猫。

我が家の猫が、雀を捕まえてくる。
捕まえてくるのであれば、そのまま食べてくれればいいのだが、ただ嬲り殺しにして、死骸を放置する。それを早朝(奴らは夜明けに行動を開始し、狩りを行うのだ)、家人が見つける。否、死骸よりも先に、狩猟の痕跡を見る。廊下に散らばった羽毛を見て「やりやがった」と察するのである。それから家の中を探し回って、ようやく無惨に腸を引き裂かれた雀を発見するのである。
活動を停止し、単なる肉片と化した雀を、その状態で放置するわけにはいかない。いずれは腐り、虫が沸き、不快な臭いを撒き散らすことになるからだ。これがカナブンやセミの類いであれば、ちり紙に包んで屑籠に投げ捨て、最後に手のひとつでも合わせれば終いなのだが、血肉の詰まった動物の場合、そうはいかない。まず雀をちり紙で包み、その上からコンビニのビニール袋を口から入れるように被せる。そして、袋ごと雀を掴み取り、しっかりと袋の口を縛る。それを屑籠に入れて、粛々とごみ収集の日を待つ。言葉にするのは簡単だが、実行するのは容易ではない。なにせ死骸に成り立てなので、まだうっすらと体温が残っているのである。これが大変に恐ろしい。理由は分からないが、たまらなく恐ろしい。
恐ろしいので、このようなことを二度とせぬように、犯人ならぬ犯猫に忠告する。時には軽めに蹴りを当てる。しかし、猫は何処吹く風で、また新たな雀を捕まえて、殺戮を繰り返す。実に恐ろしい。

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