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書く人へ。

何を書けばいいかわからなくなった時。

書くことに悩んでしんどくなった時。

ジュリア・キャメロン『あなたも作家になろう 書くことは、心の声に耳を澄ませることだから』を手にとってみませんか。

別に作家目指してないという方。大丈夫です。私も目指してません。

タイトルの「あなたも作家になろう」をnote風に言うと「あなたもクリエイターになろう」という感じ。

プロもアマも関係なく、そもそも創作に限った話でもなく。家族宛のメールとか、ほんの端きれに書くメモとか、誰にも見せずに破って捨てるぐちゃぐちゃの日記とか、そういうのぜんぶひっくるめて「書くこと」として大切に扱う本です。

大事なのはただ書くこと。

あなたが書いたものをnoteで読めたら嬉しいけど、書いたものを発表する必要はありませんのでROMの人絵描きの人も是非どうぞ。

著者のジュリアは「すべての人には書く権利があり、自分を作家と見なすかどうかに関わらず作家である」という信念を持ち、多くの「作家」を教えてきた頼りになる先輩。

書くことの喜び、書くときに陥る罠から、励まし、実践のヒントまで盛りだくさん。

「作品は書かれたがっている」「書く気がしなくても書ける」「私は復讐のために書くことを提唱する」「順調に進んだために書けなくなることがある」「書け、推敲はいつでもできる」

きっとどこか一箇所は響くポイントがある。いつも同じフレーズが沁みるかもしれないし、読むたび違う言葉にはっとするかもしれない。

ところでジュリア・キャメロンという名前を見てピンとくる方がいらっしゃるかもしれません。『ずっとやりたかったことを、やりなさい』の著者です。いわゆるモーニングページの人。

『ずっと~』が有名すぎてこちらは影が薄いのだけど、『あなたも作家に~』も名著だと思う。価値は甲乙つけがたいけど、書くことにフォーカスしてる度はこちらが上。

※なお、『ずっとやりたかったこと~』はサイズと値段がかわいくなった新版が出ています。

新版は本文がところどころ太字になっており、旧版に馴染んだ目にはどうにも押しつけがましく感じたので私は旧版派です。でも新版から入る方なら逆にこちらを読みやすく感じるかもしれません。

『あなたも作家に~』というタイトルで「職業作家を目指してる人向け」と思われて、本当に必要な人に届いてないんじゃないかとずっともったいなく感じてたので紹介してみました。

地元の図書館にずっとあったこの本が去年消えてしまったことへの哀惜も込めて。

※以下引用。長いので要約すると「いいから書こうぜ」という書くこと讃歌です。


◼️1◼️ はじまり

あなたは書いてもいい。そして、ただ、今いる場所から書き始めるだけでいいのだ。

◼️3◼️ 耳を澄ませる

 ほとんどの人たちは、上手に書こうとして苦しむ。コミュニケーションをとると同時に相手を感心させようという、二重の仕事を自分に課すからだ。これでは書けなくなるのも不思議ではない。

■4■ 時間

 仕事に追われている男性も、本当の恋をしていたら恋人に会う時間をやりくりするだろうし、もし時間がなくて会えないというなら、ただ彼女に夢中になっていないだけだ。書くことを愛していれば、そのための時間は必ず見つかる。
 つまり、書く時間を見つけるコツは、目的意識ではなく愛から書くことだ。完璧に書こうなんてしないこと。

■5■ 下書き

 書くことと書き直しを同時にこなすと、気分に左右される危険性がある。
作品は書かれたがっている。作品は、神が真の帰依者を愛するように、作家を愛しているのだ。

■6■ 下手な文章

 逆説的だが、いい作家になるには下手な作家にならなくてはならない。
私たちは学校で、「気の利いたことが言えず、気の利いた言い回しができないなら、何も言うな」と習い、それを鵜呑みにした。しかし、もし下手に書いていいなら、じつは多くの人がとてもうまく書けるのだ。

■7■ 書く人生

「私はもう死ぬまでベッドにもぐりこんでいたいと思ったの。でもふと、ベッドの中で書く気になったのよ。そして書いてるうち、心を整理してこの件を整理できたの」

■8■ 気分

書く気にならなければ書けないということはない。気乗りしなくても、ともかく書き始めれば、もう少し書こうという気になってくる。もともと人には書く衝動があるのだ。
 内なる検閲官がわめき立てていても、ペンをとってノートに向かうこと。「書くにはふさわしくない」と思うときこそあえて書くこと。

■9■ ごたごた

 親友たちが大喧嘩をしていても、放っておいて書くのだ。冷たいと思う人もいるかもしれない。しかし、それは努力して習得した冷たさだ。人間関係のごたごたに巻き込まれて疲れ果て、心が千々に乱れて書けなくなるという苦い経験から学んだのだ。

■10■ 苦しみ

 あなたも私のように、否定的な感情を燃料として肯定的に活用できる。(...)復讐や面当てのために書き始めても、それは完璧にすばらしいスタートである。というのも遅かれ早かれ、あなたには創造的な意思と独創性があることが明らかになるからだ。

■13■ 体を使う

 長時間書き続けて文章から潤いが消えてきたときは、長めの散歩が潤いを取り戻させてくれる。私の場合は、ショックを受けた時も散歩によって消化する。ただ歩き続けているなかで何かが通り抜けていき、予想もしなかったアイディアが浮かぶことも多い。ちょうど森を散策していたら思いがけず鹿に出会ったときのように、嬉しい驚きを覚えるものだ。

■14■ 内なる井戸

 書きものをしているとき、順調に進むというまさにそれが原因で、ふいにアイディアが干上がることは珍しくない。そんなとき、私たちは内なる井戸を枯らしてしまったのだ。
 引きこもって書きまくる楽しみは、短い期間は有効だが長期間は続かない。売れる本を一冊だけ書こうとするのでなく、つぎつぎと作品を書き続けたいなら、プロセスを大切にしなければならない。ちょうど優秀な陸上選手がコンディションの調節を重視し、レースの出過ぎや過度のトレーニングを避けるように、自分を大切にしなければならないのだ。

■16■ 孤独

 一般通念によると、作家は孤独な人間だ。だとしたら、孤独を恐れる人間が作家になろうとしないのももっともだ。
 しかし私の体験によれば、書かないことこそが孤独な行為であり、書き始めたとたんすべてがバランスを取り戻す。「書く」という薬を飲むと社交的になり、現在という瞬間に生きられる。
 書かないでいると妄想で頭がいっぱいになる。そしてその妄想のせいで、他人や自分とうまくつき合えなくなるのだ。書くことは内なる羅針盤を見つめるようなものだ。私たちはその羅針盤で方向を確認する。そして、自分が何を感じ、考え、思い出しているかを知るのだ。自分を正確に把握できると、友人に対してもっと心を開き、細やかになり、愛情豊かになる。

■17■ 証人

「そうね。私は周りを心配させないように、平気なふりをしなきゃと思っているわ」
「でも取り乱すことのできる場所は必要よ。私の場合は書くことがその場所なの」

■18■ 気楽に書こう

「午前中、どうして私が書き出せないのかリストにしていたの、聞いてくれる?」
「もちろん」
 ドメニカはリストを読み上げたが、それは書く人すべてに共通する項目だった。
「うまく書いても誰も評価してくれないのではないか、と不安。
 この仕事がうまくいかないのではないか、と不安。
 この仕事がうまくいっても誰も評価してくれないのではないか、と不安。
 自分が馬鹿なのではないか、と不安だ...... 」
 彼女がリストを読み上げたあと、私は「今はどんな気分?」とドメニカに尋ねた。
「よくなったわ。不安が減った。本当は書きたいんだってわかったわ」

■19■ つながる

 書いていると選択肢が見えてくるため、自分が無力でないことがわかる。責任から逃げているときや重荷を背負いすぎているときに、それに気づける。今この瞬間を愛しているときや何かを変えたいと思っているとき、それに気づける。だからこそ、書いていると人生を変えられるのだ。

■20■ チャンネルを開く

 私は書くことを大げさにとらえたくない。いつでもどこでも書くというほうが好きだ。書くことに生活を支配されるのではなく、書くことで生活を満たしたいのだ。

■25■ 成功

 私は芸術が本質的に民主主義であることに深い確信がある。誰かが何かについて原稿を書くほど意識を向けているなら、それを読むくらい注意深い誰かが必ずいると信じているのだ。

■26■ 正直

 書くことは正直になることだ。正直なのに退屈だということはほとんどありえない。正直さはリスクが高く困難だが、少なくとも退屈ではない。
 作家、すなわちあらゆる人々にとって、正直さは癒しである。そして正直だと、まず文章の質が上がる。
 また、正直さは長く書くための唯一の方法である。実人生で嘘をつくと疲れ果てて破壊的になるのと同じように、嘘を書いていると書けなくなっていくのだ。

◼️28◼️ 日常性

 ともかく繰り返し練習することだ。自転車に乗ることそのものがその方法をあなたに教えてくれる。歩くときは、歩くことそのものがあなたにその方法を教えてくれる。パンを焼いたり詩を書くのも、それと同じだ。あなたがしていることそのものが、あなたに教えてくれる。
 ノートに向かうと成長が促される。創造力を高めるには内なる子どもを育てることが大切だという話はよく聞くが、じつは内なる大人が参加し、理解する必要もあるのだ。
 どんな肯定的な変化もノートに書き出すこと。「散歩に行った。妹に電話をかけ直してもらった。仕事のミーティングはうまくいっている」などだ。モーニングページはその日のペースをつくりだすのに役立つが、イブニングノートは私たちが日々を受けとる恵みを愛おしむのに役立つ。

◼️29◼️ 声

 腹の底から書くには他にもいくつかコツがある。
 例えば、「私が本当に書きたいことは......」「私が書くのを恐れていることは......」といった文章を、二十通り書いて見るのも役立つだろう。 
 「一般的な読者に向けて書かなきゃなんて、悩むんじゃないよ。一般読者なんていないんだ。理想的な読者、つまりきみの言うことすべてを理解する読者に向かって書くんだ」

◼️31◼️ 編集者

たいていの場合、行き詰まって書けなくなる原因は、すでに過去になった状況にしがみついていることだったり、本当は踏み出さなければならない一歩を恐れていることだったりする。

◼️32◼️ 修業

書くことは繰り返し行われるべきことだし、繰り返すことによって上達するが、完ぺきに行う必要はない。
作家には、不安という内なる世界だけでなく、外の世界を見つめる開かれた目が必要なのだ。

◼️33◼️ 読者

「あなたは私の原稿をどう思うか」という質問は、「私は自分の原稿をどう思うか」という真実の質問に置き換えなくてはならないのだ。
しかし実際、多くの才能ある作家が打たれ強くないのだ。心を開いて創造活動に取り組むには弱さが必要だ。そのため、私たちは細心の注意を払って、どんなときも友情を保てる人を見つけることが必要なのだ。

◼️37◼️ 生活基盤

作家にとって休日はテンポを壊されるだけで、解放されるわけではない。
 花を咲かせるには根を張らなくてはならない。定期的に書いていると地に足をつけた暮らしができるように、規則正しい生活をしていると堅実に書けるようになる。誰もが長期休暇に憧れるが、それが期待していた効果をもらたすことはほとんどない。ぽっかり空いた自由時間はただ自分にかまけて過ごしがちで、原稿にも大きな穴を開けるのだ。

◼️40◼️ 重要問題

 作家が本人にとって重要なことの核心から書くとき、その原稿はしばしば個人的であると同時に力強い。しかし、作家がマーケットの動向を気にして個人的な投資をしないで書くとき、原稿の水準は作家にとっての重要性に比例して下がる。
 書くべきテーマを探す時、私がしばしば使う単純なテクニックがある。一枚の白紙に、その時点で自分が考えていることを五項目書き出す。そしてリストを読み上げながら、どのテーマにもっとも惹きつけられるか、内なる感覚に注意を払うのだ。

◼️41◼️ 引き延ばし

引き伸ばしのもう一つの隠れた見返りは、社会的な機能不全が許されることだ。「書かなくちゃいけないから」というのは、付き合いを断るのに好感を持たれる口実だ。
 引き伸ばしにさまざまな見返りがあったとしても、どれ一つとしてその治療ほどは重要ではない。これも、引き延ばしが飲酒問題に非常に似ている点だ。あなたが飲み過ぎる理由などどうでもいい。重要なのは、ただ飲み過ぎないことだ。
完璧主義への中毒を打ち砕こう。「書いてもいいと思えるまで待つ」と言わずに、「私はまた完璧主義になっている」と心して、ともかく書き出すのだ。

◼️42◼️ 実践

 生育歴では事実だけを書く。そして事実だけを書いていると必然的に、洞察や深い連想だけでなく感情も浮かび上がる。なかでも大切なのは、過去の出来事に心惹かれ自分の価値を再発見できるということだ。
 成育歴はあなたが自分独自の見方を勝ちとるために役立つ。何年もセラピーに通っても曖昧だったことが、ふいに明らかになった受講生もいる。人生にすばらしい題材が詰まっていることを発見して元気づけられる受講生も多い。

◼️43◼️ 書く権利

「私は今までたくさんの人を教えてきたからわかるの。意地悪な教師や親、創造活動における事故や災難のせいで沈黙させられてきた声のなかには、もっとも美しい声もあるのよ。もしそういった声を回復する助けができるなら、私の本望だわ。受講生のなかには書きたいと思い続けてきた五十代半ばの人もいて、そんな人がいったん書き始めるとそれこそ天使のように書くのよ」


※『ずっとやりたかったことを、やりなさい』&モーニングページについてはこちらで少しふれています。


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