なぜ私たちは喋る「はあちゅう」から目が離せないのか?2017


わたしが「喋るはあちゅう様(以下敬称略)」にザワつき出したのは、2015年の春だった。もう1年半も前になる。(以下参照)


当時テレビでの「喋るはあちゅう」の特異性、その凄みについては整理できていたのだけど、なんと昨夜ついにとうとう、はじめての生「喋るはあちゅう」を観覧し、これまで(著作でもネプリーグでもyoutubeでも小説三部作でも)まったく発見できなかったことに気づいたのです。



はじめて生「喋るはあちゅう」をみた昨夜。
場所は #cakesnotenight だった。彼女が参加する企画は「セックスが出来そうでできなかった場面」についての漫画朗読に対し、結局<やれたか、やれなかったか>をはあちゅう氏含めた審査員が判定するというもの。


はじめの漫画は、<「君の家でふたりきりのときガンダムみたい」と言われた童貞が部屋で女性に耳元を見せられる>というやつ。他ふたりの審査員が先に感想を答えた時点で、会場の空気は生ぬるくやわらかい美味しい、ういろうでした。3人目の審査員コメントとしていよいよ、はあちゅう女史の番。

彼女は一言「これは典型的な童貞いじりですね」と言った。
そのとき。わたしには

糸でスパーーーーーーーーーーーーンと土を切り柄を出す「練りこみ」という伝統工芸の画が浮かんだ。あるいはういろうを潰さずにサクサク切るよく研がれた包丁。凍ったマグロを切る主婦。あのとき会場中が思ったことだろう。


「気持ちいい」

と。

それはほとんどASMR動画だった。(ASMR動画とは、見るだけで脳を快感に導く動画のこと。前述の練りこみ動画がまさにそれである。)その後も彼女が「女にはめちゃくちゃにされたい夜がある」「だから童貞は童貞」など話すたびに、わたしが、いや会場中が、気持ちいい!気持ちいい!気持ちいい!のまるでASMR体験会。


匠が過ぎる。わけがわからないくらいきもちいい。
そもそも切られているのは何なのか?会場か?出演者か?客か?
いや、そのすべてを、さらに間や客の期待や感情や予想や流れなどすべて含んで構成されているその場限りの、「空気」ではないか。空気がミリの狂いもなく的確に切られている。

ただし空気は随時変わる。彼女が持つのは刃物ではない。砥ぎ石だ。そのときのその空気を最も美しく切れる、そして切った後確実にその柄が「はあちゅう!!!!」となる、余分な言葉をすべてそぎ落とし研磨しまくり、とがりに尖った切れ味を生み出し会場中の空気をa.k.a冷凍マグロを、サクッッッッと切ってしまう、それを叶える、研ぎ石。



特筆すべきは刃物自体を持っているわけではないということ。むやみやたらに何かを切りたい!刺したい傷つけたい!などという刀野郎ではない。その証拠に出番直前挨拶したはあちゅう女史はかんぜんなる尖りゼロ過ぎのただの女神様だった。刃物を隠し持ってるわけではない。彼女は時と場合によって、「自分」を削り鋭利にも女神にも変える職人。感動。伝統。かまくらにいくと大仏を見に行く。少し駅から歩くけど、やはり見に行く。それと同じように、日本に訪れたらぜひ見てほしい砥ぎ技と言いたい。#東京オリンピック 

SNS時代でありながら、ただしこれはぜったいに現場でしか体感できないASMR。浅草寺より築地よりロボットレストランいくより、行くべきやつだよ?


ということで #cakesnotenight、レポートでした。
#cakesnotenightのレポートはもう1つあります。以下もあわせてよんでね。

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この世界からセックスが消えたなら
https://note.mu/suisuiayaka/n/nd92deb1f5539

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