スイスイの想定外.6「限りなくあれに近いあれに引き寄せたあそこ(逆子編)」
出産予定日2ヶ月前。お腹はぱんぱん。
胎動にすこし、変化を感じるようになっていた。
"なんかいままでおなかをけられてたのに、
太ももの付け根あたりを蹴られるな"
と思っていて、おなかより肉が少ないからなんか蹴られてる感じなんていうかダイレクト!ダイレクト!と思っていた。
超順調に来ていた妊娠生活も36週、
もう来週から名古屋に帰省〜というタイミング、
東京での最後の診察ということであまりに意気揚々、
揚々すぎて手みやげいるかなと思ってたくらいの揚々で上がった診察台、
いつもどおりのエコー、ふーんとしていたら、
それまで半年以上、ほぼ無口だった院長が
3言声をあげた
「はーい大丈、、、・・・・え?」
「あ れ ?」
「 まずいなッ 」
【逆子になっていたのでした】
※(逆子とは・・・本来頭が下向きに成っていて頭からうまれてくるはずの赤ちゃんの頭が上にある状態。逆子の場合ほぼおなかを切って生む帝王切開となる)
そう、お腹の上を蹴られていたはずなのにある頃からダイレクト太ももバーンになったというのはまさにまさに本来上にあるはずの赤ちゃんの足が下にあるということを表す完全な証拠でありそのままだと足から産まれてしまうのでありそれをwktkで見守っていたなんて!まじ早く気づくべきだったのである。
この時点で赤ちゃんはかなり大きくお腹に隙間がなく動きにくいはずでありこのタイミングではじめて逆子になるなんてと驚く院長。「これは帝王切開かも」「名古屋の病院に連絡しなくては」「名古屋帰省は一週間後にしたほうがいい」など緊急事態と言ってくる。
え?え?なに?わかんない wiki?wikiひらけばいい?
と帝王切開の知識ゼロの私がうろたえる中、
先生が言った二言(の合間の溜め)
があまりにもビックコミック風だったのでお届けしたいのですが
「ただ、、、、ひとつだけ、なおるかもしれない
方法があります」
ゴクッ・・・
ただひとつだけ・・・なおるかもしれない・・・
方法・・・?
「、、、なんですか?・・・」
私はきいた。勇気をだしてきいた。はっきりとほとんど震えていたパニックの中高揚していた自分が明らかに何か大きな岐路に立っている事は感じていた。直感だった。人生にはいつだって訪れる、しかも突然、空に巨大な穴があいてしまったような事態が突然音もなくやってくる。私はいまそこにその目の前に立ち尽くしているのだ覚悟するのだ、わたし、わたし、わたし!
これはよっぽどの高額テクノロジー提案にちがいない、もしくはよっぽど倫理感揺さぶられる系、もしくはまじ私の人生価値観ぬりかえられる系、振り返ったとき語りたくなる系、もしくは決して語りたくない系、武勇伝系、とにかくその大決断をする事はわたしの命にもこの子の命にもかかわるそんな大それた処置系、にちがいないちがいないちがいない。
そして先生は二言めをはっきりしっとり言った。
「お灸です」
と声にだしていた私。
「挑戦してみますか?」とまじめにきく先生。「え、あ、はい」という私。「ここから1分のところにそのお灸があるから今すぐに向かいなさい」という先生。速攻行く私。
安産灸と書かれたそこには
限りなく聡明に近いクルーがいたのでした
つづく
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