見出し画像

調香師マンガ〜グラースへの道〜第三部 後編[完結]

前回はこちら

さて、存在しない調香師マンガのあらすじ、第三部 究極の香水編(@グラース)後編です。

さて、「帝王」が父ではないことを知り、失意に沈む主人公の薫ですが、気をとり直し、香水作りに戻ります。

初心に戻り、香料を一つずつ嗅ぎ直し、組み立て直す作業に。
そして、薫はある事に気が付きます。自社農園の最高級ラベンダーを使っている筈なのに、何かが足りない。この香料では「永遠の愛」はできない。

薫は、既に仲良くなっていた、自社農園のベテラン職人を訪ねます。なお職人さんは、香料を抽出するゴツい機械をいじっているため、マンガに登場する時は常にゴーグルを掛けてます。何となく話の展開が見えてきましたね。
主人公に問いただされた職人は、丁寧に選抜したラベンダーから自分しか知らない特殊な製法で作ったという香料を渡します。通常のラベンダー香料は水蒸気蒸留法を用いて取得しますが、敢えて有機溶剤抽出法を用いて熱による成分変化を最小限に抑えたとのこと。
職人に、主人公は微笑みながら問いかけます。
「ゴーグルをとってください。あなたが僕の父親ですね?」
職人の目は、勿論ラベンダー色でした。
「いつから知っていた?」
「この香水は、特殊な香料を使用しないと作れないと分かった時からです。ラーゲン社の資料を調べても出てこないということは、個人的な関係かあった人間から入手したということ。あなたなら、自社農園で働いていますし、若い頃の母と会う機会もあったと思いました」

まあそんなこんなで、サユリはラーゲンの自社農園で働く若き香料職人ポールと秘密の恋に落ち、幸せな日々を過ごしていたが、ニコラとの関係が噂され屋敷を追い出された彼女を「ラーゲン社を敵に回すことはできない。親兄弟もここで働いてるんだ」と見捨て、失意の彼女はお腹に薫を抱えながら日本に帰ったことがわかりました。

なお、二人とも関係を秘密にしてたのは「何か恥ずかしかったから」程度で、大きな意味はなかった模様。あと、サユリはポールの、最高の香料を作るため全力投球するという、職人気質に惚れたようです。

「彼女は俺を恨んでいたか?」
「そんなことはないと思います。母はここで作った香水をつけていました。本当に恨んでいたら、嫌な記憶の染みついた香水なんて付けなかった筈です」

そんな彼に、ポールは一つのノートを差し出します。「俺は日本語が読めない。お前が持っているべきだ」と。
ノートには、サユリの日記が書かれていました。
「今日は、人生最高の日。大好きな調香をして、満天のラベンダー畑で、大好きなポールと初めて結ばれた。もし将来娘か息子が出来たら、今日という日を伝えよう」と。

薫は気付きました。「永遠の愛」という香水は、愛は一瞬であることを知りながら、それを永遠に留めようとする行為そのものであることを。

ノートとラベンダー香料を手に屋敷に戻った主人公は、何かを考え込みながら、香水作りを再開しました。

〜〜

さて、香水のお披露目。

審査員?として、偉いおじさんが続々と屋敷を訪れます。満を持して、主人公が再現した香水が出されます。

「こ、これは‥?」
「これは、我々が知っている『永遠の愛』ではない!?」
「どういうことだ、説明しろ!」

「僕は、『永遠の愛』を幸せな一瞬を香水に閉じ込めたものだと考えました。僕の幸せな一瞬。それは母の愛に包まれた幼児期の一瞬です。母の愛をラベンダーで、田舎の風景をパチュリとオークモスで表現しました」

「た、確かに、母の愛に包まれているような、田舎に帰ってきたような暖かみを感じる。ずっと嗅いでいたい香りだ」
「オリジナルにある特徴的なラベンダーの要素はしっかりと感じるぞ」
「し、しかしだからと言って、これはオリジナルとはかけ離れ過ぎている!再現には程遠い!」

混乱する審査員。
ここで、「帝王」が口を開きます。

「これは、ラーゲンの香水ではない」

場が凍りつきます。

「カオル、お前が作る香水は、あまりにも個人の記憶に依存しすぎている。我々ラーゲンが作るのは、普遍的な、世界に受け入れられる香水だ。
カオル、これはお前の香水だ。お前が作り、お前が世に出せ。ここはお前がいるべき場所ではない。さぁ行け!」

途中から、帝王ポールによる叱咤激励であることに気がついた薫は、感動に身を震わせます。

「サユリの時代は、東洋人が、女が、正規の教育を受けていない人間が、一人の力で調香して香水を生み出すことなぞ出来なかった。しかし今は違う!お前の力で道を切り開くんだ!」

え?サユリここで関係ある?とざわつく審査員の偉い人たちをよそに、薫は、グラースを後にします。ここで学んだことを糧に、自分だけの香水を作るぞ、と。

〜〜

前代未聞の調香師マンガ、「グラースへの道」はいかがでしたか?
まあ、そもそもマンガ自体が存在してないんですけどね。

なお、次回作は主人公の薫が香水砂漠と言われる東京で、ニッチフレグランスブランドを立ち上げるべく奮闘する「砂漠の薔薇」です。乞うご期待!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?