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人生はミルフィーユの果てに(という名の元彼との思い出でしかないし厳密には元彼でもなかったごめん!)

きょう、映画館初体験の長男と、カーズの最新作をみた。

ちょうど10分後にカーズやる!と気づき息子と走ってスクリーンに向かったからだろうか、切らしていた息が落ち着いた頃に、いきなりおもいだした。

わたしは、いまから11年前、2006年、21歳の夏、
カーズの初回作を、今日とまったくおなじ映画館でみていたのだった。

25歳のサラリーマンとふたりだった。

わたしはその頃究極の自暴自棄で、というか大失恋パニックで、7キロほど痩せたてで、モテ倒していた。異様にナンパされるだけでなく身近な男友達にも立て続けに告白された稀な時期で、ただし失恋ハレーションで渦中のわたし自身はぼーっとしていたのだが、ぼーっとしすぎていて、当時働いていた居酒屋で、よかったらメールくださいと言われ名刺を渡されたお客さまサラリーマンがタイプすぎて、その夜にメールを送っていた。それで、その彼とはじめてのデートが、この映画だったのだ。

なんの映画をみるかは決めていなかった。ドライブしていて、映画でもみにいこうという話になった気がする。その頃上映されていた映画はたしか、アクションとラブコメとホラーだった。で真面目だからいま立ち止まって検索したら、パイレーツオブカリビアンとハチクロと着信アリあたりが同時期のヒット作で、それらとカーズが、選択肢だったんだと思う。

わたしは、社会人とデートするのがはじめてな女子大生だった。
いまでもはっきり覚えている。わたしは、映画のポスター達の前で、どの映画にするか頭を超速回転させながら「このセレクトによって、他の子とは違うんだから!というアピールをしなくてはならない」と、超集中していたのだった。

失恋によりたまたまビジュアルはメンヘラより相当ナチュラルになっていたこともあり、わたしはふつうの女子大生だと思われていそうで、ふつうと思われたら恥!勘違いしないで!あたしは特別なんだから!と全身全霊で彼に伝えようとしていた。

そして、これもハッキリ覚えている。
わたしは、オーソドックスなラブコメや、流行りのホラーや、ミーハーな海賊映画なんか選ぶ女じゃないんで。ここで、あえての、カーズにいっちゃう女なんで!!!!!と、ねじれた壮絶な自信結論のもとあの日、満を持して、カーズを選んだのだった。

結局、蓋を開ければ彼には実は本命彼女がいた。
彼の携帯を盗み見て知ることになったのだが、あの日ハチクロでもパイレーツオブカリビアンでも何の映画を選んでいても、わたしは浮気相手にすぎなかったのだ。

必死の選択って、まじで当人にはおおごとだ。
あの日わたしは、進路レベルで真剣に「この恋はこの映画セレクトにかかってる」「わたしの人生はこの恋にかかってる」と信じてた。でも最近思うのだ。振り返ると人生って、あんまり、何か一点にかかってることって、ない。この瞬間が人生を変えた!って、金メダルとった人ならいいたいかもしれないけど、すべてはたくさんの1秒が積み重なっているにすぎない。

息子と、ノリで映画館にいき、ノリでカーズをみて、ノリでラーメン食べて帰った。選択に神経つかわなすぎる日々だ。こういう何気ない日々がミルフィーユ的につらなって、何千もの連なり気分によって、つぎの現実ができる。もしたったいま重大な何かに関して「どっちを選ぶ?!」と真剣に悩んでいる人がいるとしたら、その選択一点が人生を左右するなんて幻想から解き放たれて楽にノリで選んでもいいのかもよと思う。

意外だ。
実質1ヶ月くらいしか一緒にいなかった、最悪と思ってた彼のことを、そして、「辛いけどこの彼を忘れることは人生にとって重要な決断!」と別れた彼のことを、わたしはもう何度かじわじわ暖かく思い出している。彼とわたしはそれぞれこの10年で何千ミルフィーユ重ねたんだろう。二度と会わないであろう相手と自分にたった1枚同じ層が挟まっているという甘さのことばっかり考えていた、きょうの一層でした。

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