【詩】回想と展望松鶴屋風、もしくは或る散骨

されば、
ひとこと君に伝えておきたいことがある、それは
君が僕より誠実なわけじゃないということ。
というのも、
ねえ、
君が残忍なブルドッグ大尉の寝袋だった頃、
僕は塹壕でずぶ濡れののらくろだった。
君がタイマーの毀れたウルトラマンだった頃、
僕はぼろぼろの襤褸をまとったデロリンマンだった。
君が気のぬけた飴色のコーラだった頃、
僕は気のふれたひずんだラムネのビー玉だった。
君がひきこもりのヒネくれた丸太ん棒だった頃、
僕は碾き臼の挽肉にされるままの木偶の坊だった。
君が寝ても覚めても漂流しているアルコール中毒だった頃、
僕は覚めても寝ても飲み続ける贋の夢中毒患者だった。
君が飢えた犬たちの豚小屋で輪姦されていた頃、
僕はだるい猿の夢の中で私刑される豆腐の脳髄だった。
君が狂った運命の星にゴロまきゴロついてた頃、
僕は苦し紛れにフィールドの縁でゴロゴロ転がるボールを追っていた。
君がのべつ幕無しのたりプウタロウだった頃、
僕はノッペラボウの瘋癲のがらんどうだった。
君が四月の一日オフクロの頸を切り行った頃、
僕は四月の一日溺れた夢の頸を絞めていた。
君が涙の波乗りサーカスの鳶の王様だった頃、
僕は何もせぬ夢の無産会社の専務だった。
君が雨のない夢の荒地の地上げ屋だった頃、
僕は穴だらけの夢を弔う気球の揚げ屋だった。
君があぶく銭の胸騒ぎを隠していた頃、
僕はあぶれ者の空騒ぎに沈殿していた。
君がすかすかした素晴らしい西瓜だった頃、
僕はすべからく誰何されるすがすがしいスカだった。
君が詩まみれの血達磨の雪だるまだった頃、
僕は血まみれの火だるまの風車だった。
君が意味のない反古の山の文車だった頃、
僕は痛みの頂きで燃える地図の火車だった。
君が僕を針の尖で拒絶していた頃、
僕は君を灰の海に虚脱させていた。
君の元妻が付け火の焼け太りで着膨れになる頃、
僕の今妻は土色の貧乏太りで火脹れになるだろう。
君がついに極彩色のエロ本ビルの屋上から飛び立つ時、
僕はきっと僕を僕の言葉で切り刻むだろう。
しかしだからと云って、
ねえ、
僕が君よりユメ誠実なわけじゃない。

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