永川投手

天国から贈られたエール!

カープの永川勝浩投手が、きのうズムスタの対日ハム戦で8回からマウンドに上がって、交代了。2回を投げて被安打2奪三振2失点0と好投した。

2016年5月25日以来2年ぶりのマウンドとなった永川投手。試合はカープの大敗となったが、最後を締めてブルペンにもどる彼にはスタンドから温かいエールの拍手が送られていた。

その光景を見ながら、夜空のカクテル光線の向こうからエールを送っている衣笠祥雄氏の姿が脳裏に浮かんだ。
「今日のように自信を持って投げなさい」
衣笠さんは、そう励ましてもいた。

以前も書いたが、元カープのストッパーだった津田恒美投手の没後20年にあたる2013年に、津田がよみがえってカープを優勝に導く物語「天国から来たストッパー!」を書いた。

そのときのカープの指揮官は衣笠新監督を決めていたのだったが、春のキャンプでのイメージをつかむために、何年ぶりかで日南のキャンプを取材した。いまカープの主軸となった鈴木誠也選手が入団した年だ。

キャンプ初日から何日か取材して引き上げてから、しばらくして入れ替わるように衣笠さんが日南を訪れていた。2月19日のことだ。

その日衣笠さんは「一番気になっていた」永川投手を激励するために、いの一番にブルペンへと向かっていた。

その時の様子をスポニチアネックスは、つぎのように伝えていた。

広島・永川勝が19日、OBの衣笠祥雄氏(66)から激励を受けた。3年間低迷する通算164セーブの元守護神は、日南キャンプを訪れた同氏から「ボールはいい。キャリアがあるんだから、自信を持ってやりなさい」と言葉をかけられた。

入団1年目の03年から右腕を気に掛けてきた衣笠氏は「ここ数年間は精神的に傷ついているが、いい時の姿をもう一回見たい。復活して、もうひと舞台つくってほしい」とエール。「自分で自分を追い込むタイプ」と、復活へ技術よりも精神面での強さを求めた。

津田恒美が没して10年後の2003年に入団した永川投手は、津田の後継ストッパーとなった。
その年に3勝3敗25セーブ。以後2年間はやや低迷したものの、06年から09年までの4年間は最後のマウンドを死守し、ほぼ30以上のセーブ数を記録していた。
通算セーブ数で津田の90を大きく引き離し、大野豊の138をも上回る165の球団記録保持者だ。

前記の記事で衣笠さんの思いを知った僕は、「天国から来たストッパー!」では、その年の開幕投手に永川投手を指名してもらうことにした。
ヘッドコーチでもある江夏豊ピッチングコーチに思いを伝えて、その奇策を実行したのだ。

那賀川(永川)を開幕戦に先発させる。それは衣澤(衣笠)からの強烈にメツセージであり、那賀川という投手を再生させる早道であり、(負け癖がついてしまった)チームの意識を変える特効薬になるだろう。

と。

作品では、残念ながら開幕戦をカープは落としてしまう。
ゲーム後に衣澤監督は那賀川投手にこう声を掛ける。

「那賀川、よく投げてくれた、合格だよ。これからも自信を持って投げてくれ」

きのうの試合後、衣笠さんはきっと天国からこれと同じ言葉をかけていただろう。

そんな衣笠さんの思いを生前に活字にしえたことは、光栄だった。



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