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話題作「新聞記者」レビュー&ヒット予測

噂に違わぬ作品だった。

これだけ攻めた作品を世に出した企画者、
並びに制作陣、作品に参加したキャスト陣に
拍手を送りたくなった。

集団と個、同調圧力と多様性が混在する今の現代を
フィクションとして描きつつも、あたかも現実に起こっている
ことと錯覚させる程リアリティが滲み出ていた。
(生物兵器への結論づけはどうかという声もありそうだが、フィクションであり、かつこうした作品が作られる意義こそが重要だと感じる)

「誰よりも自分を信じ疑え」

物語の根底に流れる主人公吉岡の父が残した
作品が明確に打ち出したメッセージ。

娘として、一人のジャーナリストとして、
事件の真相を追う吉岡と、上司の謎の死と理不尽な組織の判断、
そして子を持つ父として悩む若手官僚の杉原。
それぞれの正義に揺れる二人を演じたシム・ウンジョンと松坂桃李。
シム・ウンギョンの研ぎ澄まされた、ピュアに問う強い眼差ししかり、
信念と現実の間で彷徨い続ける桃李くんの表情、どちらも素晴らしかった。

特に桃李くんは、この数年の多様な作品選びと、
今作の役への出演と、役者としての覚悟を感じる。
本当にこの作品での感情表現、役の人生を背負っていたし、
最後の最後、あの空虚な眼差しは、もう、なんとも言えない。

脇を固めるキャストいずれも良かった。
悪役が板につきすぎてるさすがの田中哲司、
デスクのリードとして悲哀を知り尽くした表情を見せる北村有起哉、
言葉を多く発せずとも表情と所作で語り尽くす西田尚美。

俯瞰でのカットやスローモーションを取り入れた印象的なカットも多く、
映像も音楽も制作陣の真剣さが伝わる素晴らしい出来だった様に思う。

参院選直前の公開も秀逸。
選挙という国家イベントを映画のプロモーションに
してしまっている感さえある。

改めてフィクションだとしても、
今見るべき映画、だと思う。

興行的にはSNS中心にじわじわ伸びているようにも感じる。5-10億円(現実的には5-7億円という所か)レンジまでは行ってほしいものだ。

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