(1)処女の恋【いまだすべての恋が思い出にならない】


はあちゅうさんの新刊「いつかすべての恋が思い出になる」の表紙アイテムを、いまだすべての恋が思い出になっていない私が代表を務めるshyflowerprojectが手がけさせていただきました。

これを機に、すべての恋を思い出にしていくために、一旦思い起こせる限りのすべての恋と向き合ってみる連載をはじめます。長短、濃薄、ひどいやつ、かわいいやつ、様々な種類の恋を、眺めてってください。

※詳細をかなり省いているものもありますがすべて実話です
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(この第1話、改題しました)



  「処女の恋」

「ツーカー」という会社の携帯を持っていた。いまでいうauだ。

普及しだしたばかりのそれを持つ14歳の私は処女で、学校では誰が処女を卒業したかという噂に耳をそばだて、かといってそんなことは気にしていないフリをして、処女喪失済の派手なクラスメイト達になにげなく感想を、繰り返し聞いて回っていた。


「よかったらメル友になりませんか?」

スカイメールという、多分Cメールみたいなもので、知らない相手から何通もメールが届いていた。ケータイを使い始めたばかりの私は、そんな知らない人からのメールを「怖い」より「サプライズ」みたいに捉えているところがあった。処女であることに焦り、ロマンチックに処女を失う想像をし続ける処女だった私は、「よかったらメル友になりませんか?」と適当な番号宛にメールを送ってしまうような相手ですら処女喪失ロマンチック候補と認定し、胸を高鳴らせながらメールを返信した。盲目な処女だった。

彼は、35歳だった。
メールを始めたその頃私は1週間くらい入院していたこともあり、手元は毎日暇で、かなり頻繁に彼とメールしあうようになった。その頃多分同じようなはじまりで4人くらいと連絡を取っていたのだけど、そのうちもう1人は他の回で登場する。

彼は、中学生の私を馬鹿にすることもなく、仕事が上手くいっていないという悩みも素直に語ってくれる大人だった。20歳以上歳が離れている男性に心を許されている気がして、自分が急に大人になったように感じていた。

「顔写真を送って」と言われると、平気でバンバン送っていた。彼に写真を送ってというと「恥ずかしいから無理」とあしらわれ続けたが、私は、実家の片隅で、いかに自分がかわいく写るかと工夫して必死で自撮りするようになった。

退院しても、1ヶ月たっても、彼とのメールは続いた。たまに、親に隠れて電話もするようになった。素直に「かわいい」と言ってくれたり、やさしく話を聞いてくれる彼は、学校の男子達とは違う落ち着いた空気で話してくれるので、私は、彼が私を、知らない自分にしてくれる気がした。

「声が聞けて嬉しい」「寂しい時間があった」「メール嬉しかった」と話す彼の素直さは淀みがなさすぎて、私たちはそれぞれの日常での悔しさやモヤモヤなどの湿り気を、雨に濡れた子犬の水分を分厚いタオルで吸い合うように、ジュッと拭いあっていた。


付き合いたいと思うようになって、同じようなタイミングで、彼からも付き合いたいとメールが来た。付き合おうということになって、知らない14歳と付き合う35歳である彼は「これって犯罪じゃない?笑」と笑っていたが、まんざらでもなさそうで、純粋に嬉しそうだった。わたしは彼の顔を知らなかったけど、その時点で連絡を取りはじめて3ヶ月くらい経っていて、すっかり付き合えたのが幸せで、もうどんな顔でも好き、と思っていた。

「絶対に嫌いにならない?ほんと、かっこよくないからね?」
と言われるやりとりが何十回も続き、ある日彼が、顔写真を送ってくれることになった。なぜかケータイではデータが大きすぎて送れないからパソコンに送る、と言われて、パソコンのメールアドレスを教えた。わたしは楽しみで楽しみで、何度も受信ボックスを見て、彼から添付メールが届いたことを確認して、数時間、心を高鳴らせ、あえて開かずに過ごした。

意を決して、家族とともに使っていた大きなパソコンの前に座り、深呼吸をして、メールを開くボタンを押した。夕方だった。ロマンチックな秘密は、隠しておこうとしている癖に、どうか誰かに知られたい。わたしはわざと、家族がパソコンのあたりを行き交っている時間帯に、そのデータを開いた。

本当にデータが重かったようで、画像の上から、少しづつ、彼の顔が表示され、はじめた、途端、わたしは目を見開き画像データを消しメールを消しゴミ箱フォルダも全消去しパソコンを強制終了してケータイで彼のメールを受信拒否して着信拒否した。

今思えばなんてことはない、35歳しては少し老けている、太って髪が薄めになったおじさんだった。だけど私は、「よかったらメル友になりませんか?」と適当な番号宛にメールを送ってしまうリアルな30代男性を想定していなかったのだ。着実に築き上げた恋は、顔面の1/3までを見た瞬間に、一瞬で消えた。

というこんな恋も思い出になるって、この本を見たら思える。はあちゅうさんの新作「いつかすべての恋が思い出になる」2月24日、発売です。(おもしろすぎる!予約必至!)プレゼントキャンペーンもあります!詳細ははあちゅうさんのnoteでも確認!応募方法はこちら

こんな感じでこの連載、ひたすら恋を振り返ります!次回も読んでね!


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(バナー写真:表紙写真より 撮影 yansuKIMさん)

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スイスイ

いまだすべての恋が思い出にならない

はあちゅうさんの新刊「いつかすべての恋が思い出になる」の表紙アイテムを、いまだすべての恋が思い出になっていない私が代表を務めるshyflowerprojectが手がけさせていただきました。 これを機に、すべての恋を思い出にしていくために、一旦思い起こせる限りのすべての恋と...
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