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泥の国のアリス❤1


”あれらはそれらがあると上機嫌で語りだし、それらが去るとやけに不親切だった”


 ある良く晴れた朝に、庭で遊んでいたアリスは母親に呼ばれて、台所に向かいました。
「どうしたのお母さん?。」
アリスが聞くと、アリスの母親はお昼の準備をしながらこうこたえました。
「近所のマギーおばさんがまた新しい調味料を分けてくださるって言うから、アリスに取りに行って来て欲しいのだけど、おつかい頼めるかしら?。」
マギーおばさんというのは、近所でも有名な調味料収集家で、家の留守を旦那にまかせて世界中を興味の引くまま旅しては、現地の人と仲良くなって調味料とレシピを収集するのが趣味な人なのでした。
「今度はどんな調味料かしら?楽しみだわ!私行ってくる!。」
そう言ってアリスは、元気よく台所を出ようとします。
「待ってアリス!これをマギーおばさんに渡して欲しいの。」
アリスは不思議そうな顔をして振り向くとアリスの母親は手作りイチゴジャムをアリスに手渡しました。
「調味料のお礼にね。」
このアリス母手作りイチゴジャムはアリスの大好物で、このジャムと生クリームを使ったジャムサンドイッチでアフタヌーンティーをするのがアリスの幸福の一つでした。
「お母さんそういえば、取ってくる調味料の名前はなんていうの?。」
なんとなくアリスが聞くとお昼の準備をしていたアリスの母親は手を止めて難しそうな顔をしだしました。
「そうねぇ...せ?...とぉう...でもないわ。とりあえず、マギーおばさんに聞いてみて!。」
アリスの母親は苦笑いで誤魔化すと、アリスにさっさと行くよう促しました。
アリスはお気に入りのカゴにイチゴジャムを大事そうに入れると
「わからないけど、わかったわ行ってくる!。」
アリスはふたたびふわふわの金髪を揺らしながら、元気よく母親に手を振りながら玄関を飛び出して行きました。

 太陽が少し真上に着く前にアリスはマギーおばさんのお家に着きました。
マギーおばさんの家は大きな畑と牧場も持っていて、農場から家に着くまでも一苦労なのでした。
 アリスは少し息切れした呼吸を整え、玄関のドアをノックしました。
少し待っても誰も来る気配がしないので、アリスは恐るおそるドアを開けて
「マギーおばさん。」
と呼んでみても、マギーおばさんは来そうにありません。
ただ、おいしそうな匂いだけがしてきます。
アリスはきっとマギーおばさんはお昼の支度に夢中になっているんだと思って、こっそり台所に向かうことにしました。
いい匂いをたどってお腹を鳴らしながら台所へ向かうと、パイ生地を必死にこねているマギーおばさんが見えました。
台所の中をのぞくと、大きな鉄鍋がぐつぐついっているのが聞こえます。
「マギーおばさんこんにちは!。」
元気よくアリスが言うと、
「わあっびっくりした!!アリスかい!?どうしたんだい?!。」
マギーおばさんはびっくりした目のままアリスを見ました。
「新しい調味料を取りに来たの。それとお母さんのイチゴジャムを届けに来たのよ。」
アリスは持ってきたイチゴジャムをマギーおばさんに渡しました。
「おや、これはいいものを貰ったね。なんのパイにしようかと考えてたけど、ジャムのパイにしようかしら。」
ジャムのパイというおいしそうな響きにアリスのは心奪われて、アリスのお腹はまた鳴るのでした。
「あら、もうお昼になっちゃうわね。アリスの家の分はそこの机の上に置いてあるのよ、それと朝一で採った野菜がこの窓から見えるあの大きな木の下にあるから好きなだけ持って帰りなさい。それまでにレシピのメモを準備しとくからもう一度ここに寄ってね、ああ忙しい忙しい。」
アリスはマギーおばさんの言った調味料が目に入ると、びっくりしました。それは、小瓶に入った真っ黒な液体でした。アリスはわくわくしながら蓋を開けて喉も乾いていたので、バタバタしているマギーおばさんにバレないよう一口飲んでみました。
「アリスそれはねせ?あら?なんだったかしら...あら?アリスもいない。」

その瞬間口の中に塩辛い味が広がり、アリスは口を押えて悶絶しながら外へ飛び出しました。
マギーおばさんが言ったあの木のすぐそばに井戸があったのでそこで水を飲もうとしたのです。走りにくい畑の中、靴が泥だらけになってるのも気にせず、アリスは全速力で井戸を目指します。

井戸まであともう少し、のとこでアリスはぬかるみに足を滑らせ、野菜が置いてあるところ目がけて勢いよく頭を突っ込んでしまいました。
『ごちん』
と鈍い音が木の根元からあたりに響きあたり。
アリスはそのまま意識を失ってしまいました。

                            ❤続く

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