見出し画像

【教師バーンアウトへの介入効果のメタ分析】The Effectiveness of Interventions Aimed at ReducingTeacher Burnout: a Meta-Analysis

概要

教師の燃え尽き症候群を減らすことを目的とした介入の有効性を調査するためのメタ分析を実施した。オンラインと参考文献リストを検索し、513の研究が得られ、最終的には23の対照研究 (19 件の雑誌論文と 4 件の未発表論文) を対象とした。2/3以上の研究の質は最適で、バイアスリスクは介入の効果と関連しなかった。
全体的な効果は小さかったが、統計的に有意であった (d = 0.18、SE = 0.05、Z = 3.26、p < 0.001、k = 23)。
燃え尽き症候群の各要素について個別に分析した結果、感情的疲労と個人的な達成感については同様の介入効果が見られたが、離人症にはほぼ効果がなかった (d = 0.03、SE = 0.06、Z = 0.53、p > 0.05、k = 11)。
モデレータ分析では、マインドフルネスによる介入が疲労感と個人的な達成感に大きな影響を与えることが示唆された。
小中学校教師への介入では、効果量が平均効果を下回った。
以前の調査結果と同様に、1か月未満の介入の効果は最も低かった。

問題と目的

  • 教師のバーンアウトが深刻な結果につながると考えられている (すなわちメンタルヘルスの問題の前にバーンアウトがあるとするモデルを採用している。一つの経路としては正しいだろうがすべてではない)

  • バーンアウトは、仕事満足度の低下、アブセンティーイズム (Wolf et al., 2015)、不安・抑うつ、高血圧または心臓血管障害とも関連している

  • バーンアウトは、授業の質の低下、生徒の不満や問題高度も関連する  (Wolf et al., 2015)

  • (クロスセクショナルの研究なら、バーンアウトと生徒の不満・問題行動の関連は明らかなので、因果関係で先行要因がバーンアウトなのかは確認する必要あり)

  • 先行研究ではバーンアウトへの介入効果は極めて限定されている

  • また先行研究では教師はほかの職種と比較して特異的なストレッサーがあるため (McCarthy et al. 2016)、教師を対象にするバーンアウト介入研究の量的な効果をメタ分析で研究する

教師のバーンアウトの特異性

  • バーンアウトは長期間のストレス暴露の結果と考えられている

  • 教師のストレッサーは、教室マネージメント、情動的環境、生徒教師関係、生徒・保護者・同僚との葛藤である (Unterbrink et al., 2012)

  • ほかに、教育に伴う要求と、資源 (サポート、指導教材) のアンバランスによるとの理論を提唱する者もいる (McCarthy et al., 2016)

  • 自己報告によれば、教師のストレッサーは仕事の負荷、同僚と強調する時間の欠如、上司からのサポートの欠如、難しい生徒のマネージメントとの報告がある (Roser et al., 2013)

  • アフリカでは、HIV/AIDSのコーディネーションも含まれる

バーンアウトの緩和を目的とするアプローチ

①CBT

伝統的にコーピングスキルを高める手法が用いられる
ストレスマネージメントスキルの獲得、サポートを促すプログラムが行われている

②Mindfulness and Relaxation

マインドフルネスとリラクゼーションによるストレスリダクションはバーンアウトを防ぐあるいは緩和するとの報告がみられる

③社会・感情スキル

  • 社会・感情スキルによって生徒教師関係が改善しバーンアウトを防げると考えられている

  • 社会・感情スキルは、生徒との支持的な関係、挑戦的な生徒の行動の管理、モデルの提供、効果的な社会・感情学習のための直接的な指示の提供に分けられる (Jennings et al. 2013)

  • 社会・感情スキルへの介入により、個人的達成感の改善が見られたとする報告がある

④心理教育アプローチ

ストレスとバーンアウトを防ぐための教育が含まれる

⑤ソーシャルサポート

グループワークによって、感情的消耗、個人的達成、離人症に改善が認められたと報告されている (Unterbrink et al., 2012; Cooley & Yvanoff, 1966)

⑥プロフェッショナルなキャリア発達

  • 教師が教育的授業を通じて訓練を受け、感情認識とコミュニケーション、自己調整、社会問題解決、人間関係管理スキルの発達を促進するための指導を生徒に提供できる

  • 効果の結論は分かれている

その他の潜在的なモデレータ

①教育レベル

これは、小学生、中学生、高校などの教育対象者をさしている

②タイムラグ

介入後からアセスメントまでの時間を指している

③介入期間

1か月未満の介入は効果がないとする報告もある

方法

検索対象

教師のバーンアウトに関する、介入前後評価があり、対照群があり、ベースラインのバーンアウトレベルが対照群と介入群で差がなく、効果量を算出するために必要な統計量が算出されているもの

分析

  • 分析は、Comprehensive Meta-Analysis version2を使用し、ランダム効果モデルを用いた

  • multivariate meta-analysisはComprehensive Meta-Analysis version2のアルゴリズムに組み込まれている

結果

対象文献一覧

燃え尽き症候群に対する標準化効果量

  • バーンアウトへの介入は総合するとほぼ効果がない

  • 全般的なバーンアウトへの効果量は、d=0.18, 95%CI=0.07-0.29、p=0.001

  • 感情的消耗への効果量は、d=0.18、95%CI=0.06-0.30、p=0.003

  • 個人的達成への効果量は、d=0.14、95%CI=0.03-0.25、p=0.014

  • 離人症への効果量は、d=0.03、95%CI=-0.08-0.14、p=0.599

モデレータとしての介入の種類

  • 離人症にはいずれの介入も効果的ではない

  • 情緒的消耗には、認知行動療法及びMidfuness/meditationが効果的である

  • 個人的目標には、Mindfulness/meditation及びソーシャルサポートを得るための介入が有効である

モデレータとしての教育水準

  • 区分しない介入が情緒的消耗・個人的達成感に最も効果がある

  • しかし95%CIが大きく重複することからいずれに効果がみられるか判断を保留する

モデレータとしてのタイムラグ

  • 離人症に効果がないのは先に述べた通り

  • 情緒的消耗、個人的達成は、介入から時間を経るごとに強くなる

モデレータとしての介入期間

  • 1-3か月に及ぶ介入が効果的であり、研究の質もホモジェナスだった

パブリケーションバイアス

パブリケーションバイアスなし

バイアスリスク評価

文献

  1. Cooley, E., & Yovanoff, P. (1996). Supporting professionals-at-risk: Evaluating interventions to reduce burnout and improve retention of special educators. Exceptional children, 62(4), 336-355.

  2. Iancu, A. E., Rusu, A., Măroiu, C., Păcurar, R., & Maricuțoiu, L. P. (2018). The effectiveness of interventions aimed at reducing teacher burnout: A meta-analysis. Educational psychology review, 30, 373-396.

  3. Jennings, P. A., Frank, J. L., Snowberg, K. E., Coccia, M. A., & Greenberg, M. T. (2013). Improving classroom learning environments by Cultivating Awareness and Resilience in Education (CARE): results of a randomized controlled trial. School Psychology Quarterly, 28(4), 374.

  4. McCarthy, C. J., Lambert, R. G., Lineback, S., Fitchett, P., & Baddouh, P. G. (2016). Assessing teacher appraisals and stress in the classroom: review of the classroom appraisal of resources and demands. Educational Psychology Review, 28, 577–603.

  5. Roeser, R. W., Schonert-Reichl, K. A., Jha, A., Cullen, M., Wallace, L., Wilensky, R., ... & Harrison, J. (2013). Mindfulness training and reductions in teacher stress and burnout: Results from two randomized, waitlist-control field trials. Journal of educational psychology, 105(3), 787.

  6. Unterbrink, T., Pfeifer, R., Krippeit, L., Zimmermann, L., Rose, U., Joos, A., ... & Bauer, J. (2012). Burnout and effort–reward imbalance improvement for teachers by a manual-based group program. International Archives of Occupational and Environmental Health, 85, 667–674.

  7. Wolf, S., Torrente, C., Frisoli, P., Weisenhorn, N., Shivshanker, A., Annan, J., & Aber, J. L. (2015). Preliminary impacts of the “Learning to Read in a Healing Classroom” intervention on teacher well-being in the Democratic Republic of the Congo. Teaching and Teacher Education, 52, 24-36.

所感

認知行動療法かソーシャルサポートが小さな効果
他は効果なし
1-3か月間の介入が必要

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?