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初めての三越劇場での舞台

10月29日は、日本橋三越の三越劇場にて、春日会主催の会に、糸として出演致しました。元々は、小唄や三味線を嗜む男性のみの発表会だったようですが、今回から、趣味として楽しむ方もしくは免状受検予定者などが出演出来る会と設定したようです。
 春頃、とよ登喜先生から会への出場のお話があり、意気揚々と参加表明をさせて頂いたわたくし。江戸三味線の名手である清元梅吉さん作曲の「からす」「蔦葛」で出演すべく、夏より取り組んで参りました。2015年から緩く、先生に逢いたいが為に稽古に足を運んでいた私ですから、今回の暗譜は非常に試練でした。唄い手が歌い易いようにという伴奏的な手法とは違い、あくまでも唄の合間を演出するといった江戸三味線の世界。弾き手も唄がしっかりと入っていなければ、糸の存在など何の意味もなさない。終わった後の先生の言葉を借りれば、私の弾きは「中身のない、面白味のない」ものとなりました。朝の控え室での事です。不安で仕方のない私は、三味線を触らずに居れず、音は掠り程度で出し、高速で指順を追っていると、先生にピシャリと叱られました。「そんな事をやっていると、本番で早くなり、音が小さくなる!」…心の中では、テンポ(この世界では使わない言葉)キープには自信があるし、爪はじきも強い方なので、本番はもちろん弱く弾くつもりです…などと生意気に物言いする自分がいました。けれど、本番の録画を観て愕然としました。「早くなる」と云うのは、テンポの事では無く、唄い手の呼吸を無視して、音だけどんどん前に行ってしまうこと。そして、「小さくなる」と云ったのは音量ではなく、舞台上で観客に見せる情景のスケール感が狭まることでした。中でも「一人稽古に慣れないように」と「雰囲気を楽しみなさい」と仰られた真意を暫く考えていました。常日頃ストイックに自身の稽古に冒頭する事は当たり前のこと。けれど舞台上では、人間2人が表現するのだから、独りよがりではいけない。それは、自身がバンドと共にステージをやるのと同じ道理です。
そして、江戸三味線は、唄ありきのものなのです。唄わないと、未だ突っぱねている私はこの先続ける資格はないのかもしれません。小唄端唄などでは裏声を多用し、使われるレンジも広い。清元に見られる喉の筋肉を意図的に緊張させ、細く声を絞り出す技法なども、自分の中で大混乱になります。自身が専門としてやってきた分野と一緒くたにすることは大変愚かですが、未だどうしても唄に取り組めないのです。長年声帯結節持ちで、カバーする為に狭まった声域を地声でプッシュで力強く出す技法を染み込ませてしまった私は、軽くフワリと歌えないのです。然しながら、人生で、とよ登喜先生に出逢えた喜びは未だ続いています。音楽の分野は違っても、芸への心構えや、あらゆる時代を飄々と生き抜き、生涯現役を貫き通す毅然さなど、先生から学ぶべきことがたくさんあるのです。心優しい姉弟子達との出逢いもかけがえの無いもので、邦楽の楽しさを共有したりと私の癒しの存在です。春日とよ登喜先生の経歴などは追々書きたいと思います。今年御齢89歳になられた先生には、兎に角、体調維持でまだまだお元気でいて欲しいのです。

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楽屋にてとよ登喜先生と。
余談ですが、先生が席を外された間に、とても緊張している私に、同室であった他のお師匠さんが「私が歌ってあげるから弾いてご覧」と合わせて下さったことがとても嬉しかったです。ご自身の弟子でもないのに関わらず、手を差し伸べて下さった心の広さに感激しました。
演奏後に真っ先に駆けつけてくれた姉弟子達と、いわきから来てくれた母と夫。涙が溢れました。
小唄の姉弟子いづみさん。邦楽のコンサートを一緒に見に行ったりします。
終了後、着物を早速脱いで安堵な私。この二人の存在がどんなに心強く嬉しかったことか…
先生の一番の愛弟子である澤さん。優しく大きな人です。夏には彼女の住む沼津に遊びに行ったことが今年の印象的な想い出の一つ。
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毎回東京やいわきでのライブに来て下さる田中大和さんがご来場下さった!いつも素敵な写真を沢山撮って下さいます。
毎回東京でのライブに足を運んで下さる、小菅さんがご来場下さいました!すぐ近くでご自身が主役のパーティーがあるとの事で、お忙しい最中に足を運んでくださったのです。感激でした。
三越内の高級食堂にて、先生の良い顔!
実を言うと、わたし稽古で一つとうまく行く時がなくて、何度も間違っては止まってしまっていたのです。本番は、間違えても止まる事はありませんでした。本当に良かったです。
私のような愚弟子との舞台に、嫌な汗をかかれた事でしょう…
先生、本当にすみません!!

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