだけあって運転手さんがやさしかった。
車窓から、布市場が見えた。ここ行きたかったな。クラブが見えた。ああ、こういう若者が集まるところも行きたかった。昨日の運転手さんが、市の中心は夜中もにぎやかだと言ってたっけ。

ウルムチ駅は空港のようで、デカすぎて外観を撮影することができなかった。もちろんここでも荷物検査。ライターはポケットの奥に隠しておいたので、無事通過できた。

コンビニでカップ麺とパン、除菌シートを購入。充电宝があったので、近くにいた青年にやり方を聞いてシェア充電器をゲットしたのだが、デポジットがかかるっぽくて99元だった。これ、返すときに戻ってくんの? 調べてみてもよくわからず、青年もどこかに行ってしまったのでわからずじまい。

ゲートが開き、いよいよ乗車だ。私の寝床は三段ベッドの真ん中。素晴らしい。下だと誰かが座ってくるし、上はトイレとかめんどくさいし。上の御婦人が登るのに苦労していたので、代わりましょうかと喉まで出たが、心を鬼にしてやめた。申し訳ない。

車内で聞こえる言葉はほとんどがウイグル語(と、もしかしたらほかの現地の言葉もあるかもしれない)だ。乗務員さんはウイグルの人っぽいけど中国語。ウイグルっぽい音楽がそこかしこから聞こえる。最初はにぎやかだった車内も、徐々にみんながベッドに横になりはじめて、そこそこ静かになってきた。スニーカーをサンダルに替えて、本を読みながら快適に過ごす。車内販売で果物などを売っていた。

2時間後、最初の駅に停車したので、タバコを吸いにホームに出ようかと思いきや、デッキに喫煙所があった。最高じゃん。もうこれで30時間の乗車もこわくない。
飲み物はお湯を水筒に汲めばOK、あとは食べもの。後方の車両まで6車両ほど探索したが、食堂車は見つけられず。車内販売があるから、そこで買えばいいのかな。後部車両は普通席のようで、ドアが閉められており、寝台車両とは行き来できないようになっていた。覗き見るかぎり、立っている人もかなりいて地獄っぽい。
通路にひとつ、コンパートメントにひとつコンセントがあることを発見。これで充電問題はなんとかなるだろう。

延々と風車がまわるエリアを過ぎ、19時、トルファン。嘘みたいに明るい。そりゃ、本来なら3時間くらいの時差があるところだもんな。そろそろカップ麺でも食べるか。

21:30、ようやく日が沈んだ。横になりながら本を読み、眠くなったところで入眠。眠りの向こうからワイワイと人の乗り降りする声が聞こえる。赤ちゃんの泣き声とあやす声が聞こえる。電話に出る人の声が聞こえる。けっして静かとは言えないが、一定のリズムでレールを鳴らす車輪とともに、砂漠の夜に音が溶けていく。そのあとには静寂あるのみだ。


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