EXPERIMENTAL

自己満足で終わっているような「実験音楽」ならいくらだって見つかる。でもその人の世界の中にある、溢れんばかりのアイディアと発掘された音が、ちゃんと音楽という領域に収まっているものを探すのってなかなか難しい。ぶっ壊れた音楽なんてわざわざ聴くぐらいなら、ちゃんと作られたものを聴いたほうがいいに決まってる。ネジが外れたというよりわざと外したような、狙った実験音楽音楽なんて聴きたくないから。

The Music Of Sound/Doctor Rockit

人気者ハーバートのドクター・ロキット名義のアルバム。数々の愉快なサンプリングが散りばめられた音と、それについてくるおもちゃのおまけのような可愛いタイトルが詰まった、愛すべき一枚。こういうものこそ家で聴きたい。ハーバートが凄いのは、音楽に対するこだわりと柔軟性とが無理なく同居し、加えて豊かな才能とセンスを持ち合わせているところ、彼のような人のことを本当に「少年みたいな」人だというんじゃないか、リチャード・D・ジェームスやケン・イシイばかりではなく。

Basic Channel Dub Compilation/V.A.

元祖ミニマル。ミニマルといえばクラブで大音量〜!みたいなのが96年はブームでしたが、これはベーチャンならではの地味な、人に言わせりゃ雑音みたいなミニマル・ダブばかりが延々と続くコンピ盤。CDが飛んでても全然気づかなかったような音です。ひとりで真夜中に、なるべく小さな音で聴くのがベスト。ボール紙でできたケースに何の飾りっ気もない白黒コピーを貼っただけのかなりアングラなパッケージ(曲名読めないってば)が音のすべてを物語ってる。しかし来ませんね、モーリッツは。
(※↑その後、来日しているそうです)

Not For Sale/Yoshinori Sunahara and Hibiki Tokiwa

95年にトランソニックから出た、砂原良徳&常盤響氏共同制作の、その名の通り非売品CD。しかし!前号で私が『CROSSOVER』が好きだと書いたら知り合いがテープをくれました(書いてみるもんねぇ…)。「CUT UP」と呼ばれているように、次々といろんなジャンルの音楽がポンポン飛び出すように出てきて(全然テクノなんて出てこない)、最初のうちは驚くけれど次第にそのペースにハマっていく。なんというムードの良さ!モンドとかお洒落とか言われるのは、それだけ粋だってことでしょう。

大昆虫日記/Tuttle&Dynamo Laboratory

関西ではお馴染みのタトル&ダイナモ。昔DELICにヨコタやサワサキと並んで紹介されてましたっけ。とれまからHITIAN TWIN名義で怪しめなダブを出したり、コンピ盤『アンタイトル#2』ではファンキーな曲を披露し、やたら目立ってたあの人達です。打ち込みに生音、しかもサックスやトランペットを使っているのに渋すぎず明るい音に仕上がっているのが魅力的。音の雰囲気もそうだけど、大人が面白いことをやってる感じがフィラ・ブラジリアなんかとよく似ていると思う。もしくは昔のエル・マロ。

☆たまに聴くならこんな曲♪

Mark's Lude/The Ballistic Brothers

とにかくいろんなジャンルの音が節操なく並べられた(ジャングル?レゲエ?フュージョン?サンバ?ってな感じ。でもかなり好き)アシュレイ・ビードル率いるバリスティック・ブラザーズのアルバムの、中盤のちょうど6曲目に入っていたのがこの曲。オルガンでポロロ〜ンと弾くことたった30秒の曲なんですが、これがなんてことなくない!この短い曲がしっかり前後の曲のクッションのような感触になって、すごくいい。フードラムも同じようなことやってたっけ。

(SUGERSWEET9号 秘密のチル・アウト特集 1997年7月)


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