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娘のすごーい成功法則。

 雲仙普賢岳のふもとにある、古めかしい山小屋風のお食事処にはいった。台風接近がどのニュース番組でも報じられていたが、長崎は思ったほど風も雨も強くなかった。母方の祖父母のお墓参りに行く予定だったので、妻とふたり胸をなでおろした。

 さて、お食事処の話に戻そう。玄関をくぐると木の香りがふわりと鼻をくすぐる。靴を脱いで店の奥のお座敷ならぬ板張りの大部屋へ通された。僕らが席に着くと同時に、まわりの2組の家族が席を立って貸し切り状態に。ごぼう天うどんの大盛りと六兵衛という地元ならではの麺の御膳をいただいているあいだ、娘はそのあたりに大の字になって寝転がっていた。

 はふはふと麺をすすることに夢中になって、しばらく娘から目を離した瞬間。大きな部屋の真ん中あたりでゴロンと寝返りをうって、うーーーん、と右手を大きく伸ばしている。その先には子ども用の椅子が3脚。触りたい娘。しかし、彼女はまだ、ハイハイができない。どんなに意欲はあっても、前方移動ができない。はずが、、、

 なんと! 右手を伸ばしては頭が右にコロンと倒れ、今度は左手をうーんと伸ばしては頭が左にコロン。それを繰り返すこと10回ほど。なんと、お目当ての青い椅子にたどり着いたのだ。その後、勝利の証かのごとく、椅子を右に左にカタンカタンと鳴らす姿は勇ましかった。途中から箸を置いて、見守り、応援し、動画撮影に夢中になっていた。

 昨日までは遠くにあるものを手に取りたくても、それが叶わなかった娘。前に進もうとしているのはわかるがダメだった。彼女は失敗を失敗とも思ってないし、「あぁ、ダメだった〜」なんて微塵も落ち込んでいない。ただあれを手に入れたいという意欲を持って、そのためには何度できなくても、ひたすらまたやってみる、その繰り返しだ。娘の成長を手を叩いて喜んだあと、トイレに行ったとき、僕は思った。

もっと意欲に貪欲になろう。
もっとたくさん失敗しよう。

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 きょうも読みにきてくださって、ありがとうございます。おじいちゃんおばあちゃんのお墓からの帰り道、海に向かって雲間から差しこむ光が綺麗でした。

 昨夜は「目の前のしあわせを掬い取るような生き方」というテーマで有料メルマガを更新しています。目を凝らしていると、まいにち何気ないしあわせがいっぱいなんですよね。

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