この世で一番嫌いな言葉は「素敵」である。
嫌いすぎてタイトルにその言葉を並べるのも嫌すぎて○○と書いてしまったくらい嫌い！いまや日本において「美容院は信号機の数よりある」と言われているけど、いまや「素敵」という言葉はあいさつよりも発せられているのではないか！


素敵です。
ほんとこの人の言葉素敵。
考え方が素敵。
○○さんの展示会素敵だったー。
えー！素敵！
すごい素敵な映画だった。


などなど。とりわけメールでやりとりしてる時とかに
こちらが何かアイディアかラフなり頭を使ったことを送った事に対しての返事が「素敵です」って返ってくるときのあの虚無感よ！「こちらが頭を使ったことに対してこの人頭使わず返して来たー」感よ！仕事しろよ！

もう少しして未来にスカイプでこちらから動画だけでなく衝撃も送れるとしたらPC殴りそう！私だけ？私だけかな私前世で素敵と何かあったのかな？！

「素敵」という言葉を使う時、あなたの脳は相当に怠けている。
素敵というなんとなくいいねな一言に片付けられて失われた、細かな意味の感情のヒダが、本当は無数に繊細に丁寧にあったはずの貴重なそのヒダが、
つるりと「素敵」によって、一緒くたになってしまうことで、それにすっかり慣れきってしまう事で、あなたの脳や感性や感覚や鋭い凄まじいあなただけのヒダが、すっかりなかったことになってしまうのだ！！！！！！！


7年前に私は、"「がんばります」という言葉を使うな"と上司に言われた。
「がんばります」と言う事で、具体的に何をします何をどう変えてどう行動しますという考え無しにくるりと全部曖昧に含めて「がんばります」の一言にひっくるめることで思考から逃げてしまい結局何も実行できないからだという。言わないというのは考えてないと同じ。中身がなんなのかわかってない風呂敷につつまれた何かを見ながらその中身について延々話すような宙に浮いた漠然感で、がんばりますと使ってしまう時点で、その人は1/10も"がんばれ"ない結果となる。


素敵はこれと同じ。私は脳がつるつるになってプラスチックになってしまうイメージが辛すぎて10年くらい「素敵」を使えないでいる。

・椎名林檎って素敵だよね。
・園子温って素敵だよね。
・伊香保って素敵だよね。
・そのアイディア素敵だよね。
・わかる！束芋って素敵だよね！！
・山崎ナオコーラ素敵だよね！
・大崎善生素敵だよね！
・大泉洋素敵だよね！
・鈴木一徹素敵だよね！


私たちの脳はSNSじゃない！
いいねを押すかおさないか、リツイートするかふぁぼるかだけじゃない！
わたしたちの脳は無数の言語と感覚を持って
しかもそれは一人一人ちがって、つまり人類のそれは無限！

蝶や動物の標本を作っている場合ではない。それよりも前に自分を知りたい。自分自身が生きているうちに、自分自身の感覚や言葉や感性のなかで、
まだまだ出会ってもいないものをできるだけ引き出す事が私は自分の任務ではないかとこの巨大なラスボス「素敵」を前にゴオオオオオオという地響きを耳に、果てしなく浦沢直樹に出てくる人物になった気分で思う。

ただ最近まで脳で「添付」を「そえつけ」と読んでいた私からのこの宣言こそまさに虚無かと！