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プラネテスはいいぞ。

どうも、スエヒロです。
このご時世なので、という言葉を会話をしていて聞かない日はありません。
土日どころか、平日の夜の予定まで吹き飛んでしまって、大人しく自宅で過ごすしか無い日々が続いていますね。参加予定だった文フリも中止になってしまいました。
積ん読を崩したり、動画を見たり、ゴロゴロしていれば時間は勝手に過ぎていくけど、どうにも浪費しているような気がしていて落ち着かない。
ひきこもり自体は苦じゃないにしても、それが半ば強制される状況が続くと何かと溜まってしまうのが人間のようです。

そんな日々を送っていたので、先日オンライン飲み会をやった。
そこで参加者がおすすめの漫画を紹介するくだりがあった。
紹介したのは幸村誠の『プラネテス』。2019年にアニメをやっていたヴィンランド・サガの作者の作品と言えば通りがいいだろうか。
プラネテスもかなり前にアニメ化されていて、そちらは漫画版よりも味付けがされているがとても良い作品になっている。
せっかくなので、好きなポイントやエピソードを紹介したいと思う。

※以下ネタバレあり

プラネテスの舞台は遠くない将来に宇宙開発が進んで、宇宙空間に漂う宇宙ゴミが現在でいうところの環境問題のようになっている世界観。
主人公のハチマキは、その宇宙ゴミ――スペースデブリを回収する仕事についており、いつか自分の宇宙船が欲しいなあって考えながらサラリーマンをやっている。
そんな彼が夢とか仕事とか愛に悩んだりしながらもがく、というのがあらすじになっている。

群像劇

漫画版では特に後半で顕著、アニメ版では最初から焦点の当て方が群像劇的になっていてハチマキの周囲の人たちが何かに戸惑って、その答えをもがきながら探している。
そもそものタイトルであるプラネテスがギリシャ語のプラネテス=放浪者、惑い人から来てる。惑星、つまりプラネットの語源にもなってます。
全員の問題が最終回で必ずしも円満に解決するわけでもないし、ハッピーエンドでもバッドエンドでもない。物語全体でみたら、劇中で起こる事件については根本的な問題はそもそも解決しているとも思えないんですよね。むしろ根が深くなっているというか。
でも、個人個人で見るとそれぞれの人生を懸命に生きてみたら、ヒントだったり通過ポイントを見出しているんですよね。
登場人物が抱えている問題は、今生きている我々が抱えている問題と大差なくて、転職どうしようとか、家族関係が綻んできてたり、仲良かったやつとなんか上手く行かなくなってきたとか、等身大の悩みを抱えている。
そんな大小様々な人生の問いに対して、必ずしも答えは出していない、けれでも通過点には通過点なりの意味はある。そこで迷ったり直面したことが、後々のヒントになっていたりする。
宇宙が身近になった社会でも、「人は変わらず人のまま」を描いているんですよね。
そこで惑う星=惑う人同士がすれ違うことでそれぞれが持つ重力によって少しずつ軌道が変わって人生に影響を与えている。人生ですね。

SF考証がガチ

周りの人にはあまり言ってなかったんですが、宇宙とか星が好きなんですよね。
SFモノも大好きで、中学生の頃はゴリゴリのSF小説をよく読んでました。
アニメ版のプラネテスではJAXAが取材・考証に関わっていて、近未来の宇宙産業や生活はこうなってるんじゃないか?というワクワクを感じさせてくれる。
ガンダムやマクロスみたいなビーム飛び交う派手な戦闘こそないものの、宇宙空間のシーンは本当にカッコいい。実際の科学や宇宙空間では仮に不可能でも、見ていて「それっぽい」と思わせてくれる力がある。

好きなエピソード ※完全にネタバレ

主人公ハチマキの同僚に、ユーリという男がいるんですが、彼を中心としたエピソードが特に好きなんですよ。
漫画とアニメで多少の設定の違いはあるものの、ユーリは過去に宇宙船事故で妻を亡くしてる。ユーリがデブリ回収の仕事をしているのも、亡き妻の遺品を見つけるため。
職場でのユーリはそつなく仕事をこなしていて、折々で人の良さが滲み出ているものの、ずっと敬語だったりでどこか一線を引いているような態度を保っている。
というのもやはり、妻を亡くした出来事が楔にように彼を過去に縛り付けている。
ユーリは遺品を発見するのですが、そのエピソードの後もまだ縛りは残っているんですね。
遺品はコンパスで、道標や方角がない宇宙空間では「お守り」として扱われている設定。ユーリにとっては、この遺品を見つけることが人生における道標だったわけですね。ユーリ自身も、コンパスを見つけたら宇宙に居る理由もなくなるので、仕事を辞めようと考えていました。
その後のエピソードで、ユーリはハチマキの弟でロケットエンジニアを目指しているキュータという青年と出会います。キュータの手作りロケットの実験の際、実験の失敗によって身につけていたコンパスを壊してしまうのですが、それがユーリにとっての転機になる…という流れなんですが、それでガラッとユーリの人生が変わるわけじゃないんですよね。妻を亡くしたという現実は変わらないし、目標を失っている状況にも変わりはないでしょう。
でも、だからこそ過去の象徴であるコンパスを夢見る若い青年に壊してもらうことによって、目標を失った自分というもの自体から抜け出せるんでしょう。それでやっと前に進めるという。
壊れたコンパスはキュータのロケットの先端に積み込まれて、エピソードの最後で発射されます。その様子を満足げにユーリは見ていて、どこか憑き物が落ちた様子。
そんなユーリを見てハチマキは言います。
「ユーリ お前かわった?」

この作品と出会ってから15年ほど。折々で読み返したり、全話見返したりしてる。その度に発見や、感想が変わることがあるので本当にお勧めできる良い作品。
漫画はもちろんKindleで配信中。アニメはhuluとNetflixで配信されているので、もし加入しているのだったらこの巣篭もり期間でぜひ観てほしい。

ヴィンランド・サガも面白いぞ!

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