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ハカセードライバー ガン太の日記  3


『水道橋博士のメルマ旬報』過去の傑作選シリーズ 

 芸人・水道橋博士が編集長を務める、たぶん日本最大のメールマガジン『水道橋博士のメルマ旬報』。
 過去の傑作選企画として、かつて水道橋博士の運転手も務め、現在、気鋭の芸人として活躍中のマッハスピード豪速球ガン太さんによる連載『ハカセードライバー』から、僕が大好きな原稿を無料公開でお届けします。是非、お手すきの時に一読ください。(編集担当/原カントくん)


 という記事を発掘してきた。読んでみたら爆笑した。
 いろんな文章家が『メルマ旬報』に集結しているが、ガン太の文体ほど誰にも似ていないものはない。日頃、文章に接していないのがよくわかる。
 見た目がスッキリしているし賢そうなので油断するが、基本的に芸能偏差値も低い。というより、ほとんど常識がない。
 しかし、文章はとにかくポップで面白いのだ。
 今回は、ボクの同じ日の日記を併記して2重に楽しめる形式にしてみた。

このシリーズの3作目。

*****

■2013年11月25日

本日NHK『あさいち』出演の為、博士の家に6時50分に到着するよう5時に起床。

私事ではあるのですが前日も営業の為5時起きなど朝の早い日が続いていてメッチャクチャ眠い・・がしかし、ツイッターを見てみるとすでに5時に博士が起床ツイートをしていた・・眠がっている場合じゃない、自分も頑張ろうと思い自転車で出発。

まあ今日は10時まで『あさいち』(NHKの番組)があって、次の仕事が19時からだから時間がたっぷり空くスケジュールだ、その間に仮眠などをすれば問題は無いか・・などと今日の空き時間の使い方の算段を立てながら自転車をこぐと博士の家へ到着。

「おはようございます!」

「おへす、今日さ「あさいち」終わったらマッサージ行くから。」と博士。

「はい、麻布のマッサージですね。」

マッサージなら1時間で終わるから、時間はたっぷりある。
全然休めるぞ・・

「うん、そんでその後、低山を登りに行こう!」

低山?・・

(レギュラーのNHKラジオ『すっぴん』で次のゲストが低山登山家の方の為、低山に登っておかなければという事らしい。)

※ここで言う低山とは、50メートル未満くらいの山

博士は、『すっぴん』で毎週用意されるゲストが何の部類の方であろうとその事、その人についてしっかり下調べしたり作品を見たり読んだりしてから本番に臨まないと気が済みません、作家の方や芸能人の方ならその方の作品を見たり読み漁ると言うアプローチで臨めるのですが、たまにそう言ったアプローチが効かない変わった専門家の方がゲストの時が大変です。例えばチーズの大会世界一の方がゲストの時は本だけを読んでも語れないという事で一週間チーズのみ食べ続けるという体験のアプローチで臨んだりします。

他にもパンケーキ専門家の方がゲストの時はパンケーキを一週間食べつづけた事もあります。

低山登山家が来るのなら低山に登る・・それは博士にとって当たり前の事なのですがしかし、今日は勘弁して欲しい・・休む時間が無くなってします。

しかし、ボクはハカセードライバー!博士が行くと言ったら行くしかないのだ。

まあ言っても低山だ、一山登るのに5分も掛からない一山登って帰ってもまだ休む時間はあるだろう。

「低山ですか!イイですね!!行きましょう!!!」

NHKに向かう途中「眠い、くない!眠くない!」「疲れた・・てない!疲れてない!」を連呼する博士(ボクの前では「疲れた」「眠い」の言葉を発さないルールが博士の中である。)
どうやら相当お疲れのようだ・・この調子なら低山登山の話はまた後日と、流れるかもしれないな・・。

NHKに到着Nマネージャーと共に楽屋入りをする。
楽屋入りをするや否や「今日低山に行くんだ!」と博士がNマネージャーに伝える。

どうやら話が流れることはないようだ・・。

「そうなんですか!何個の山行くんですか?」とNマネ。

すると少し考えてから博士「んー、三山かな!」

三山・・?しまったー!!何て言う事だ・・勝手に一山だと思いこんでいたのだ!だって山だし・・山登りって普通一日一山でしょう・・何となく一日一山だと思い込むじゃないですか・・山って響きが良く無い・・一日三山登るって会話が普通無い物だから・・でも考えてみれば一山登るのに5〜10分、一日に何山も行けるのが低山登山の醍醐味でもあるのだ・・。

移動時間も含めて考えるとボクの空き時間で体力回復作戦は大分厳しいものになってきた・・。

Nマネージャーと相談をして、麻布からどの山を辿っていけば効率良く家に帰りながら低山に登っていけるか低山ガイドを読みながら考える。

『あさいち』の生放送中も考える・・考えているうちにある作戦を思いついた!

「そうだ!何となく二山にしてしまおう・・。」

"何となく二山作戦"を思いついた!
"何となく二山作戦"とは、博士が神経を使う生放送を終えた後の「どの山行くか決まった?」と言う質問に対し何となく二山しか答えずに二山しか行かない事にしてしまおうと言う作戦である!

だって博士の雰囲気的に多分二山でも三山でもどっちでもいい感じがあったし、神経を使う生放送終了後である、そんな細かい事はどうでも良くなっているはずだ!何となくこの作戦はいける気がする!

生放送終了後・・博士が「山決まった!?」と聞いて来たので

「はい、池田山と箱根山に決めましたどうでしょうか?・・」と当たり前の様に2つだけ答えました(この作戦のコツは当たり前の様に言う事である。)

「うん、そこにしよう。」

YES!!作戦大成功だ!!これで、30分ほど空き時間が増える!!


しかし!そう思うか否や、この安堵した気持ちを引き裂くように大きい声が室内にこだました。

「ええ!?千駄ヶ谷富士には行かないんですか!?」

Nマネだった・・しまった、敵は近くに居た!Nマネとは三山の認識で話していた・・。

「ん?ああ、そこも行こう!」

こうしてボクの"何となく二山作戦"は失敗に終わった・・。

予定通りマッサージ後、低山に向かう。

最初の低山は『池田山』紅葉や東京とは思えない孤立した自然が凄く綺麗だ!綺麗すぎてテンションが上がる

「写真をバンバン撮れ!」と博士に言われるがまま、景色をバンバン撮りながら登山をしていると途中携帯の天気予報を見て「今日は天気大荒れになるらしい」と博士がおっしゃった。

そこでまた閃光のように作戦を思いついた!

その作戦とは"天気が荒れるの恐いから山2つにしませんか作戦"だ!

"天気が荒れるの恐いから山2つにしませんか作戦"とは「天気が荒れるの恐いから山2つにしませんか?」と良い感じで博士に提案する作戦だ。

「天気荒れるんですねー・・あ、博士・・天気が荒れるの恐いから山2つにしませんか?」

「・・うん、そうだねそうしよう。」

YES!作戦大成功だ!これでボクの休息は約束される!こうなったらさっさと次なる目的地へ!

次の山は『千駄ヶ谷富士』ここは『鳩森神社』の中にある小っちゃい山で頂上がすぐ見える。

博士が登り下からのアングルやその逆や色々の写真を撮りまくる!一個のアングルを撮るたびにお互い近づき写真を確認して「いいね!!」だの何だのやっている・・傍から見たら、何の二人組なのだろう?と不思議なはずだ。

その時、風で落ち葉が"ブワッ"と落ちてきた・・すると「今だ!!撮ってくれとってくれ!!!」と博士が異常に興奮した!

どうやら落ち葉が舞う中に自分がいる構図の写真が撮りたかったらしいのだが、ボクのカメラ機動が遅く上手く撮れなかった・・博士が凄く残念そうにしている・・。

この辺から博士「すごい!きれいだ!!」とか「たのしいねー!」とか、変な方向にいきなり走り出すなどの子供っぽい言動をし始める・・あなたの大先輩と二人っきりの状況で急に子供の様になられたら・・少し想像してください?戸惑いますよね・・ボクも一緒です・・結構どうしていいか分かりません。

しばらく戸惑っていると、この行動は博士のご次男『あきら君』(4歳)の言動は無限で面白いから自ら『あきら君』になるという遊びという事でした。

理由を聞いても、どうしていいか分からない事には変わりありません・・子供として接っしてボケに乗るべきか、ボケとしてとらえてツッコむべきか。


結局「出たなーあきらー」とか小さい声で言うのが精いっぱいだ・・。

そんなこんなで『千駄ヶ谷富士』登山は終了した・・二山の登山が終了し家に帰れる!時間を見るとまだ家に帰り少し休める時間だ!

さっさと車へ戻ろう!と歩いていると、
途中道にある区が設置している地図を指差し博士が「お、おおお!?こっこれは!?」と何やら興奮しています?

近づき地図の指をさしているところを見てみるとそこには"オーマン国大使館"という記載が・・。

「お、オーマン国大使館だって!ガン太!オーマン国!これを言うならオマーン国だよな!?これ!」とテンションはブチ上げ状態に!

「本当だ間違っていますね。」と反応すると

「違う!!これは間違ってるんじゃない!俺には分かる!これはわざとやっているぞ!区の役員が悪ノリで作ったに違いない!!」

と熱弁です・・んな馬鹿な、と一瞬思いましたが、確かに"オマーン"を"オーマン"と間違えている事に気が付かないだろうか?何だか男の役員が2人位で任せられた地図造りの合間に生まれたワルノリを想像した方がしっくりくる・・わざとかも知れない・・。

車に戻っても「オーマンコク、オーマンコク」ずっと言っている博士。

「オーマンコクだよ!おかしいよ、お前も言いたくなるだろう?オーマンコク!」

「は、はい・・オーマンコク大使館。」

「ははは!そうだろう!言いたいだろう!そうだ、ママにもこのことを伝えよう!」

 何故か奥様に電話をかけ始める博士!?

「もしもし、ママ?今ね渋谷区の地図にね、オマーン国じゃなくてオーマン国ってのがあって、分かる?おーマンコく大使館だよ?」

 かすかに受話器から漏れ聞こえてくる奥様の声・・

「何!?それだけ?」"ガチャ"

「・・あれ?切られちゃった。」

速攻切られてしまったようだ・・そりゃそうだわざわざ電話で伝えることでは無い「何色のパンツ穿いているの?」のイタズラ電話みたいだ・・。

まあ何はともあれ、博士の家に向かおうと思っていると、博士が「よし、次は戸山公園の箱根山だな!」と言った・・。

!?・・何という事でしょう"オーマン国"事件で忘れてしまったのか?さっき「天気が荒れるの恐いから山2つにしませんか?」と話し合った事が無かった事になっています・・。

「行きます・・?」

「うん、何で?行くよ!」

「・・はい、向かいます。」

またしてもボクの作戦は失敗で終わった!!

『戸山公園』に到着。

快調に歩きはじめる博士・・ボクはすごく疲れてきた・・何故博士はこんなにも元気なのだ・・『戸山公園』の中に『箱根山』はあるという事だったので公園内を歩いていればすぐに見つかるだろうと思い何となく歩いてみる。

しばらく歩いた所で一向に山が見えてこないので公園全体の地図を見てみると、実はこの『戸山公園』恐ろしいほど広いことが判明しました!今いる所は入り口でかなり遠い所に『箱根山』はあるようだ。

・・ああ、遠いし行き方も良く分からない・・しんどい・・。

20分くらい歩くと、車を停めた駐車場の方へ戻って来てしまった?

ヤバい・・全然たどり着かない交番があったので道を尋ねてみる。

「箱根山はどう行けばいいですか?」

「あー歩きだと結構遠いですよ。」

『戸山公園』の『箱根山』なのに『戸山公園』近くの交番で聞いたら「歩きでは遠い」と言われた!意味が分からない!最悪だ!

と思ったが・・またボクの脳裏に作戦を閃いた!

・・この20分歩いた時点でまだまだ遠い事実を知ったのだ・・博士も諦めようと言うかもしれない!

よし!"キツイッすね、どうします?顔作戦"だ!

"キツイッすね、どうします?顔作戦"とは表情だけで行きたいのは山々だけども、

もうキツイッすね・・どうします?と言う顔をするという作戦である!

交番から出たところで博士に"キツイッすね?どうします?"と言う表情を向ける。

・・こっちを見てくれない・・「フー」と息を吐いて注意をこっちに向けてみる。

(この作戦のコツは決して声は発さない事だ。表情や雰囲気だけで。)

こっちを見て博士が一言。

「良し、行こう!」

作戦は失敗に終わった・・再び歩き始める。

そしてスタートから小一時間、ようやく箱根山に到着・・まさか低山登山に遭難と言う概念が存在するとは・・低山遭難を経験した・・。

登り始めれば早いのが低山登山、あっという間に登頂を果たし下山。

下山途中また突風が吹いて葉っぱがバラバラと落ちてきた・・するとそれに反応をして博士がその舞う葉っぱ目がけて走って行きました!

 そして両手を広げて

「うがあーーーーーーーー!!」

「あああああうあああううあああーーーーーーー!!!」

突然叫びだしました!?

何だ!?あきら君ごっこの続きか!?いや、それともどうも違うようだ・・・博士が表現しようとしている事がよくわからない、分からないが今回こそカメラに抑えなければ!!夢中でシャッターを切った!!

「がああああああぁぁぁぁ・・・どう?撮れた?」 

写真を確認しましたが、カメラの性能上、上手く落ち葉まで撮れていない。

「あーー惜しいなー完全に超能力だったのに、俺が手をあげたら木の葉が落ちてきたのに!」

?・・ボク的には舞い落ちる木の葉に博士が走ってったように見えたのだが、とにかく博士が木の葉を超能力で降らしている設定のようだ・・あのけたたましい叫び声は能力を使う時に出てしまう声だったようです。

「『AKIRA』の「鉄男」みたいだったでしょう!?」と博士。

何と!!これも一種のAKIRA君ゴッコだったようだ!!

そしてまた長い距離を歩き車に戻る。

車に着いた所で、思わず「ふうーー・・」と疲れため息が出てしまった。

「どうした?」と博士・・

「つ、疲れましたー。」と正直に言った。

「俺もっメッッッチャ、疲れたよー!!!もう三つ目の山何てチョー行きたくなかったもん!!」

何?博士も行きたく無かったのか!?

「え!?じゃあ何で二つで帰らなかったんですかー?」

「うん・・何かお前が嫌がってる気がしてさ・・三山行く事にしたんだ。」

・・何と言う事でしょうボクの浅ましい考えは全部見透かされていたのです!博士恐るべし・・やっぱり真面目にズルせずに生きなきゃいけないなーと博士の身を削りながら学ばせてもらった一日でした。 

因みに後日NHKラジオ【すっぴん】低山登山家の回の放送中、博士は何とこのボクのコラムを音読して下さいました!間接的にラジオ出演している事に感動を覚えていたのですが、途中「オーマン国」の件をイタズラ顔で読む博士にラジオブースは凍り付いていました。

博士は最も放送コードに厳しいとされるNHKのラジオで見事合法的に「マ〇コ」と言ってのけたのです。


ボクから見た当日の日記 ⬇


続いて、ガン太の日記。

~今回の『藝人春秋2上巻』に登場するボクの大先輩でもある『オフィス北野』の『三又又三』前作の『藝人春秋』にも三又さんは登場するのですが『水道橋博士』曰くそうそうたる芸能人が登場する中、一作目二作目共に三又さんの章が一番面白いと言う声がかなり多いようです。

ボクも博士の運転手として近くに居ることで数回お会いしまして何度か『ハカセー・ドライバー』で三又さんについて書かせて頂きました。

時系列が逆になりますがボク視点の三又さんお楽しみください。~

『メルマ旬報フェス』という伝説のイベントが2014年1月25日に行われた、メルマ旬報の当時の執筆者34名が集まり行われた、かなり大規模なフェスです。


■2014年1月17日


本日は『ニッポンダンディ』の為MXテレビに運転。


MXテレビに到着、博士と長澤さんを先に降りて頂いて駐車をしてから楽屋に向かう。

楽屋に着くとすでにテレビ制作会社KMAXの『小西さん』と『佐々部さん』がいらしていてメルマフェスの打合せをしていた。

 内容はメルマフェスの中継をWOWOWの動画サイトW流で放送すると言う話し合いらしい。

博士「まあ、色々事務所的にライブはいいけどテレビってなると出演NGの人もいたりするから。」

小西さん「そうだね、だからやっぱそれは撮ってみてダメなら流さないし、ただ記録用には全部一応撮っとけばいいじゃない。」

博士「そうだね。」

なるほど、ライブだから出るっていうスタンスの人もいたりするのか。

しかし、あれだけの豪華出演者だ動画にしたい気持ちもわかる・・。


小西「だから何か堅苦しい感じじゃなくって一人リポーターみたいのを立てて出番が終わった人を片端からインタビューしてけばいいと思うんだよね・・それこそガン太君でもいいし。」

ん?・・何か今ボクの名前が出た気がしたが・・。

小西「ガン太君『サンジャポ』のリポーターみたいなスーツ持ってる?」

やっぱり聞き間違いじゃないようだ・・

ボク「はい・・スーツ持っています。」

小西「じゃあ、リポーターよろしくね。」

ボク「はっ、はい!!!!!」

突然に大役が決まった!!"バタン"部屋を後にする小西さん、佐々部さん・・。

「ガン太、随分な大仕事が突然舞い込んできたな!!」と博士。

「はっ!!やっぱりそうですよね!!コレメッチャ大仕事ですよね!!」

んー、無知なボクがあの知識の塊のような方たちを何十人も相手にレポートをしなければいけないのか・・

すごい・・どうしよう・・どうしよう・・どうしよう・・どうしよう・・どうしよう・・どうしよう・・・どうしよう・・どうしよう・・・どうしよう・・どうしよう・・。


■2014年1月25日 メルマ旬報フェス

メルマ旬報フェス本番、今日の運転は休みを頂いてスズキ秘書に代わっていただき博士の入りの30分前に入る。

ボクはリポーターでまずは博士の入りに突撃しなければいけないからだ。

恵比寿ガーデンホールに到着、博士の車がやってくるのを待ちます。

今回ありがたいことに、ボクは大役をいくつか任せられています。

一つは出演者全員に5分ずつ割り振られている『私の愛した○○』というお題で5分プレゼン。

二つ目は、オープニングで開会デコピンクルミ割り。

(ボクはデコピンが強くクルミを割ることが出来るので薬玉割ならぬクルミ割りを任せられたのです。)

そして三つ目がW流で放送する舞台裏のリポートだ・・。

総出演者34名にインタビューをしなければいけない・・しかも一つの分野の知識の塊のような方々にだ・・不安で不安で早くも緊張していると、蛇のような"ヌボー"ッとした雰囲気の頬骨の発達した顔の見慣れた男が現れた。

 相方の坂巻だ・・。

「何?どうしたの?」

「手伝いに来た・・」"ヌボー"との事だった。(坂巻君もメルマ旬報読者でこのイベントに興味有るらしい。)

その後KMAXの小西さんと打ち合わせをしていると、博士が到着する時刻に・・。

博士の流星ワゴン事エルグランドが遠くに見えた!カメラがボクに向けられ、音声マイクも構えられる!だっダメだ!!すごい緊張する!

博士が車を降りる。

「はっ博士!!いよいよこの日が来ましたね!」

「なんでお前がいるんだよ!(笑)」

この後楽屋まで歩く博士を追っていくつか質問や会話をした気がするが、何も覚えていない・・ただ、カメラマン、音声さんのあきれたような顔を印象的に覚えている・・きっと酷い物だったのだろう、慣れている博士に対してもこれでは先が思いやられる。

いったん楽屋に戻ると、次々と出演者の方が楽屋入りをしてきた、同じメルマ旬報執筆者と言えども面識のない方がほとんどである。

誰が誰なのか確認を取るのも含めて慎重に挨拶をしていく。

「おはようございます。博士の運転手の『マッハスピード豪速球、ガン太』と申します。後でレポートをする事になるのでその時はよろしくお願いします。」

中にはボクの連載を「読んでますよ。」なんて言って下さる方もいて、嬉しい限りですが

基本はほとんどの方がボクの事なんて知らない、時間がかかるし面倒だが一人一人挨拶、この方法が一番良い!

3分の1ほど挨拶をしたところで、スタッフの方に呼び止められ別件の話を少しする事に・・すると遠くで見ていた相方の坂巻がすごい勢いで突然「ガン太の相方の坂巻です!!今日は手伝いを・・」と出演者の方にあいさつ回りをし始めた・・中腰ですごいスピードで猛烈にあいさつをする坂巻・・どのタイミングで挨拶スイッチが入ったのだろう・・。

何だかボクがまだご挨拶をしていない方にも近づいて行ったので慌てて坂巻君のもとへ行き耳元で。

「ごめん、皆まずガン太を認識していないからさ『ガン太の相方の』って言われても訳が分からないと思うわ・・」

「そうなの?・・わかった。」"ヌボー"

そんなこんな挨拶をしていると出演者がほぼ楽屋入りをした。

何人かに開始前の心境などをレポートしていくが、噛むは、目が泳ぐは、声が出ないは脂汗出ているはで相当ひどい。

何人かの執筆者の方にその緊張状態をイジられる・・しかしそのイジってくる方達は普段ほとんど人前に立って話などをしない方達・・ボクの方が普段こういう状態で戦っているはずなのに・・何の為に月10本以上の舞台に立っているんだろう・・

自分に幻滅をしそうになる・・・が!こんな早くに落ち込んでいる場合じゃない!!くよくよしたって始まる!のだ・・と言うかまだフェスは始まってもいないのだ!!

開演時間が近づいた頃に『リリーフランキー』が会場に到着をして舞台袖にいらっしゃった。

このメルマフェスで博士の一番苦労していたところは出演者の出欠確認や意識や認識の共有だった・・大体の事は今回構成に入っている構成作家『宇野コーヘー』やメルマ旬報編集担当『原カントくん』に任せておいたのだが、詰めの出演交渉、意見の共有などは編集長の博士がやらなければならなかったのです。

これが、このそうそうたる癖の強いメンバーでは一筋縄では行かなくって、これに博士は非常に苦労なさっていました。

中でも気を揉んでいたのが『リリーフランキー』本当に来るのか?問題です。リリーさんは自由な方で番組などでも、リリーさんがいるバージョンといないバージョン2パターン台本が用意されるという話があるほど、現場に来るのか来ないのか分からない方と芸能界では有名らしいのです。

今回も本番前日にリリーさんから「フェスの前説をやる」と連絡が来たらしいのですが本当に姿を現すまで半信半疑だったので舞台袖に現れるまで博士も気が抜けなかったのでしょう、非常にほっとしてました。

しかし、前説が『リリーフランキー』のフェス何て!メチャクチャ豪華です!リリーさんの前説からメルマ旬報フェスは始った。

まさかの前説の登場に会場がどよめくリリーフランキー史上、おそらく人生初で人生最後の前説は大いに盛り上がりオープニング映像が流れ、メイン司会の博士が登場。

次にサブ司会の西寺郷太さんが呼びこまれオープニングトーク。 

このトークの終わりでほかの出演者全員が呼びこまれるため舞台袖に全員が集まる。リラックスしている方、少しだけ緊張している方さまざまだが、ひときわ緊迫感のある表情の方が・・『三又又三さん』だ・・何故執筆者でない三又さんが・・?

しかも、何故か海パン一丁でウロウロしている・・。

聞くと三又さんは執筆者ではないのだがオープニングで全員呼びこまれるタイミングでシレーっと皆と同じタイミングで登場をし博士に「お前が何でいるんだよ!!!」とツッコミを入れられるという1ボケの為に呼び出されたというのだ!何と贅沢なボケでしょうか!

どこまでも贅沢で楽しいイベントだ!!ワクワクしている場合じゃない、今回のボクの見せ場の『開会クルミ割り』の時が迫ってきているのだ。何としてもここは成功させたい!博士が用意して下さったボクが唯一目立てる瞬間だからだ!

『開会クルミ割り』は、この後執筆者全員が登場し開幕のくす玉を割ろうとしているところに「ちょっと待った!!」とボクが割り込んでいき博士と「お前誰だよ!」

「誰だよってハカセー・ドライバー事ガン太ですよ!!」

「お前の事なんて誰も知らねえよ!」

「お客さんこいつ知ってる人手あげてください?」の流れで手をあげたお客さんの数次第で「全然知られてないじゃないか!」でも「結構知られてるじゃねえか!!」のどっちかのパターンで確実に笑いを取り

「くす玉割るなんて地味な事している場合じゃないですよ!」みたいなことを言い、

「じゃあ何するんだよ?」の問いに、

「デコピンでクルミを割って見せますよ!」

「クルミの方が地味じゃねえか!!」の下りで二つ目の笑いを取り

クルミのアップが後ろのモニターに映し出される中デコピンでクルミを割って『メルマ旬報フェス』がスタートという段取りだ。絶対スベるわけがない完璧なシナリオ、レポーターのヘナチョコは必ずここで取り返す!!

そして予定通り執筆者が呼びこまれる・・ズラーッと執筆者が並ぶ、ものすごい量だ

一人ずつ博士が軽く紹介をしていく。

最後まで紹介が終わった所で「あれ?」と思った、三又さんが執筆者に交じって出て来ていない・・ここで三又さんが見つかり博士の絡みがあるはずなのにな・・最後まで紹介が終わってしまった・・?と思っていると

カンペに「くす玉行きましょう」の文字が見えた!

おお!ついに来た!!と一気に緊張が増した!頭の中でやる事を思い返す。

博士が「くす玉を割ります」と言った瞬間「ちょっと待った!」と言えばいいんだな・・良し。

博士がカンペを読みます・・「さあ、そして今回ですね"くす"」

「ちょっと!まったーーーーーー!!!!!!!!」

んん!?一瞬訳が分からなくなった、ボクはまだ一言も発していないのだ!!この声は!?三又又三だ!?

一瞬あまりのタイミングの為自分が声を出したと錯覚を起こすほどだったが三又さんだった・・三又さんは台本も読まずに勝手に登場をこっちの方が盛り上がるとアレンジをしたらしく、このタイミングで「ちょっと待った」と叫んで登場したようだ・・。

一気に捲し立てる三又さん!

「ちょっと待ったちょっと待ったー!!俺はいつ紹介されるんだよ!こんな格好させられて!冗談じゃないよー!!」

「なんだよお前!?このイベントは執筆者しか出れないんだよ!」

「ふざけんじゃないよー!!」

"ワハハハー""ガハハハー"(お客さんの笑い声)

博士、三又さんの完璧な掛け合いは終わり博士が気を取り直して言う。

「さあ、ではくす玉を割りましょう。」

・・いや勘弁してくれ・・1つのライブに「ちょっと待った」の演出は一回までだろう・・しかも三又さんの後に無名のボクが「ちょっと待った」言っても盛り上がらないだろう・・。

「・・ボクもちょっと待ってください。」

結果か細い声になってしまった・・しつけえな!何だよこいつ?という雰囲気が会場に漂う。

「なんだお前は?」

時間が予想よりも押しているため早口の博士。

「ハカセー・ドライバーのマッハスピード豪速球ガン太ですよ!」

「で、何?」

時間が予想よりも押しているため「お前の事なんか誰も知らねえよ!」のくだりが無い・・「え?いや、こんなね!くす玉割るなんて地味なことしてる場合じゃないんですよ!!」

「おお、何をするの?」

「デコピンでクルミを割るんですよ!」

「デコピンでクルミが割れる?そんなにデコピン強いのか?」(「地味じゃないか!」のツッコミがカット。)

「え?あ、はい!強いですよー!!」

「三又で試してみて!!」

「え?三又さんに!?分かりました。」

「ちょっとー!クルミ割れるんでしょ!?勘弁してよー!」

"パチン"

「うわー痛ってーーー!おー!・・伝わらねえな~!」

キャパ1000人の会場では思った以上にデコピンは伝わらなかった。痛い思いをさせてしまいその上ややスベリ三又さん本当に申し訳ございません。

「おお!じゃあクルミ割ってください!」かなりの早口で進行が進みます。

ダッシュでクルミが運ばれてきました!

「さあ行きましょう!3,2,1」


"ペキャン"

大きな舞台の上で・・いつもより激しく割れた小さなクルミ・・

会場から微かに"オオ"と聞こえた。こうして完全にハズしたボクは冷や汗をかきながら楽屋に戻った!ダメだゲロを吐きそうだ・・。

しかし、くよくよしたって始まる!執筆者のトークコーナーが始まった為どんどんインタビューをしていかなければならない!たどたどしい質問を投げかける。

皆様本当に良い方だった・・こんなテンパリ君相手にしっかり質問に答えて下さった。ホリエモン事『堀江貴文さん』も世界的映画監督の『園子温さん』も、あの【電波少年】で鬼と恐れられていた『土屋敏男』ですら、ニコニコと話をして下さった。

フェスは進んでいくトークコーナーは2ブロック目に移った。

トークコーナーは全3ブロックに分けられていて2ブロック目はボクの出番があるブロックだ!!

ゼーッタイにここで取り返すぞ!!5分与えられた時間でボクが話すテーマは『私の愛したボケ側の水道橋博士』これは、自信がある!笑いを取ってやる!爪跡を残すのだ!!

高橋ヨシキさん、柴尾さんが映像を使ってトークを繰り広げていく。メッチャめちゃ面白い!土屋さんの『テレビからおっぱいが消えた日』の話、川野さんの『こんな人がオールナイトニッポンを?』の話もメッチャめちゃ面白い!会場も大盛り上がりだ。

まあいい、絶対ボクも盛り上げるぜ!

そんな2ブロックの途中で三又さんが乱入して来た・・予定に無いが5分程三又さんが大暴れする・・暴れ終わりボクの隣に座る三又さん・・小声で「お前何話すの?」との質問なので「ボケ側の博士の話です。」と言うと「面白いねーオッケーそれなら俺も入れる!」

と三又さんの助けまで頂けるようで鬼に金棒です!!

・・ふとカンペを見ると「メルマ旬報生配信まであと~分」というカウントがカンペで出されている事に気がつきました・・そうかこの次はメルマ旬報をオンタイムで配信する企画があるんだ・・と言う事は絶対第2ブロックは押せないんだな・・ボクの前の川野さんの出番になった時、時間はすでに残り8分だった。川野さんが5分で終われば、3分くらいは・・と思ったがカンペに「ガン太カット」の文字が刻まれた・・。

「おい・・ガン太カットって書いてあるぞ・・」

三又さんが心配そうに耳打ちをしてきました。

「そりゃ無いよなー、ぜえったい面白いのに。」

三又さんが自分の事の様に悲しんで下さっている・・。

「残念だなーガン太―!!」

ちなみに三又さん第2ブロック乱入時に費やした時間は5分くらいでした・・。

しかし、実はこれは最初から予想されていた事態でした

「悪いけど押していたらガン太カットする事になると思う、お前にしかカット何て言えないからさ!」と博士から伝えられていたのです。

それはそうです、遥々来て頂いて「あなたのトークカットです。」なんてほかの方に言えるわけがない、これは当然のボクにしかできない仕事だったのです。無事に時間通りメルマ旬報生メルマガ配信は終了し、第3ブロックも終わりボクのリポーターの仕事も終わった。

この後『サンボマスター』の山口さん、西寺郷太さん、岡村靖幸さんのスペシャルライブが繰り広げられた、舞台袖からお客さんになって見入ってしまった。

エンディングにはギリギリ駆けつけた、マキタスポーツさんと酒井若菜さんも登場で大いに盛り上がり6時間に及ぶ怒涛の『メルマ旬報フェス』は幕を閉じた。フェスが終わり最後の博士へのインタビューに向かう。失敗だらけで終わり悲壮感漂うボクの顔を見て博士、見透かしたように

「大変だったろうリポーター!でもみんな優しかったろう?」とおっしゃった。

皆様、本当に優しかった・・ありがとうございました。

ボクから見た当日の『メルマ旬報フェス』の日記 


マッハスピード豪速球は文庫版『藝人春秋2』にも登場します。
そして『藝人春秋3』でもガン太くんが大事な役割を果たします。
是非、読んで下さい。


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