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「書き残すこと」「数えること」。

ぼくのGoogleカレンダーのなかには、「b5」などという謎の予定が書き込まれている。2017年5月27日(土)には「b6」の文字が。さて、もったいぶったように書いたが、なんのことはない。『b-moster』を略して「b」と書いているのだ。「うん? 『b-moster』ってなにかって?」

説明しよう。最近流行っているらしい「暗闇でやるボクシングジム」のことである。45分間ノンストップでサーキットトレーニングなる筋トレやボクササイズを行う。途中で、何度も思う。なぜにぼくは、ただただ疲れることをやっているのか? でも、これが人気沸騰中のようだ。ぼくが通っている恵比寿ジムは、一度に100人収容できるのだけど、最近はもう、毎回満席である。(つい先日などは、キャンセル待ちが16人もいた)

カレンダーに話を戻そう。「b」が表す意味はいま説明した通りだが、では「b」の隣に並んだ「b5」「b6」という数字にはどんな意味があるのか? 勘のいい人は、もうおわかりかもしれない。それは、「何回目」なのかを表している。つまり、2017年5月27日(土)「b6」ということは、ジムに通うのがその日で6回目だということになる。

ちなみに、ちょっと前まで、ジムに通う日、Googleカレンダーにはこう記入していた。「b-moster」と。文字を短縮したことよりも、数字に重きを置いている。その理由は、横尾忠則さんのことばを引用させていただこう。

横尾
あのね、言葉を解放すると時間がなくなると言ったけれども、時間はすごく問題なんですよ。時間でものを測ったり、体験や記憶を時間に置き換えるとぼくはだめだと思うんですね。

糸井
というと?

横尾
時間よりも、むしろ何を何回やったかという「回数」のほうが、大事なんです。

糸井
あぁ‥‥その言葉はいいですね。回数!

横尾
絵を描くときの時間は、昨日も今日も明日も過去も現在も未来もないんです。いまの時間しかないわけでね。南方へ行くとさ、人が自分の年齢を知らないということがあります。だから、あの人たちは、時間の中で生きてないわけよね。

糸井
そうですね。うん、うん。

横尾
我々は時間の中で生きています。だけどぼくは、時間よりも、何を何回したかという回数のほうが大事じゃないかと思う。

ぼくのコンテンツ会議を定期的に読んでくれていたら、「あれっ?」と思った人もいるかもしれない。(いたら、うれしいな)なぜなら、『雨ニモマケズ風ニモマケズ書キツゞケル』でも同じ箇所を引用したからだ。でも、とっても大事で、大好きなところだからもう一回、と言わず何度だって書こうと思う。

なにを言いたいかというと、ただボクシングジムに通うだけでなく、その「回数」を数えようと思ったのだ。さて、こう思ったのには、もうひとつ、きっかけがあったのでこちらも紹介しておこう。

僕は日記をつけないから、自分の心理状態とかそういうことを書き残したりすることはないんだけど、事実関係、数字関係だけはきちんと残しておこうと。何時にどこに行って、何して、ビールを何本飲んだとか、そういう数字的なことだけはけっこうきちんと書いておきます。数字ってややこしいことを考えなくていいから。自分を事実に結びつけておく。ボートをロープでつなぐみたいに。(『みみずくは黄昏に飛びたつ』村上春樹/川上未映子)

「あれれ?」(と思ってもらえたら、うれしい)なぜなら、『雨ニモマケズ風ニモマケズ書キツゞケル』でも同じ箇所を引用したからだ。(デジャヴュではないので安心してほしい)

個人的には、村上春樹さんとは真逆で、数字関係はさっぱり残していない。もひとつ真逆に、心理状態とかそういうことは長い間ずっと書き残してきた。こんなふうに、何代も重ねた「ほぼ日手帳」に。

そこでこの度、晴れて、「回数」という数字関係を残しておこうと決めたのだ。

だから、トレーニングを何回やったのかを記録するのはもちろんのこと、その他にも数字を残しはじめた。体重。こちらも、からきしダメ。温泉に行ったときに置いてある体重計に年に3回も乗ればいいほうで、書き残すのはおろか、測ることだって稀なことだった。しかし、いまでは週3回は体重計に乗り、数字をiPhoneメモに残している。(ちなみに、6回で2,8kgやせた)

回数やら数字関係だけに限らず、心理状態や未来のこと、じつはなんでも構わないと思う。「書き残す」と「数える」はすっごく大事だ。ということで今回は、新しいコンテンツの紹介がないままに終わりそうだったので、糸井重里さんのことばを紹介して締めくくろう。

とにかく、書き留めるだけで効果がある。
書いておくだけで、「あ、そうか」となにかしら思う。
思うことによって、だんだんと、よくないことは避けがちになる。
ただそれだけのことが、生活を荒れさせないことになる。
書き記すということは、実に力のある管理法なのだ。
『忘れてきた花束』糸井重里)

今回もコンテンツ会議の記事を読んでくださって、ありがとうございます。
ずいぶんと久しぶりに、クローゼットの棚の奥から『ほぼ日手帳』を引っ張り出してきた。古いのは2009年のもの。パラパラとめくると、タイムスリップした不思議な感覚にとらわれ、少なからず積み重ねてきたものの重みみたいなものを手のひらに感じた。

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