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ばってん少女隊「あんたがたどこさ〜甘口しょうゆ仕立て〜」と「BAIKA」最高だから聴いてほしい

 新曲「あんたがたどこさ〜甘口しょうゆ仕立て〜」最高です。

 そして、今回のシングルはc/wに「BAIKA」が入っています。
 ばってん少女隊のシングルにc/wが付くのは、ビクターとのメジャーレーベル契約終了後、初めてです (※) 。
 この「BAIKA」も最高。

(※)「OiSa -2021.ver- 」に「ばりかたプライド」「FREEな波に乗って」のシングル2曲が収録されたのは、プチベストシングル的なことなので除く

 以下、個人の主観全開で「この曲の良いところ、感じたこと」をあーだこーだ書いていきます。
「自分の解釈しか必要ない!」という方は、ここでばいばいば〜い。
 でも、他人の考えを聞くことで、楽しみ方が広がったりするので、気が向いたら読んでみてね。

ヘッダー画像について、ほくゆさん (※) のイラストを使用させていただきました。どうもありがとうございました!
(※) ◇今月の隊員さん◇ 第72回:ほくゆさん



■ばってん少女隊の「少女」部分が強調された世界観

 MVでは、ウルトラマンのオマージュ (2:09〜) から、メンバーが巨大化したり、謎の高速回転や新体操ポーズなど、これまで観たことのない「新しいばってん少女隊」が散りばめられています。

 直近2年、ばってん少女隊は "九州の観光スポット" をロケ地としてMVを作ってきました。
 しかし、今回は ”しょうゆの製造工場” という社会科見学で行くような場所を選び、意図的に ”工場の人を見切れさせる" など遊び心があって、「これは深刻に観るものじゃないよ。楽しく観てね♪」という、製作陣からのメッセージを感じます。

 ホラーテイストだった代表曲「OiSa」のMVと比べると、その対極にあるような世界観です。
 言わば、ばってん少女隊の「少女」部分にフォーカスした、わちゃわちゃ楽しい作品となっています。

 特に、MVの2:25〜で、巨人になった瀬田さくらさんが、手まりつきで阿蘇の米塚を作るシーンは「汚れなきイタズラ」って感じで象徴的です。

 ただ、この曲の歌詞や振付について考えてみると「楽しい」だけにとどまらず、一見関連のないものを掛け合わせて、自分流の美を見出そうというメッセージや、日本古来の「わび-さび」とか「もののあはれ」みたいな意味を感じるので、そのあたり書いていきます。


■そこにいたの? 運命の人

 手まり歌「あんたがたどこさ」がベースになっていますが、原曲に出てくる「船場山のたぬき」は出てきません。
 代わりに出てくるのは「運命の人」 = 人たらしな、あんた (がた) 。

 で、
 気になるのが、冒頭の歌詞です。

そこにいたの? 運命の人

 これ、ちょっと変な歌詞です。
 「運命の人」とは「今、この世界のどこかにいる、将来出会う人 ( 例:いつか現れる王子様) 」をイメージするのが一般的かと思います。
 だから、「運命の人」との出会いは「始まり」を予感させる、ドラマチックな場面にするのが定番です。

  ところが、この曲は違います。
 「あ、そこにいたの?」
 みたいな感じで、日常生活の中に「運命の人」を見つけています。

 この曲を作曲されたPARKGOLFさんは、次のようにコメントしています。

どこの誰が作ったかもわからない童歌が現代にまで通じてるってかなりロマンがあります。

ナタリー/PARKGOLF コメント/2023年7月3日

 例えば「あんたがたどこさ」を作った、遠い昔の時代の、名前も分からない人のことを想像して「どんな気持ちで、この歌を作ったんだろう?」と考えながら、手まり歌「あんたがたどこさ」を聴いてみると、それまでと違った味わいを感じると思います。

 つまり、自分が生まれるより前の、遠い昔の時代に生きた人が、自分の人生に影響を与える「運命の人」なのかもしれない。
 子どもの頃から自然に歌っていた手まり歌「あんたがたどこさ」を作った人のことを「運命の人」と、勝手に捉え直して、世界を楽しんでみよう。
 この曲の主題は、こんなところかと思います。

 次に、この主題がどんな風に展開していくのか。振付などから見ていきます。


■どこへ向かっているのか①〜交錯する振付〜

 パッと目につく振付に、「手まりつき」があります。
 曲中でボールをバウンドさせる場面は、ライブで成功するかどうか、ドキドキチャレンジ! 的な効果を生んでいますが、この "バウンド" は、もう一つの意味を示唆しています。

bound/形容詞
意味:〜行き
例文:This train is bound for Kumamoto. (この電車は熊本行きです)

 英語にしたとき、bound/形容詞「〜行き」という意味を持ちます。手まりをつきながら、主人公はどこかへ向かおうとしています。

 そして、曲の中盤で「あんた (がた) 」とは別の、もう一人の人物が登場します。

路面に乗ってGO
君のとこ それどこ 熊本

 「君」です。
 「君」も熊本の人なので、主人公は熊本を目指しながら、「あんた (がた) 」と「君」の2つに魅了されているようです。
 この2つは何を暗示しているのか。

 この部分の、振付に注目です。
 振付は、第2の歌詞です。

 こんな感じで、3人対3人に分かれ、指差した腕を「時計の針」のように、カチ、カチ、カチと上下させる振付となっています。

 で、よく観ると、片側の3人は「時計回り」で腕を振り、反対の3人は「反時計回り」と、時間が交錯していることが分かります。

 つまり、行き先は「単に熊本を目指す」ことにとどまらず、時空を超えて、昔に思いを馳せる「過去へ」という意味と、同時に「未来へ」という意味のダブルミーニングになっています。


 ちなみに、この「過去・未来へ」のダブルミーニングは、MVでも違った形で表現されています。

【A】MVの1:58〜 (6人が、"しょうゆ" で円を描くシーン) 。
 俯瞰の画面から、円の中心へ視点が切り替わります。
 ここでポイントなのは、ばってん少女隊の6人は「時計回り」に回転しているけれど、それを観ているカメラ ( = 視聴者) の視点は「反時計回り」になっていることです。
 つまり「未来へ向かって進んでいく6人」を通して「過去を観る」という視点が提示されています。

【B】そして、直後のシーン2:09〜 (巨大化するばってん少女隊
 ウルトラマンという懐かしのヒーロー、または、日本各地に伝わる巨人伝説「だいたらぼっち」を想起して、ある種のノスタルジーな感覚を持つ人もいるでしょう。
 そんな「昔を想起させるもの」を観せつつ、巨大化するばってん少女隊という、今まで観せたことのない「新しい姿」を観せる。
 【A】から【B】へ、「過去」と「未来」を同時に観せるダブルミーニングが、続けて提示されています。


■どこへ向かっているのか②〜いらんパスポート〜

猟師が撃つ鉄砲 それ物騒
ポケットの鳴るスマートフォン
それを木の葉でちょいと被せよう
いらんパスポート

 ↑ は、2番Aメロが終わって、曲中で最も音数が少なく、この曲の「暗」の部分がチラ見えするパートの歌詞です。
 何を言ってるのか、パッと理解しづらく、曲全体を通しても難解な部分かと思います。

 少しずつ見ていきます。

「猟師が撃つ鉄砲 それ物騒」は一旦置いておいて。。。

「ポケットの鳴るスマートフォン それを木の葉でちょいとかぶせよう」という歌詞は、スマートフォンで出来る色んなことをやってみよう的なニュアンス。
 最後の「いらんパスポート」は、いつかスマートフォンにパスポート機能が備わる時代が来て、紙のパスポートは不要になる、という意味もあるかもしれませんが、ここはもっと広く自由に解釈したいです。

 解釈の補助線として、熊本のお祭り:妙見祭を取り上げます。
 昨年リリースされたばってん少女隊のアルバム「九祭」のリード曲「御祭りsawagi」のモチーフになったお祭り:妙見祭です。
 (ちなみに、作曲に今作と同じPARKGOLFさんが名を連ねる作品でもあり、振付も今作と同じ振付稼業air:manさん)

 MVで何度か見切れますが、このお祭りには「中国っぽい民族衣装を着た人物」が登場します (例:MVの2:49〜、メンバーの後ろで銅鑼叩いてる人) 。

 妙見祭は、日本のお祭りでありながら、中国風の獅子舞、衣装や楽器を用いるのが昔からの習わしだそうです。
 その由来は、今から300年以上前、"長崎で見た中国風の獅子舞" に感激した熊本の商人が、これを地元のお祭りに取り入れたことにあるそうです。
(参考資料:八代市HP「八代 妙見祭/3ページ目◆獅子〜中国風の獅子舞〜」 )


 すなわち、熊本の妙見祭に興味を持ち、その成り立ちについて掘り下げていくと、その歴史 (ルーツ) は日本を越え、海外まで飛んでいくことになります。

「300年以上前の人は、どんな気持ちで中国風の獅子舞を、地元に持ち帰ったのだろう?」
「当時の人々にとって、海外とはどんな場所だったのだろう?」

 そんな風に「過去」を想像し、その「思い」が国境を越えるとき、パスポートは必要ありません。
 つまり、「いらんパスポート」とは、スマートフォンで歴史を掘り下げていくとき、パスポートはなくても国境を越えて様々な調べ物ができる、という意味でしょう。

 そして、自分が生きている世界を形作る「歴史」について学ぶと、様々な「始まり」( → 今では "当たり前" になっている風習や行事が、まだ "当たり前じゃなかった時代" ) の感覚に出会うことになります。

 その感覚とは、どんな感覚なのか。自分が持っている感覚との「違い」を理解しようとする気持ちが芽生えます。

猟師が撃つ鉄砲 それ物騒
(略)
想い違っても未完成を誓っていよう お話ししようよ

 歴史を学ぶことから、「違い」を理解しようとする。
 転じて、互いの「違い」を認めるとき、鉄砲は物騒。
 「想い違っても未完成を誓っていよう」とは、もし「違い」が原因で争いが起こっても、決別しないで「違い」を理解しようとすることを誓っていよう、という意味だと思います。
 つまり、「未完成」であることに、未来への希望を見出す。
 そんな優しいメッセージが「お話ししようよ」という歌詞につながります。


■韻に潜む「OiSa」〜「BAIKA」に通じる美意識〜

 で、この曲の隠し味というか、作詞をされたラッパー:Rachelさん (chelmico) が、歌詞で踏んでいる「韻」に注目すると、ばってん少女隊の代表曲「OiSa」が浮かび上がってきます。

「九祭」以降、最初の作品に「OiSa」を潜ませること、私は大賛成です。
 「あんたがたどこさ〜甘口しょうゆ仕立て〜」をきっかけに、ばってん少女隊を知る人もたくさんいるでしょう。
 明るくキャッチーな曲とは対照的な、クールな世界観の「OiSa」も、新規さんには是非聴いていただきたい。
 そうやって、曲がどんどん広まっていくことが、ばってん少女隊の可能性を広げることにつながります。

 今回のシングルにc/w「BAIKA」が加わったのも、1曲にとどまらず、2曲目以降も聴いてね。そんなメッセージが込められているのでしょう。

 で、隊員さんはご存知の通り、c/w「BAIKA」も最高です。
 「今年も庭に梅が咲きました」というフレーズなど、趣深い歌詞、メロディが素晴らしい、"聴かせる名曲" が新たに仲間入りです。

 曲の雰囲気は違いますが、2曲に共通するのは、春夏秋冬、時間の移ろいの中、完結することのない「未完成」の中に美しさを見出そうとする感性。
 日常に流れる、小さな変化に情緒を感じ取る、そんな感覚を「わび-さび」とか「もののあはれ」という言葉で日本人は大切にしてきました。
 「あんたがたどこさ〜甘口しょうゆ仕立て〜」と「BAIKA」に底通する美意識です。


 「あんたがたどこさ」のMVは、わちゃわちゃ楽しい要素がいっぱいで、巨大化したばってん少女隊が、熊本・大分で大暴れするカオスなシーンもありつつ (なぜかボールまで巨大化する謎理論) 、でも最後に6人は等身大の姿に戻ります。
 どんなに大きくなっても、自分たちは九州の魅力を発信するグループである、そんな「地に足がついたグループである」ことを示唆しているようです。。。が、やっぱり、ばってん少女隊には、もっともっと、も〜〜〜っと大きくなってもらいたい!

 そのためには、新曲がどんどん広がっていくことが必要です。

 ばってん少女隊最新シングル「あんたがたどこさ〜甘口しょうゆ仕立て〜」と「BAIKA」最高だから、是非聴いてください!


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