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フォーカスシステムズ事件

概要

 SEとして入社した労働者は、入社3年後の7月に別プロジェクトに配置転換され、新たな知識・技術習得に多大な労力を必要としたが、顧客から「他の社員 (協力会社の社員) のほうが仕事が早い」と苦情がおこる、予定より作業時間を要するなどから、残業時間が増加し、時間外労働時間数は105時間、112時間となった。
 同年9月ごろよりプロジェクト内唯一の正社員でありながら難易度の高い業務から外され、9月15日朝に自宅を出た後無断欠勤をして河川敷のベンチで過度な飲酒を行い、翌16んち午前0時に急性心不全疑いで死亡した。
 労働基準監督署長により業務災害と認定され、労働者の両親には遺族補償年金等が支給された。

 裁判により、過度の飲酒はうつ病および解離性遁走という精神障害により正常な認識、行為選択能力を著しく阻害された病的心理の下でなされたために死亡と業務の間に相当の因果関係があるとされ、安全配慮義務違反として会社から遺族への損害賠償の支払いを命じられた。
 ただし、労働者自身がブログやゲームに時間を費やすなどの生活態度も睡眠不足に影響したこと、希望すれば産業医面談を受けられたが申し出なかったこと等を考慮し、3割の過失相殺が認められた
 また、遺族が遺族年金の支給を受け又は支給を受けることが確定したときは、逸失利益等の消極的損害の元本との間で損益相殺的な調整を行うべきものと解するのが相当である。そして、遺族補償年金が制度の予定するところを異なってその支給が著しく地帯するなど特段の事情がない限り、調整は原則として元本から控除すべきとされた

注意点

  • 使用者への損害賠償請求では、遺族年金など同質性が認められる利益は控除される

  • 労働者の精神障害発症の背景に長時間労働等過度の心理的負荷事項が認められる場合、生活習慣の問題や産業医制度の活用の欠如など労働者の責に帰す点が認められたとしても安全配慮義務違反と判断されることから、長時間労働及び過度の心理的負荷を生じさせない配慮は必須である

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