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“世界観”で選ばれるホテルの育て方 《講演書き起こし》

今回の記事は、私が「宿屋大学」というホテル・観光人材育成のためのビジネススクールにて、6月12日に実施させていただいた講義の内容を、一部抜粋して書き起こし・公開させていただいたものとなります。講義全体のアーカイブ配信は有料にはなりますが、こちらからご覧いただけます。

こんにちは。ホテルプロデューサーの龍崎です。

私たちは3年ほど前から、比較検討して選ばれるのではなく、指名買いされるホテルを育てることに力を入れています。その影響もあってか、私たちのホテルづくりには諸々のこだわりがあって、どのホテルもその土地・その場所・その建物でないと成り立たないようなコンセプトや世界観を作り込んだユニーク(唯一無二という意味で)なものになっています。

このホテルづくりの思想やプロセスについて、今まで多くの方にご興味をお持ちいただいていたかとは思うのですがなかなか体系的にお話しする機会がありませんでしたので、今回のnoteでまとめさせていただこうと思っています。

全てを語ろうとすると本が一冊書けるくらい、ホテルづくりに関しては自分なりの考えやこだわりがあるので、今回は世界観で選ばれるホテルの育て方、つまりホテルのD2C的なマーケティング手法について、あくまで基本的な考え方や方法論のさわり部分だけを再現性ある形で簡潔にまとめているつもりなのですが、いざ書いてみると1万字を超える大作になってしまいました。少し長くなりますが、どうかお付き合いいただけますと幸いです。

また、このnoteは以前ホテル事業者向けの講演を書き起こしたものを、一部抜粋・編集・加筆したものです。幅広い年代の方に向けてビジネス的にお話ししたものですので、説明がデジタルネイティブ的じゃない部分もあるかと思いますがあらかじめご了承いただけますと幸いです。

想定読者
・ホテル事業者、不動産事業者の方
・空間づくりに興味のある方
・リアルビジネスのブランド醸成に興味のある方
・ミレニアル的な消費動向に興味のある方


なぜ世界観で選ばれるホテルが強いのか?

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私たちのホテルはどれも独自のコンセプトというか世界観(厳密には、IPという意味で使っています)を育みながらゲストを迎えています。

例えば、HOTEL SHE, OSAKAは港街の情緒と廃れたコンクリートジャングルが融合したアンダーグラウンドで艶っぽい空気感。

HOTEL SHE, KYOTOは殺伐としたロードサイドに蜃気楼のように現れる、捉えどころがなくて幻想的なオアシスをモチーフに。

HOTEL KUMOIは、北海道の山奥の秘境のような温泉街にある、煙にまかれるように謎めいた古旅館。

といったように、私たちのホテルはいずれも、価格の安さや設備・立地の良さで選んでもらうためのホテルではなく、この空間の醸し出す世界観というか物語性の中に没入したいと思ってくださる方に指名買いしていただくためのホテルづくりを行なっています。

こういうお話をすると、「ホテルという幅広い方々を受け入れるための空間に強い個性を持たせてしまったらかえってゲストが減ってしまうのではないか?」ですとか、「経済合理性が低いのではないか?」という疑問を寄せられることもあります。

ですが、私は、世界観で選んでもらえるブランドづくり(有り体に言えばD2Cマーケティング)はビジネス的な観点から見ても、機会損失ではなく機会獲得に繋がり、費用対効果も低いのではなくむしろ高い手法だと考えています。

いろいろな価値観があるとは思うのですが、私がこのD2C型ホテルマーケティングがこれからの時代にあっていると思っている理由は主に4つ。ミクロ的な視点と、マクロ的な視点をあわせて4つあります。

まず、ミクロ的な視点、つまりホテル業に特化した話から。1つは

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