「普通の服」の時代 後篇

普通の服を着こなすために必要なこと

ユニクロが、「安価さよりベーシックさ」をより重視しているという指摘を、前回は書いた。

そして、その質は値段に比して悪くない。

でも、私はめったにユニクロで服を買わない。買えない、というより買えない。

個人的な理由がある。それは、

めぼしい商品の小さいサイズがすぐに売り切れてしまうこと。

だ。おそらく体の小さい人、細身の人であれば、誰もが経験済みだと思う。ユニクロの人気商品、とにかく小さいサイズは争奪戦だ。売れ残ってセールにかかることはほぼない。シーズンの早めに、出たばかりの商品でなければ、SやXSサイズにはまずありつけない。寒くなってきたなー、といって、セーターを探すようでは遅いのである。

そうはいっても、店頭になくても、在庫が確保されているネットショップがあるじゃないかという意見もあろう。

低身長・下半身太め・上半身ガリガリ。自分で言っていて悲しくなるが、どこをとっても平均的ではない私の体は、しつこいほどの試着をしないと、いいサイズのものが見つからない。だから店頭にサイズがない商品は買えないのだ。

あともう一つ、これは感覚的なことだし、過敏すぎるのかもしれないのだけれど、たぶん、そもそものユニクロの「型」が私に合っていない。

そうなのだ。ベーシックアイテムこそ、サイジングが命となる。

普通の服を着たい。そして普通の服を着こなしている人は、今、とても素敵に見える。でも普通の服を着こなすには、ただ、普通の服を買ってくるだけではダメだ。自分の体を知り抜いて、要所要所のサイズ感をチェックすることが不可欠なのだ。

それが痛いほどわかったのは、以前noteでも書いた完全予約制のお直しサロンに行った時のことだった。(↓以下)


すっかりそのサロンのマダムの技術の虜になった私は、数か月後、痩せてブカブカになったスーツのパンツを持ち込んだ。生地はよく、とてもシンプルな形なのだが、とにかくブカブカで、履くとものすごくかっこ悪かったので、もしかしたら、もう直せないのではないかと覚悟をしての持ち込みだった。

すると、マダムはさっと一折、ウエストを折って、ぶかぶかのパンツのヒップが合うようにピンを打ってくださった。「こういうシンプルなものは、ヒップさえ合えば大丈夫よ」。その言葉通り、あれほどブカブカしていたパンツが、ヒップが合ったことで、別物というくらい、スマートに変わったのだ。

その後、紺色のセーターを買いに行った時にも、サイズによって変わる印象に驚いた。ベーシックな紺色のセーターは、私が一番自分らしいと感じるアイテムである。1年間服を買わなかったせいで溜まっていたすさまじい欲望と、最高の一着を探したいという強い願い。私は紺色のセーターをたった一着買うために、3日間かけて試着を4~5軒にわたり、数十着した。同じように何の変哲もない紺色のセーターを試し続けるなかで、自分に合ったサイズにこだわることの重要性と、それが見つかった時の喜びを知った(ついでに、ベーシックな服を、今、ユニクロ以外で探すことの難しさも知った…)。

とはいえ、こんなに時間をかけて服を選ぶのも、多くの人にとって現実的ではないだろう。タイムリーにも、サイジングのコツについて、れいのお直しサロンのマダムが本を出されたので、ご紹介したい。

madameHこと佐藤治子さん。人気ブログ「madameHのバラ色の人生」の書き手としても有名な方で、ロジェ・ヴィヴィエをコレクションし、シャネルやグッチなどのハイブランドを着こなす一方、無印良品やユニクロ、ZARAなどでも、掘り出し物を見つけてしまう凄腕の持ち主だ。それは当たり前と言えば当たり前で、佐藤さんは、アパレルでデザイナーとして30年以上のキャリアを積んでおられる(御年69歳!とっても見えない。)。

本のタイトルは、「普通の服を、はっとするほどキレイに着る」。プレタポルテ(既製服)のプロだけあって、どこに注力すれば、自分にとっていい服が見つかるのかを懇切丁寧に説明してくださっている。私が感動したパンツのサイジングはもちろん、ジャケットを着こなすコツ、安いカシミヤと高いカシミヤの違いなど、実用的でどこにも書かれていない真実がたくさん。私にとっても、たいへん役にたっています。サイジングについて知りたいという方、おすすめです。

この記事は投げ銭制です。以下に、最近見つけたとても素敵な香水について、ごく短く、書きました。とても個人的な、日記のような内容なのですが、上の記事を読んで、もし投げ銭していただける方がいらっしゃったらうれしいです。

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