見出し画像

Autistic adults’ views and experiences ofrequesting and receiving workplaceadjustments in the UK

Abstract

本研究は、UKでADHDと診断された181名の成人を対象に、職場調整の要望と受領体験を明らかにするものである。オンラインサーベイを行った結果、職場の調整は重要だとするものが多勢だったが、多くはそれを受けていなかった。また、対象者の多くは、調整の必要事項、よい調整を行うこと、使用者からの調整の要望に応えることの責任は自分たちにあると感じており、そのプロセスに苦しんでいた。さらに、職場の調整がうまくゆくには社会的・組織的なバリアがあると感じていた。こうした状況は、現在の仕事でうまくゆき機会から遠ざかるどころか、将来の雇用にも影響を及ぼしていた。職場の理解と調整が非常に重要であることを裏付ける結果となった。

Introduction

  • UKでは、使用者はEquality Act 2010に基づいてreasonable adjustmentを提供する必要がある

  • 障害の正式な診断は法的に義務付けられていませんが、雇用主は障害の医学的証拠を要求することができ、従業員が障害とみなされる基準を満たさないと思われるという理由で調整の要求を拒否することができます

  • 特に自閉スペクトラム症の特徴は就業において不利益を与えるため職場の調整は重要だが、効果的な支援に関する知識はほとんどない

  • それどころか、まず必要となる支援を自ら明らかにする、それを使用者に伝える、正しく適応される、というプロセスには困難が伴う

よい職場調整 (合理的配慮) を実現する方法を知るために、当事者にアンケート調査を実施する


Method

  • 18歳以上の自閉スペクトラム症の診断を受けた働いている・働いたことがあるもの181名を対象とした

  • アンケート回答者の中には診断を受けていないが自らを自閉スペクトラム症の特徴を有しているとして参加した者もいた (これは別の研究でフォローするようなので意義がある)

質問は「職場環境の調整でうまくいった事例とうまくいかなかった事例を教えてください」「どんな職場環境の調整をお願いしましたか」

Results

職場環境調整の依頼について

  • 職場環境の調整が必要だと思う (n=152 83.9%)

  • 職場環境の調整は必要ではない (n=10, 5.5%)

  • 職場環境の調整をお願いした (n=106, 58.6%)

  •  職場環境の調整をしてもらえた (n=65, 35.9%)

  • 職場環境の調整をお願いしなかった (n=73, 40%)

  •  調整してもらいたかった (n=57, 31.5%)

  • 職場環境の調整について信頼できる同僚に話したい (n=69 of 151, 45.7%)、産業保健スタッフなど知る必要がある人に話したい (n=4, 2.6%)、組織全体で自由に話したい (n=26, 17.2%)

  • 環境調整について話し合うのは難しい (n=47of151, 31.1%)

職場環境調整の依頼内容

  • ノイズキャンセリングヘッドフォン、静かな部屋、アクセシビリティを向上させるソフトウエア、割り当てられた机や駐車場などの設備

  • 強みを活かせる役割、ラッシュアワーを避けられる勤務時間、リモートワーク、情報資源、メンターなど役割調整とサポート

  • 具体的で明確なコミュニケーション、同時に質問を一つにする、変更前の事前通知など職場コミュニケーションを変える、社会的義務を変える、ニューロダイバーシティーについて理解を深める、衣服の選択を自由にするなど職場風土の変更

多くの職員は上記の調整を求めること自体がないことから、そうしなくては適応しがたいと感じていることそのものが支援対象の判断材料とされうる

職場環境調整の依頼の結果

  • 環境調整を依頼した106名のうち、81名はうまくいったと回答

  • 物理的環境調整ではノイズキャンセリングヘッドフォンの要望は実現しやすく、個人のデスクやオフィス環境調整はほぼ実現するが、静かな環境や刺激をやわらげた環境の要望は実現しにくかった

  • UKではラッシュアワーを避けるなど勤務時間調整がもっとも実現いしやすく、リモートワークはほぼ実現し、サポーターをつけることも実現したが、仕事の役割変化は実現しにくかった

  • コミュニケーションのあり方を変えることは実現する確率が50%程度であり、組織風土や理解を深める要望は実現しにくかった

  • 総じて、物理的環境の変更は行われやすいが、準備できない物理的環境は実現しない

  • 支援者をつけたり勤務形態を変えるのは実現できるが、職務の内容を調整することは難しい

  • 組織的な風土の変更は難しく、コミュニケーションのあり方は変えようとするところもある

  • 限界があるということになる

診断の開示

181名のうち160名(88.4%)が診断名の開示が必要だと感じており、そのうち149名 (93.1%) は少なくとも一人の同僚に診断名を開示している (UKの開示率の高さを示しているのか、回答者の傾向かはわからない)

環境調整の関連要因

  • まず、使用者が診断を有するかたのニーズを理解していないところから苦労が生じている (使用者が悪いわけではなく理解できていないという意味)

  • 次に、環境調整を行えるとしても、経済的・資源的・時間的な問題が最も大きな課題となっている

  • ほかに、配置換えをされるのではないか、ほかの職員に影響を与えるのではないか、偏見の目にさらされるのではないかという点が環境調整に影響している

  • 環境調整がうまくいかない理由に、擁護を継続して求めなければならないこと、こうした活動そのものが精神的に影響すること、不当解雇を含めて職位に影響があることなどがあげられる

Reference

  1. Davies, J., Heasman, B., Livesey, A., Walker, A., Pellicano, E., Remington, A. (2022). Autistic adults’ views and experiences of requesting and receiving workplace adjustments in the UK. PLoS ONE, 17, e0272420

感想

  • まず組織が自閉スペクトラム症と診断された方の一般的なニーズや、個別のニーズの具体例をある程度しる必要があると考えられる

  • また、どの程度実現可能か、どの部署なら可能かなども検討しておくとよいと思われる

  • さらに、環境調整の討議を行う際の従業員の負担を減らすために、企業として職場環境調整を行っている場合、ウェブサイトに掲示するなど配慮の具体例をあらかじめ知らせられるとスムーズだと思われる


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?