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『ハックルベリー・フィンの冒険』のススメ

この記事では、児童書担当の書店員が、大人に読んでほしい子どもの本を紹介します。

児童書をあえて大人にオススメしたいのは、子どもの時とは違った視点で物語を楽しめるからです。

『ちいさいモモちゃん』を紹介した以前の記事で、物語の背景が深いという話をしました。

『ハックル・ベリーフィンの冒険』もその点では引けを取りません。

自由を愛するハックことハックル・ベリーフィンが、仲間と共に旅をする冒険ものなのですが、よく読むとハックの置かれている家庭環境がとてもシリアスなのです。

ハックの父親は暴力的なアルコール依存者です。
ハックは、自身を殺したかのように見せかけて、父親のもとから逃げ出します。

さらに本作では黒人奴隷のジムが冒険の片腕として登場します。
ジムはハックと一緒に逃げて冒険をするのですが、奴隷制において、黒人が逃亡するということは殺されても全く不思議ではない状態だと言うことです。

そういった視点から見直してみると、ハックル・ベリーフィンの冒険とは、シビアな状況に置かれた2人の人間が、人権や自由、人間としての尊厳をどのように獲得していくかという物語でもあるのです。

前作にあたる『トム・ソーヤーの冒険』はもう少しライトな冒険ものとして楽しみやすいと思います。
そちらと合わせて、ご堪能いただきたい本です。


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