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フジロック2021参加にあたって決めたMYセブンルール

フジロックに行ってきた。

2010年から10年連続で参加し、去年の開催中止を経て今年で11回目の参加だったわけだが、はっきり言って迷った。

そもそも自分自身、普段からコロナに対してどちらかと言えば神経質になっている方である。その上、直前の感染者の急増により一部の周りの人達からは不安だとの声も挙がった。こちらとしても、そのような思いを抱かせるのは当然本意ではない。しかも個人的にはフェス終了後、ワクチン接種の予定まであった。よって、このタイミングで感染する事は絶対にあってはならない。

コロナ禍以降、日本で音楽フェスによるクラスターが起きたとの報告はなされていないし、緊急事態時におけるフェスのあり方も少しずつでき上がってきた感があった。ただフジロックは会場全体が1つの大きなムラになるようなところがあり、規模が大きいうえに滞在時間が長い。もし1人でも感染が判明したら、それだけで済むとは考えにくい。これまで以上に社会から白い目で見られるのは明白であり、地元との信頼関係すら危うくなってしまう。感染者が出る事はフジロック側にとっても今後のフェス運営において決して無視できない大きなダメージとなるはずだ。

フェスが儲かるからやめられないと思っている人もいるようだが、この状況では莫大な利益など期待できず、赤字覚悟である。にも関わらずリスクを引き受け、なんとしても開催すると決めた運営の覚悟はとても重いものだ。

最終的に行く事に決めたのは、ただライブを観たいというだけの感情ではない。この地獄のような状況の中でも、フジロックをやると決めた、その有り様を確認しに行きたいという動機も大きかった。

常時のフジロックは、そこまでルールが多くはない。元来「自分の事は自分で」が基本姿勢のため参加者に委ねている部分も多く、実際にそれで何とかまわっていた。しかし今回ばかりはそうもいかない。まず、フェス側で提示していたルールには以下のようなものがある。

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フェス側でよく使用されていたのは上記の画像で、ルールが分かりやすくピクトグラムで一覧となったものである。ただ他にも「体調管理に気をつけて」と「公式アプリへの事前登録」といったものもあり、参加者は顔写真登録と問診票への回答が義務づけられた。

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また当初のガイドラインには掲載されていなかったが、参加者は事前に抗原検査を行う事も求められた。「チケットを買った希望者には抗原検査キットが無料で配送される」という話だったため義務ではないものと思っていたが、実際行ってみると会場入口にも抗原検査のコーナーがあり、事前に受けずに来場した人は必ず行うようアナウンスがあった。大規模フェスゆえ批判される事も多いが、こういった取り組みは大規模だからこそ、といった感もある。ちなみに僕の場合は出発前に行い、陰性を確認した上で新潟へ向かった。

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とまあこのように多くのルールが設けられたのだが、しっかり守っている参加者が大半である。もし何かあったらフジロックの、ひいては音楽フェス自体の未来にヒビが入る事を理解しているのだろう。

しかし案の定というか、メディアでは一部のルールを守らない参加者を取り上げる事が多かった。マスクをずらしていたり夜に飲酒していた参加者や、密に見える写真や映像を取り上げていた。確かにいない訳ではなかったが、会場での実感としてはあくまでごく一部である。まるでフジロック参加者全体がそうである、と誤解されるような伝わり方がなされたのはとても悔しい。

フェスが提示したルールは、参加する以上守るべきだ。日高さん(注:運営会社スマッシュの代表)がフジの客を信じて開催を決めた以上、それに応えられない人は会場にいるべきではない。

今回自分が参加するにあたっては、ガイドライン以上の警戒心を持って臨む事が必要だと考えた。それこそが、参加する事によって不安を与えてしまう周囲への精一杯の誠意でもある。そしてこのような状況でフェスを開催するという大変なハードルの中、矢面に立ってくれている日高さんをはじめとした運営への敬意、そして地元住民や地域医療への迷惑になる事態は避けたいという思いからである。

前置きが長くなったが、ここでは参加にあたって自分自身に課した7つのルールを、順に述べていきたい。参加者を代表する意見ではないにしても、最大級の警戒心を持って参加していた人もいるのだという事は知っていただければと思う。

①開催中は二重マスクで過ごす

普段は不織布マスク1枚で外出しているが、今回は自宅からの往復も含めて常に2枚マスク(不織布+布)で過ごすようにした。不織布だとどうしても頬にスキマができてしまうという問題を、二重にする事によってほぼ解消する事ができた。

②電車で隣に人がいる状態で飲食しない

本来であれば、移動中に飲食すると時間的な効率がよい。しかし今回、前後左右の座席に人がいる状態で食事をするのは避けるべきと考え、駅弁などを購入するのは控える事にした。

実際、行きの指定席では隣の女性が飲食していた。当然ノーマスクであり、飛沫を受ける事は免れない。折角購入した席ではあったが、感染リスクを考慮しその場を離れる事にした。自由席を求めてしばし彷徨ったものの、運良く空いていたため無事に座る事ができた。

③アルコールを見つけ次第、手を消毒

入場ゲートでは全員アルコール消毒が必須であったが、他にも会場では出店やトイレなど、あらゆる場所に消毒液が設置されていた。見つけ次第、即手を消毒した。

④個食の徹底

会場ではマスク着用が基本だったが、唯一外すタイミングが飲食時である。今年はキャパが半減した関係でスペースを広く使う事ができたため、周囲に人がいない場所を探して一人で食事をするよう心掛けた。

⑤1日1回は携帯の消毒

毎回趣向を凝らした企業ブースが出展されているフジロックだが、今回衝撃を受けたのは花王のブースである。そもそも企業イメージとしてフェスと親和性があるタイプではないから、これまで参加したフェスでブースを見かけた事はなかったと思う。しかし今回、花王は「手洗い」をテーマにしたブースを出展した。

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「30秒手洗い」を広めるべく、正しい手の洗い方を教えてくれる動画を見ながら、参加者は手を洗う。その間にスマートフォンを専用の機械に入れると、スマホも洗浄してくれるシステムだ。勿論利用は無料で、更にアンケートに答えた人には消毒液のプレゼントまである。

ここに1日1回は立ち寄り、丁寧な手洗いだけでなくスマホの洗浄も行うようにした。

⑥宿泊は一人で

例年は会場近くの宿で複数人で雑魚寝していて、今年も当初はそうするつもりだった。しかし狭い部屋でスペースを分け合うだけでなく、バス・トイレは他の部屋の利用者との共用である。ここでの感染リスクを考え、急遽バス・トイレ付きのシングルルームを予約した。高くつく上に会場からも遠くなるが、致し方ないと判断した。

⑦ホテルに帰ったら全荷物を消毒

リュックや荷物は1日の中で繰り返し触るだけでなく、様々な場所に置くものである。そこで自宅からも消臭スプレーを持ち込んでいたのだが、宿にも業務用の消臭スプレーが置かれていて、宿泊者が自由に使えるようになっていた。宿に帰る毎に、その日触った全ての荷物にスプレーをするように心がけた。


負担は増えてしまったが、感染してしまっては意味がない。自分のために、周りのために、フェスの未来のためにという思いで行動した。ハタから見れば、そこまでするぐらいなら行くのをやめた方がよいとか、そもそも無観客あるいは中止にすべきだったとか、色々と思うところはあるだろう。

この非常事態において地元の医療を逼迫させたり自分の周りに感染を広げたりするのは確かに避けるべきだ。特にフジロックのようなフェスは遊びに行っているだけと思われてしまっても仕方ないところがある。

しかし今回行ってみて、大規模フェスにどれだけ沢山の人が関わっているのか、そしてどれだけの金額を現地で消費しているのか、その大きさを改めて実感した。立場を変えれば、フジロックに関わる事こそが仕事であるという人達が本当に沢山いるのだ。

無観客、あるいは中止になるというのは現地での仕事や地元への支出の多くがなくなる事を意味する。グッズを買って支援すればいいと言ってもその支出など微々たるもので、有観客開催には遠く及ばない。これを痛感してしまった以上、無条件で中止すべきだなんて簡単には言えないと思った。

このコロナ禍において、全員が納得するような結論は不可能と言ってよい。立場が変われば、違う考えを持つ人もいる。この状況こそが、分断を招いてしまっている。であれば最大限の感染対策を取りながら、自らの考えに基づいて粛々と動いていくしかない。

そもそも自分だって、フジロックでなければここまではしていない。逆に言えば、ここまでしてでも行こうと思う魅力があるのがフジロックなのだ。今は終演直後ゆえ今年の開催における本当の検証は少し先の事になりそうだが、どうか最悪の結果にならないよう、ただただ願っている。

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