ABSTRACT HIP HOP

アブストラクト・ヒップホップという言葉自体が抽象的で、インストゥルメンタルのヒップホップでもモ・ワックスとニンジャ・チューンではだいぶ違うけれど、一般的なヒップホップのエネルギッシュでホットなノリじゃない、無口で極めて個人的な音という点ではみな同じ。結果的にはお洒落でも、お洒落なだけじゃない人達がやってる感じが抵抗なく聴ける秘訣ですかね。

Headz- A Soundtrack Of Experimental Hip Hop jams/V.A.

モ・ワックスのコンピ盤『HEADZ』シリーズのいっちばん最初の2枚組CD。94年に出たものだけど、今聴いてもカッコよすぎる。というか、初めて聴いた時の興奮が鮮明に蘇る。ヒップホップのビートは好きなのにラップはそれほど、という者にとってこれは強烈だった。どちらかというと2枚目が好きなのは、DJシャドウの身が震えるほどのずっしりと重いビートと全開スクラッチのせいでしょう。クールな情熱って、素晴らしい。気分が優れないけど更に沈みたい時によし。

Milight-未来-/DJ Krush

相性の合う音楽って何となくあるけど、それ以前に音の持つ説得力が響くかどうかが重要だと思う。クラッシュのようなタイプの音には全く縁がないと思っていたはずが、このアルバムから滲み出ている、目や耳だけでは感じ取れない「いいエナジー」というものにやられてしまったのもそのせい。いろんな人からのメッセージを曲と曲との間に織り込んだ構成が凄くよくて、人の喋り声って味のある不思議な素材だと気付かされる。クラッシュからのメッセージは怒涛のスクラッチ、しかも超カッコイイ!

A Recipe For Disaster/DJ Food

このCDの日本盤に記述された「DJフードのアルバムはみんなに勝手に料理される素材」というノダちゃんの正論は敢えて無視しよう。確かにコールドカットに味付けされたものなんてとても美味だ。でも家でダラーっとしたい時、あれはちょっと濃すぎるなぁ、もっと味も素っ気も無くていいのに、と思った時にこういう音が活躍してくれる。曲調もてんでバラバラで、人から貰った編集テープを聴いてるみたいな気分。こういうものをまさに秘密のチル・アウトと呼んでおきたい。

Abstract Manifesto/DJ Cam

フランスの貴公子、DJ CAMの日本オリジナル・レア・トラック集。あの“Hip Hop Opera”や、PARCOのCMでお洒落に使われていた“Yes Yes Yo”などが入った貴重盤。ジャングルやってもインテリ臭さがないし(といって全然バカっぽくもない)、DJ CAM QUARTETの曲もうっかりジャジーと言ってしまいそうだが、でもちゃんと「品のあるヒップホップ」にまとまっているので頼もしい。煙たくないので夏は絶対に清々しく聴けるはず。見た目もよい♡

☆たまに聴くならこんな曲♪

Bug In The Bassbin/Innerzone Orchestra

クロード・ヤングがリミックスしたカール・クレイグの曲をモ・ワックスがリリースした10インチ盤。なんと素晴らしい、この3つの違う冒険心の出会い。何故デトロイト・テクノの音をモ・ワックスが?と驚くのも束の間、やたらカッコいいアブストラクトなんだ、これが。暗闇の中に切り刻まれる繊細かつパワフルなリズムが、静かな高揚感を与えてくれて何とも言えない。かけっぱなしにしておきたいくらいに。

(SUGERSWEET9号 秘密のチル・アウト特集 1997年7月)

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