“企画が出せない病気”にかかった

ライターとは、文章を書く仕事です。
でも、Webメディアや雑誌などの媒体に記事を書くには、企画を出さなければなりません。自分で考えた企画が、編集会議を通過してようやく、仕事になる。基本的に、企画が出せなきゃ媒体の仕事はとれないともいえるし、書きたいネタがあればそれを仕事にできるともいえます。

編集者が考えた企画にもとづいて、取材・執筆を任されるケースもたくさんある。けれど、自分で企画を出せたほうが、絶対に仕事の幅が広がります。

もちろん私もこれまで、いくつものメディアにいくつもの企画を出してきました。「書きたいネタがあったらどんどん出してくださいね!」と言ってくださる媒体も、現状いくつかあります。まったくツテのない媒体に、自分のやりたい企画を持ち込んで書かせてもらい、めでたくヤフトピランキング入りまでこぎつけたこともある。

なのに最近、ぜんぜん企画が出せません。
スランプといったら酔っててバカみたいなのはわかっているし、プロなんだから血を吐いてでもやれよと思うんだけど、なかなか出せません。
ライター・編集者のみなさんは、最近どんな気持ちで、企画を考えてますか?

■理由は、企画を自分ごとにできないから

たぶんいくつか理由はあるけれど、一番大きいのはこの「自分ごとにできない」だと思います。

文章って結局、自分ごとが一番おもしろい。
ライターや編集者が、心からの興味・関心を持って取り組むからこそ、その文章に熱量が生まれる。そして、記事が遠くまで、もしくは深くまで届くと思うんです。

実際、私が去年わかりやすくヒットを打ったのは、自分の夫婦のコミュニケーションについて書いたコラムと、まさに当事者でもある待機児童の取材記事でした。
だから、自分ごとにできない企画を出すことに、なんの意味があろうかと手がとまってしまうわけです。

どうして自分ごとにできないかというと、まずは、読者と自分の属性が異なるケースが多い。
たとえば「新R25」だったら、若い男性ビジネスマンがメインのターゲットです。でも、32歳フリーランス既婚女性の私には、彼らがなにに悩んでいるのか、なにをやりたいと思っているのか、じつはよくわからない。会社員経験はあるけれど、10年近く前のこと。営業成績や人間関係で悩んだことも、ほとんどありません。そんな私が、彼らの気持ちになれるでしょうか?

もちろん、想像することはできる。周辺取材をして、ペルソナをつくりこんで、企画を考えることはできる。でも裏を返せば、いまのわたしにはそんなことしかできないわけです。だったら当事者に近い属性のライターさんが書いたほうが、絶対いいものがつくれると思っちゃう。
クリエイターってみんな、どうやって消費者にピントを合わせてるんだろう……。

じゃあ、いまの私は子育て・ワーママ系の媒体ならいい企画が出せるかというと、そうでもない。
たしかに、いろんなメディアでちょこちょことそういうネタを書かせてもらってきたけれど、どうやら私は母親のメインストリームではありません。
子育てですごく悩んだり落ち込んだりすることも、あまりのかわいさに涙することもない。これはたぶん性格の問題だけど、当事者のくせに、感性が鈍いのかもしれない……。だからこそ書ける「フラットな育児」「ガチで仕事をしながら子育てする」みたいなネタもあるけれど、それを読みたい読者はずいぶん限られているようです。妊娠出産育児はそれぞれがそれぞれの物語を発信するのに意義があるテーマだとも思うから、書くんだけど……。

つまり現状、ビジネスパーソンとしても母親としても、私はずいぶん中途半端に生きている気がします。その半端さこそ自分らしさだといえるかもしれないけれど、そこを売りに仕事をするには、ぜんぜん弱い。弱すぎる。

■出そうと思えば出せる、だろうけれど……

もちろん死ぬ気でやれば、まぁなんとか及第点がとれるであろう企画は、きっと出せると思います。
「いまこの人にこの話を聞いたら、読まれるだろうな」「こういう悩みを解決できる記事、喜ばれるはず」は、それなりにわかる。けれど、その記事を心底欲しているのは、私ではありません。
じゃあ、心底欲している人が書いたほうが、絶対面白くなるんじゃない?
企画だけ立てて編集ポジションになり、その“心底欲している”ライターさんにお願いするという手はあるかもしれないけれど、私は自分で書くのが好きなんです。

いや、読者が読みたいものを考えて書くのが仕事なんだから、つべこべ言わずに考えればいいのか。いやいや、読者が読みたいものを考えて、一番おもしろいかたちで出すには、私が書き手じゃないほうがいいという問題なわけで……。

なので近ごろは、すべて企画が決まっているもの、もしくは出演者が決まっていて切り口から考えるような仕事が中心になっています。依頼を受けて書く仕事は、編集者や出演者が私をアサインしてくれたところに、すでに私の存在意義がある。誰かの企画を100%、120%のかたちで具現化する仕事も、職人味があって大好きです。そういうライターにもニーズがあるのはわかっているし、そこらへんは器用なほうだけど、やっぱり思うように企画が出せないことに、ジレンマを感じています。

そもそも、自分と関係ないテーマでも、それに悩んでいる人の役に立ちたいと本気で思えたら、それは自分ごとの企画になるのでは? つまり、誰かの役に本気で立ちたいと思えるほど、いまの自分にエネルギーがないのかもしれません。
それって、ライターとして仕事をするモチベーションの話でもある気がする。書くのが好きで、よりよい文章をつきつめるのは楽しいけれど、そもそも「誰かの役に立つ記事を書きたい」「多くの人にいい記事を届けたい」みたいな気持ちが薄いのかもしれない。

……なんだか仕事が減りそうなnoteを書いてしまいました。が、企画からのお仕事も絶賛受付中ですよ! なにかのきっかけでブレイクスルーするかも(したい)。

でも、せっかくだからライター・編集者のみなさんに聞いてみたい。企画って、どんなふうに考えてますか?

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菅原さくら

書くこととわたし

わたしのことと、ライターという仕事のこと。
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