かがやき_書影

『かがやき』著者インタビュー

馳平啓樹さんの『かがやき』が刊行されて約一ヵ月が経過しました。自身の作品をまとめた初単行本が世の中に出て馳平さんの環境や心境はどう変わったのか、『かがやき』へ寄せられている数多くの反響をどのように受け止めているのか、『かがやき』刊行後一ヵ月の今の率直な気持ちを色々と質問してみました。

1.初単行本が世の中に出て一ヵ月経ちましたがその反響をどのように感じていますか?
単行本を出すことで初めて私を知ってくださった方の反応が嬉しいです。雑誌に作品を発表していた状況と違って、いろんな方に読んでいただけることで読者の幅が広がっている実感が特に大きいですね。

2.イベントを大阪と東京で二回行いましたがその感想
多くの方に参加していただけて嬉しいです。特に読者の方の顔がその場で見られることが嬉しいです。

3.書店訪問をして書店員さんの声を聞いた感想
書店員さんが能動的に自分の本を注文してくれて、その本を「売りたい」という意思を持って取り扱ってくれていることが嬉しいです。

4.新聞・雑誌・ラジオ等のメディアで取り上げられることの感想
「作品集」という形で紹介してもらえるので、収録作の関連性を論じてもらえることや、読書家の方だけではなく小説にあまりなじみのない一般の層へ向けて紹介してくれることも有難いです。

5.今回の単行本のテーマは「労働」ですが、自身も兼業作家として普段製造業に従事していることを踏まえて、『かがやき』を読んだ読者に伝えたかったことは?
働くことのポジティブなことやネガティブなことも経験していますが、その私なりの視点を読者へ伝えたいです。たとえ辛い環境にいたとしても人間は強いものだということを伝えたいと思っています。また、それとは別に、仕事の悩みは仕事で解決するしかないと思っているんです。でも、他に解決方法があるとすれば、同じ境遇の人の小説を読むことだとも感じていて、読者にも『かがやき』を読んで「自分は一人じゃない」と思ってもらえればいいなと願っています。

6.『かがやき』収録作で著者が思う読者へのオススメは?
全てオススメですが、私自身に興味を持っていただいているのであればデビュー作の「きんのじ」です。デビュー作には作家の本質が濃縮されていると思っているので。また、「梨の味」が現状の最新作で、今の私の関心が詰まっていて実験的な要素もあるんですが、ぜひ読んで欲しいです。

7.単行本の表紙の装画の感想(装画はイラストレーターの高杉千明さんに手掛けていただきました。)
私の友人や知り合いから表紙の人物に(自分が)似ているってよく言われます。高杉さんは私の写真等は見ないで作品を読んだ想像で表紙の人物を描いてもらったんですが、本当に似ていると言われます。また、コンビナートや工場の風景もよく表してくれていると思っています。

8.推薦帯文についての感想(推薦文は小説家の吉村萬壱さんに執筆していただきました。)
私の主題の一つである「製造業」というキーワードを前面に打ち出してくれて有難かったです。特に、“人生は悉く「製造業」である!”というフレーズで、この小説の内容が普遍的で誰にも関りがあるものだと示してくれたと思っています。

9.今後の作品で取り扱いたいテーマは?
「働く」という軸足はずらさないと思いますけど、「生きる」とはどういうことなのか。ということを常にテーマにしていきたいと思っています。

10.最後に読者へのメッセージをお願いします。
働くことの辛さや喜びも含めて何かを見つけてくれればいいのかなと思います。悲しみの中の希望、人が誰しも持つ“かがやき”を少しでも感じとってもらえればと思っています。

かがやき・書影・帯

著者プロフィール
馳平啓樹(はせひら・ひろき)
小説家。1979年大阪府に生まれ、奈良県にて育つ。京都大学法学部卒業。2011年、「きんのじ」で文學界新人賞を受賞し、作家活動を開始。製造業に従事する傍ら、独自の目線で小説を発表し続けている。

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