AMBIENT

アンビエントといえば、KLFやジ・オーブ以降ではピート・ナムルックのような退屈なリスニングの垂れ流しという印象が抜けませんでしたが、下に挙げたような音をアンビエントと呼んでいいのなら大歓迎でしょう。シンプルすぎて眠気を誘うだけのようなものよりも、おとなしすぎない程度にちゃんとしたリズムのある曲の方が断然落ち着く。踊らないダンス・ビート、眠らないアンビエント。

Classics Ⅱ/Hoodrum


とれまのSPEAKERの2人(田中フミヤ、山本アキヲ)の別名ユニット、フードラムのCLASSICSシリーズ第2弾。セクシーな感じの1曲目といい、押し引きが絶妙な2曲目といい、『ビジネス・カード』を余裕で上回るクオリティーの高さ(しかし過小評価気味)。いつもはそれぞれ別々に活動している2人が、お互いの魅力を引き出し合いながら、どちらか1人ではありえないバランスの取れた音を作り上げていて、ユニットでやる意味が伝わってくる。ただ、これだけいい曲だとシングルではもの足りない。アルバムを是非。

Music For Babies/Howie B.

ミュージック・フォー・ベイビーズ。 自分の娘に捧げる曲だなんて、松田聖子ばりのことをやってのけるハウィー・B。といっても赤ちゃんに聴かせるための子守唄的なものではなく、子供が生まれたという事実に対する彼の素直な気持ちがそのまま音になった感じ。PUSSYFOOTの音はあまりいいとは思わなかったけれど、このアルバムは人間味のあるいい音ばかりで満ち溢れていて素晴らしい。それぞれにドラマがあるなあと思う。産気づいた時におススメ。

Selected Ambient Works 85-92/Aphex Twin

96年、すべてが絶望的で目の前が真っ暗になった秋の日、ほとんど衝動的に電車に飛び乗り、滅多に持ち歩かないウォークマンにたまたま入っていたこのカセットテープを見つけた。その日、“Xtal"を聴きながら電車の窓から見ていた真っ赤な夕焼け、あの心に染み入る感じを何と表すことができるのか。音楽はいつまで経っても変わらないどころか、小さな世界で景色を変えながら重なり続けてゆくもの。だから名盤には何度だってお世話になっていいと思うし、その度にその時の自分との新しい関係が生まれる。

30.7.94/Sun Electric

何か聴こうと思っていくつか選んでかけてみてもどれもうるさく聴こえてしまって、でもなんか聴きたいのに、っていう時、サンエレを流すと大抵落ち着く。これはタイトル通り、94年7月30日のコペンハーゲンでのライブを収録したもの。この全3曲60分の目が回るような、ハッとさせられるような、眩しいような音の数々は、ただアンビエントをやろうとしたからって真似できるものではない。『KITCHEN』より断然こっちが好き。

(SUGERSWEET9号 秘密のチル・アウト特集 1997年7月)


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