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泥の国のアリス❤3

❤3

”おさかな おさかな おさかなさん”


 アリスが悲しそうに涙をこぼしていると子供のトマト人間が不思議そうな顔をして覗き込んできました。
「ふむふむ、これが人間というものか?おまえ変わったにおいをしてるな?顔も腐った野菜みたいにぶにぶにしてるし。」
そう言って子供のトマト人間は容赦なくアリスの顔を両方の手で潰すように触ってきます。
「それに頭に付いてるそれはなんだ?トウモロコシたちとのは違うようだが?」
今度はアリスの髪を左右上下に引っ張って遊びだしました。子供のトマト人間のやりたい放題にだんだん腹が立ってきたアリスは声を荒げてものを言おうとしましたが、泣いていたせいでなかなか声になりません。
「なんだ?口をパクパクさせて?お腹でも空いてるのか?」
子供のトマト人間は、ポケットをさぐって何かが入った巾着を出してきました。
「兄たちにはナイショだぞ?ここの土は美味しいと評判なんだ。ほら、口を開けないか?」
アリスはびっくりして思わず口を閉じましたが、子供のトマト人間はしつこく口に入れようとします。アリスはたまらず
「いらないわよそんなもの!!」
と、大声で言いましたが。子供のトマト人間は気にせず、さらに何とかアリスに食べさせようとしてアリスの体によじ登ってきました。
「だからいらないって言ってるじゃない!!」
「どうして!おいしいものなんだよ!!」
二人が暴れるものだからアリスをつないだ紐が左右に揺れだし、枝までもが限界まで折れ曲がっています。
「だから食べろって!!腹減ってるんだろ?」
「絶対嫌に決まってるっでっ!?」
その時、ボキッと大きな音を立てて枝が折れました。



「きゃー!!!」
どべしゃっ
アリスは尻もちをつきましたが、お尻が痛くありません。恐る恐る下を見ると、どうやら子供のトマト人間の頭をお尻に引いて着地していました。子供のトマト人間は微動だにせず倒れています。アリスは、さっきのショックで紐も解けてるのを幸運に思い、この場所から逃げ出すことにしました。



 アリスは森を抜けると水の入ったオケを見つけました。たくさん走ってノドが乾いていたので、アリスは急いで小さな崖から降りてオケへ向かいました。オケの中を見ると白いパジャマを着た双子が水に体の半分をつけているところでした。その異様な光景にアリスは目を大きくして黙っていると双子が話しかけてきました。
「やあアリス。こんなところでどうしたんだい?」
どういうわけか双子はアリスの名前を知っていました。
「私は…そうね今逃げているところなの。」
やっとのことでそう言うと双子が不思議そうな顔をするのでアリスは言葉を続けることにしました。
「あなたたちは何をしているの?」
「僕たちのことかい?僕たちは今エラを復元させているところさ。」
双子は上機嫌でこたえます。
「人はね、昔お魚だったんだ。だから水につかっていたらきっとエラが出てくるんだ。そうしたらね、僕たちは仲良くうでを組んで湖の底を散歩するのさ。」



「それはとても素敵ね。」
アリスはそんなことを本当にできるのか疑問を感じていました。
「魚と同じ目線で散歩できるし、そうだアリスも一緒にどうだい?」
双子は嬉しそうにアリスを誘います。
「いえ、それよりお水を飲めるとこを知らないかしら?」
双子は少し悲しそうな顔をしてからアリスに言いました。
「この先に、とてもきれいな湖があるからそこの水を飲むといいよ。」
「ありがとう双子さん。」
追っ手を気にしていたアリスは走りながら双子にさよならのあいさつをするのでした。



❤4へ続く
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