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夏の思い出、ポケットのコイン編

ずっと挑戦したいと思っていても、なかなか機会に恵まれなかったり、自分から行動に移せなかったり。ずっとポケットの中にあったのに、忘れられてしまった小さなコインのような、そんなものってないだろうか?今年の夏、私はそんな小さな心残りに3つ挑戦できた。

まず一つ目は乗馬。そう、文字通り馬に乗ること。ずっとやってみたくて、でもなかなか機会に恵まれず数年が経っていた。今回北海道に帰省した時に、知り合いに何気なく話したところ、牧場を経営している親戚がいるとのことだった。しかも実家から車で30分の距離に。こんなにもあっさりと馬を飼っている人に巡り会うなんて、さすが北海道。早速連絡を取ってもらって、翌日馬に乗せてもらえることになった。結果はというと、

この満面の笑みである。
乗せてもらったのはパーハップスという、もうだいぶ高齢のお馬さん。まつげが長くて目がとても優しい。乗ってみると視界は高く、揺れるけれど、思ったより怖くはなかった。時々背中のたてがみあたりの筋肉がブルブルとして、当たり前だけれど、生きているんだよなと思う。自動車や電車など、無機質な乗り物に慣れていると、生き物に乗って移動しているという事実には不思議な感動があった。ご褒美のにんじんをあげるときにハムハムする口元や、帰ろうとするともっとにんじんをよこせと、前足で地面を掻くような催促の仕草がとても可愛らしい。また会いに来るからね、それまで元気でいてね。

心残りのもう一つは、流しそうめんをすること。
なんとなく夏の風物詩として認識をしていても、意外と実際にやったことのある人は少ないのではないだろうか?昨年からお世話になっている宇都宮のクリニック主催の子ども音楽イベントの一環で、クリニック敷地内の竹やぶを有効活用したいという話から実現した。竹を叩いて音遊びをしたり、リトミックを使った音楽プログラムを楽しんでもらった後に、流しそうめん大会。結果はというと、

流れてるー!クリニックの先生をはじめ、スタッフの皆さんが素晴らしい手際で見事なそうめん台を作ってくださり、子どもたちや保護者の皆さんと交流しながら楽しい初流しそうめんになった。熱中症対策としてクーラーの効いた冷房車まで用意してくださり、さすがクリニック主催。至れり尽くせりなイベントになった。夏休みランチの定番そうめんも、こんな風にいただくと風情があってとても良い。子どもと同じくらいはしゃいでいた大人たちが印象的だった。

最後は、キャンプをすること。最近はおしゃれなキャンプも流行っているし、人によってはそんなに難しいことではないかもしれないが、なんとなく面倒で腰が重く、こちらもテントを買ってから一年以上経ってしまった。
3日くらいは家から一歩も出なくても平気で生活できてしまうし、Netflixさえあれば1日余裕で過ごせてしまうスーパーインドア派な人間からすれば、電気も水道もない場所で寝泊まりするなんて、信じられない大冒険である。
オートキャンプから始めようということで、眺めのいいキャンプ場を予約した。山男の夫の手引きで、言われるがままに準備を進めてみたはいいが、何がどう必要なのかよくわからないまま車に荷物を積み込む。忘れ物はないか心配をよそにどんどんと大自然の中へ。結果はというと、

とても快適だった。初めてのテント張りには少し手こずったけれど、星空の下でガス灯の明かりを頼りに飲むワインや、炭火でこんがり焼かれたお肉は格別だった。朝ごはんには前日から仕込んでおいたフレンチトーストとリンゴのソテー。大自然の絶景を目の前にして飲むモーニングコーヒーは味も香りも家で淹れるものとはやっぱり一味違う。

毎日ギターを片手にパソコンとにらめっこしながら音楽制作に没頭し、鬱々と夏を過ごすかと思いきや、案外日に焼けてしまった。出来上がった新曲のデモを聞きながら、逆に生活にメリハリがついて良かったのかもしれないなと、ぼんやり思う。こんなにアクティブな夏は生まれて初めてだったかもしれない。

行きたい場所、やってみたいこと、会いたい人、知りたいこと、数えればキリのない小さな思いたち。ポケットのコインが少ないほど、きっと身も心も軽くなる。
心残りは少ないほうがいい。


寺岡歩美

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