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東京キタイチ事件

ポイント

 勤務中に労働災害を負った (会社の安全配慮義務違反はない) 生産加工員を、症状固定から約2か月後に障害補償給付請求書添付の診断書をもとに、身体の障害により製造部での業務を行えず、配置転換も拒んだため解雇としたのは無効だと判断されたもの
 復職可否は別途医師に問い合わせるべきであり、業務起因性の傷病に関する対応としてならし勤務があることを理由に解雇するのは相当ではないと判断された

概要

経過

 Aは製造部で生産加工員として成形されたタラコを重量など調整しパック詰めする作業に従事する雇用期間の定めのない正社員であった。仕事は、半解凍の冷たいタラコを、包丁を用いたり、整形済みのタラコを並べたざる (最大22kg程度) を2人1組で作業台に運ぶこともあった。
 平成26年3月に空のパックが載ったざるを5枚重ねて作業台に移動する際にバランスを崩して右手小指をざるにぶつけ、10月に右小指PIP関節屈曲拘縮などにより固定術を行うことになり、同月から休職して数度にわたり手術を受けた
 3年後の5月に仕事復帰の承諾が主治医から出ており復帰したいことを会社に報告した。
 同年10月に症状固定 (治癒) の診断を受けた。
 同年11月に復職会議がもたれ、担当医師作成の障害補償給付請求書添付の診断書を会社に提出したところ、「右小指の屈曲進展困難」「夜間痛、ぶつけると痛みあり、冷えると増悪、爪切り困難、右手での労作困難、包丁が使えない」とあり、所見には「骨脆弱性があり労作は推奨できない、回復見込みは現状からの改善はみこめない (つまり固定)」とあった。
 それを受け、Aは清掃部への配置転換は認められないこと、来年春には復帰するので様子を見てほしいと伝えた。
 同月、身体障碍により業務に耐えられず、配置転換も不可能との理由で解雇予告通知がなされた。

判決

  • 主治医が復職可能と判断しているにもかかわらず、傷害補償給付の支給を申請するための診断書に基づいて就労可否を判断すべきではなく、問い合わせるべき

  • しばらく軽作業をすれば同部署に復職可能と考えられる

  • さらに業務に起因する障害につきならし勤務が必要との理由に解雇するのは相当ではない

  • 配置転換を拒否すれば解雇の可能性があることをしらさず解雇するのは回避努力を尽くしていない

  • 労災給付を受けた障害につき症状固定の約1か月に上記の経緯で解雇の意思表示がなされたのは解雇権の乱用である

出典

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