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微妙なプレゼンティーイズムのメタ分析:Going to Work Ill: A Meta-analysis of the Correlates of Presenteeism and a Dual-path Model

概要

ウェルビーイングと組織の生産性への影響を考慮して、病気のときに仕事に出席するプレゼンティーズムへの関心が高まっている。本研究では、先行研究の要約によりプレゼンティーイズムの最も重要な原因と要因を明らかにすることを目的とした。さらに、いくつかの重要な相関関係からモデルを構築し、アブセンティーイズムとプレゼンティーイズムの出席主義と欠席主義の要因を比較した。メタ分析 (合計K=109、N=175,965) を行い、プレゼンティーイズムとメタ分析構造方程式モデリングの相関関係を調査し、モデルを検証した。
その結果、プレゼンティーイズムに関連する要因として、一般的な健康状態の悪化、欠勤に関する制約 (例:厳格な欠勤規定、雇用の不安)、仕事の要求の高まりとストレス、職場と個人的資源の不足リソースの不足 (例:サポートの低さと楽観主義の低さ)、否定的な人間関係の経験 (例: 認識された差別)、および前向きな態度 (満足、関与、コミットメント) であった。
さらに、本研究で用いた二重プロセスモデルは、仕事の要求と職場と個人の資源が健康障害と動機の経路の両方を介してプレゼンティーイズムを引き起こすことを明らかにし、アブセンティーイズムよりもプレゼンティーイズムにより多様な要因があることを示した。

問題と目的

  • 本研究では初めてプレゼンティーイズムのメタ分析を報告し、有効な相関関係をもとにモデルを構築してアブセンティーイズムとプレゼンティーイズムの要因の差を明らかにする

  • プレゼンティーイズムには9つの異なる定義があるとされるが、近年では主として次の二つが用いられる

  • 第一は、病気の間に仕事をすること

  • 第二は、病気の間に出席することによる生産性の損失である

  • 本研究は第一の定義を用いる

  • プレゼンティーイズムはアブセンティーイズムよりも生産性の低下に寄与していることが指摘されている

  • プレゼンティーイズムは後のアブセンティーイズムを予測するとか

  • プレゼンティーイズムによる職場の感染、職場の安全性への影響も指摘されている

  • しかし、生産性が低下してもないよりはよいこと、病気を抱えても職場にくることが市民活動やコミットメントの意思表示とされることからネガティブな側面ばかりではない

プレゼンティーイズムの観点

  • 本研究のモデルは、要求-コントロール-サポートモデル (Demand-control-support model; DCS)、要求度-資源モデル (Job demands-resources; JD-R)、および代替モデル (Caverley et al., 2007) により構成される

  • さらに、文脈 (Aronsson & Gustafasson, 2005) および個人的要因 (Johns, 2010) も考慮したものである

  • プレゼンティーイズムは病気による健康の低下と同時に、仕事へのモチベーションの高まりという二つのパスを生じる

  • (センスがない、というよりも本研究で対象としているプレゼンティーイズムは出勤したいと思っているが病気のせいでできなくなったという方を想定しており、現在の日本が対象としているプレゼンティーイズムではない

  • (しかし、そういう方ももちろんおられるため、プレゼンティーイズムの対象が二つあるととらえて読み進める

  • (もしかすると、これまでの概念でとらえられなかった職場の苦しみに言及している点で、とても鋭い発想かもしれない

プレゼンティーイズムと健康、欠勤、パフォーマンス

  • うつ病は適切とは言えない欠勤の理由とみなされているという具体的な異文化的証拠がある (早く次を読みたいです、すみません)

  • 特にうつ病や一般的なこころの問題は職場で開示するのが難しい、なぜなら偏見にさらされるからである (海外でも、、終わってる、、)

  • したがって、うつ病や心理学的問題はプレゼンティーイズムと関連する

仮説1a:一般的な健康の低下はプレゼンティーイズムと関連する (前提条件のようなもの)

仮説1b:健康の低下とプレゼンティーイズムの関連は、うつ病や精神的な問題のほうが一般的な不健康よりも強まる

仮説2:プレゼンティーイズムは、アブセンティーイズム、疾患による生産性の低下、パフォーマンス低下と関連する

アブセンティーイズムの制限

  • 代替仮設 (Caverley, Cunningham & MacGregor, 2007) によると、プレゼンティーイズムの要因の一つは欠勤の制限である

  • したがって、組織の方針、雇用の不安、個人の経済的困難、欠員補充の困難などが欠勤の制約となり、結果的にプレゼンティーイズムを引き起こす可能性があると考えられる

  • ほかには、常勤かどうか、個人的な経済状況なども影響すると考えられる

仮説3:アブセンティーイズムへの制約を考慮すると、欠勤への厳しい制約、職場の安全性の欠如、非常勤、個人的な経済的問題がプレゼンティーイズムを促進し、欠員補充の容易さがプレゼンティーイズムを抑制する

仕事の要求度とストレス経験

仮説4:プレゼンティーイズムは、仕事の役割の要求 (役割の不明瞭さ、葛藤、身体的要求、高い仕事の負荷、難しい患者やクライエント、人員不足、管理者役割などが含まれる)、時間の要求 (残業、シフト勤務、時間的切迫感、長時間労働が含まれる)、総合的な仕事の要求度 (仕事のプレッシャー)、ストレス体験、バーンアウトにより促進される

(繰り返すが、適切かどうかは置いておいて、本研究ではプレゼンティーイズムの結果とされているものの多くを、先行要因としてモデル化している
(つまり、仕事の要求度や負荷が多いと、逆に出勤を期待されていると感じて疾病を抱えながら勤務せざるを得なくなるというものである

仮説5:プレゼンティーイズムは、差別されている感覚、ハラスメント、虐待によって促進される

(この仮説には補足が必要で、仕事へのモチベーションというパスは低下にいたるが、出勤を強制されていると感じるようになるとして仮説にいたっている

仮説6:プレゼンティーイズムは、仕事による家族の葛藤によって促進され、家族葛藤による仕事への影響によって抑制されるだろう

職場と個人の資源

仕事のコントロールは健康問題を抑制し、

仮説7:仕事のコントロールはプレゼンティーイズムを抑制する

医師や看護師など他人を援助する職業人がセルフケアを怠ることが知られている

仮説8:仕事の意義はプレゼンティーイズムを促進する

  • 支持的な職場は従業員の資源となり、病気からの回復や悪化を防ぐための休養をとる自信を従業員に与える

  • また、従業員や職場を信用できると病気の自己開示がすすむとされている

仮説9:同僚のサポート、上司のサポート、組織のサポート、リーダーシップの質はプレゼンティーイズムを抑制する

個人の資源 (特性) として、楽観性は健康でなくてもあまり気にしない、誠実性は限界まで仕事を継続する態度に結び付く可能性がある

仮説10:楽観性、誠実性はプレゼンティーイズムを促進する

仕事の態度と正義

組織的に公平に扱われているという感覚、エンゲージメントの感覚は、医学的に問題があっても出勤する意欲をもたらす

仮説11:仕事の満足度、感情的なコミットメント、エンゲージメント、組織的な正義はプレゼンティーイズムを促進する

最後に、先行研究に乏しいが、男性よりも女性のほうが健康行動をとる傾向が強いことからプレゼンティーイズムが抑制され、民間企業よりも公的機関の仕事のほうがプレゼンティーイズムが促進されると予想される

2経路モデルDual-path model: Indirect Effects

方法

プレゼンティーイズムは、病気もしくは気分が悪いにもかかわらず出勤した日数、本当なら病欠をとるべきにもかかわらず出勤した日数、病気の期間を訪ねその間に欠勤のないものという定義があったが、いずれも分析対象とし、感度分析を行った

分析には相関係数を使用し、相関係数、標準化回帰係数、オッズ比をすべて相関係数に変換した

結果

プレゼンティーイズムとの相関のメタ分析

母相関が.20以上のものを取り上げる

プレゼンティーイズムを促進:

  • アブセンティーイズム (.35)

  • 生産性の低下 (.21)

  • 欠勤の強い制約 (.39)

  • 仕事の負荷 (.28)

  • 人員不足 (.25)

  • ストレス (.25)

  • 情緒的消耗 (.36)

プレゼンティーイズムを抑制:

  • 健康状態 (-.31)

  • 楽観性 (-.22)

Meta-analytic SEM

プレゼンティーイズムへの影響を見たいので、図のモデルよりも、ダイレクトエフェクトのほうが意味がある

職場環境の安全性が脅かされている、仕事の要求が多いほどプレゼンティーイズムに直接結びつく

二重プロセスモデルが示されたと記載があるが、単相関、ダイレクトエフェクト、間接効果の影響の向きが複雑でわからなくなってしまっている

  • 単相関と直接効果によって、職場のconstraint (欠席、仕事への要求、人員不足、安全性、情緒的消耗間) などによるアブセンティーイズムが生じているととらえたほうがわかりよい

  • つまり、最近の動きで目的としているプレゼンティーイズムではなく、よくみなが話している「やすみたいけど(やめたいけど)この状況じゃ無理だよね」という現象・プレゼンティーイズムを記述しているといえる

文献

  1. Aronsson, G., & Gustafsson, K. (2005). Sickness presenteeism: prevalence, attendance-pressure factors, and an outline of a model for research. Journal of occupational and environmental medicine, 47(9), 958-966.

  2. Caverley, N., Cunningham, J. B., & MacGregor, J. N. (2007). Sickness presenteeism, sickness absenteeism, and health following restructuring in a public service organization. Journal of management studies, 44(2), 304-319.

  3. Johns, G. (2010). Presenteeism in the workplace: A review and research agenda. Journal of organizational behavior, 31(4), 519-542.

  4. Miraglia, M., & Johns, G. (2016). Going to work ill: A meta-analysis of the correlates of presenteeism and a dual-path model. Journal of occupational health psychology, 21(3), 261.

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