見出し画像

The Strengths and Abilities of Autistic People in the Workplace

Abstruct

自閉スペクトラム症の診断を受けた66名を対象に、雇用に関連する強みの経験についてアンケートを行った。主たる強みは、想像力、集中、記憶力などの認知機能、効率化、誠実さなどの人間性、自閉スペクトラム症固有の観点を提供できる点だと感じていた。

Introduction

  • UKの統計によれば、自閉スペクトラム症と診断された成人 (以下、ASDと略記) の22%は賃金の対価に労働を提供しているが、他は労働に従事していない

  • 障害のない住民の雇用率80%、障碍者の雇用率54%と比較して極めて低い

  • また、労働していないASDの77%は仕事に従事したいと希望しており支援が必須である

  • ASDについては、社会的コミュニケーション、精神的問題、特に仕事においては同僚や上司とのコミュニケーションの問題、実行機能の問題、職業関連のストレスに重点が置かれてきた

  • しかしニューロダイバーシティーインクルージョンの観点から、例えばASD、ADHD、dyslexiaのような特徴を有していても、個人の特徴とその置かれる文脈により障害が生ずるという観点からとらえることができる

  • ASDの強みに焦点を当てた初期の研究はサヴァン症候群のものだがこれはあまりに特異的な事例すぎる

  • ASDの特徴として、local processing abilityの高さを指摘したものがあり、これは全体像をとらえたうえでの処理よりも細部の処理に能力を発揮する傾向を示しているかもしれない (Mottron et al., 2006)

  • 社会的公正や問題解決の独創性、誠実性において信用できるとの指摘がある (Attwood et al., 2005)

  • 過集中、細部への注意、記憶力の良さ、創造性、誠実さ、動物やほかのASDへの共感に優れているとの指摘がある (Russell et al., 2019) 

  • こうした特性から、例えばMicrosoftやgoogleのようなIT産業では雇用に利益を見出している

したがって、偏らないASD当事者による自らの強みに関する研究も行う必要がある (雇用者から見たあるいは客観的な特徴は、上述のように示されているため)


Method

Participants

  • 18歳以上のASD

  • ここには診断を受けていないが自らASDだと判断したものも含まれる、なぜなら幼少期に診断を受けなかったものは、高額な医療費、待ち時間など様々な理由から成人後に診断を受けることが難しいためである

  • UCLの著者ウェブサイトにて参加者を募集

Sample demographics

  • 多くが臨床的に診断を受けたもの (77.3%)

  • 多くが女性 (66.7%)

  • 19-67歳、平均年齢40歳

  • UK or USA

Measures

  • 年齢、性別、診断、

  • 現在の職場で自分の強みだと感じること (ほかの同僚と比較して優れていると感じること)

  • thematic analysis


Results

Cognitive Advantage

  • 細部に注意を向けられる

  • ロジカル・システマティックに考えられる

  • パターンの認識に優れている

  • 注意集中を続けられる

  • 記憶力

  • 想像力 (常識外の発想ができる)

Efficiency

  • 仕事の効率化

  • 生産性の向上

  • 独立して仕事ができる

Personal Qualities

  • 強い社会正義と公平性

  • ひたむきさ

  • 社会的関心が低いために同僚のプレッシャーをやわらげられる

  • 社会的弱者に共感できる

A unique perspective

  • 興味関心を追求できる

  • ほかの職員が嫌がる仕事を楽しめる

  • 個人的な経験をうまく伝えられる

興味深い点

近年の研究では自閉スペクトラム症と診断される人たちは共感できないどころか、包括的にはより強い共感性を持っていることが示されている (Fletcher-Watson & Bird, 2020)

References

  1. Atwood, T. (2015). The Complete Guide to Asperger’s Syndrome. London: Jessica Kingsley Publishers.

  2. Cope, R. & Remington, A (2022). The strengths and abilities of autistic people in the workplace. Autism In Adulthood, 4, 22-31. (this note)

  3. Fletcher-Watson, S. & Bird, G. (2020). Autism and empathy: What are the real links? Autism, 24, 3–6. (ASDがより包括的な共感性を有しているという論文)

  4. Mottron, L., Dawson, M., Soulieres, I., Hubert, B., Burack, J. (2006).  Enhanced perceptual functioning in autism: An update, and eight principles of autistic perception. Journal of Autism and Devlopmental Disorder, 36, 27–43.

  5. Russell, G., Kapp, S. K., Elliott, D., Elphick, C., Gwernan-Jones, R., Owens, C. (2019). Mapping the autistic advantage from the accounts of adults diagnosed with autism: a qualitative study. Autism Adulthood, 1, 124-133.

感想

ほぼAQの内容
ただこれを優れているととらえるかどうかは職場によるので本研究を直ちに実践に結び付けるのは難しい (例えば、効率的な発想を持っていますと言われても、そうだと判断するのは職場だから。パターンレコグニションも同じ)
このあたりに難しさがあるように見える
例えば、昼頃には何となく仕事をしていて退勤前にバタバタと仕事を始めて意味のない残業代をもらう人がたくさんいるが、業務を効率化しようと言い出したとたんに共感性がないなどと言われるだろうことは目に見えている

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?