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神奈川県都市交通事件

概要

 タクシー乗務員として雇用された労働者が、使用者に過失のない乗務中の追突事故により頸椎捻挫等の障害を負い、休職中に労働者災害補償保険法に基づく休業補償給付  (いわゆる労災保険) を受けていた。労働基準監督署長により症状固定日以降の休業補償給付の不支給決定がなされたが、主治医からはタクシー乗務が可能かわからず試乗等を続けたうえで決定すべきとする旨の診断を受け、試乗期間を経てタクシー乗務員として復職した。
 休業補償給付の不支給決定がなされてから復職するまでの期間において、使用者は労働者に休業補償を行わなくてもよい (休業補償義務を免れる) とされたものである。

注意点

 タクシー乗務員として雇用されていることから、労働者が当該雇用契約における労務の提供が不可能な状態において、使用者は労働者を別職種 (例えば事務職) に就労させる義務はないとするものである。したがって、雇用契約に職種が特定されていない場合は、別職種での雇用を検討する必要が生じると考えられる。
 また、本件は使用者に過失のない乗務中の事故であったが、使用者の責に帰すべき事由によって労務の適用がなされない場合には、賃金請求権が認められるため労災保険給付の支給要件を欠くことになるから、使用者は労働基準法第84条による補償義務を負うこととなる。



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