8/4(木)『日記初日と妻夫木聡』

 「クリエイター」と「芸術家」。「シナリオライター」と「脚本家」。職業を英語にするとスタイリッシュ感は出るが、その存在が軽薄になる気がするのは僕だけか。

 「ハイパーメディアクリエイター」と「診療放射線技師」。「クリスペプラー」と「団鬼六」。ずしり、とした重さがあるのは圧倒的に漢字だ。鈍器にしたとき、殺傷能力が高そうなのも漢字だ。同じ意味といえど、英語と漢字が与えるイメージは大いに違う。事実、昨今、僕個人はその両者には大きな隔たりがあることを実際にひしひしと感じている。…そういえば「昨今」も鈍器としては秀逸だ。殴られると刺さりそうだ。

何の話だ。

 さて、この記事は、そんな漢字と英語の間でフラフラしている人間が書く日記だ。そしてお察しの通り、中身も空っぽの文章だ。新しい価値観を提示も、現代を生きやすくする知恵も、知って得することも何もない。ほぼほぼ自分のためだけに書いている、ただの日記だ。種植えてない田園だ。意識ひたすら低い系文章だ。んが、皆様の知的好奇心を刺激する有意義な記事が蠢くnoteにも、薄ら笑いで読める不毛な文章が一つや二つあってもいいではないかと思い書き始めた次第だ。
 とにかく、意識が高くならないよう気を付けたい。少しでもためになりそうなことを書いたら、すかさず自分を罰していきたい。ムチとロウソクは手に届く範囲に常備。そういうスタンスでいきたい。

× × ×

 打ち合わせの予定が飛んだため、市役所へ赴いた。原チャの所有者名義書き換えのためだ。しかし、市役所行って驚いた。なんだ、この老人の多さは。年を取ると、そんなに市役所に用事ができるのだろうか。こちとら「行政」とか「社会」なんてものからは、なるべく縁遠く生きていたい人間だ。

 思い起こせば、2年前。30歳を目前にして長らくやっていた演劇をやめ、就活をしていた時期。最終面接で面接官に言われたのが「社会人としてどうだろう」。子供みたいな大人が溢れる小劇場界なるピーターパンの世界で、「いかに奇抜なことを言ってやろう」「どうやって相手を笑かしてやろう」とそれだけを考えていた僕には、それまでの持っていた常識の崩壊を告げる一言だった。

「社会人としてどうだろう」

 や、面接官が言っていたことに間違いはない。それは認める。超正論。微塵の隙もなく正しい。芝居のオーディションじゃないのだ。「この鉄仮面を被った二人の面接官を、楽しませてやろう!」そんなスタンスで面接に臨む29歳正社員経験なしの男を、誰が採用しようと言うのだ。

 もちろん、その会社には、落ちた。そして、ま、僕も、精神的に、そこそこ落ちた。29歳にして、大人にならなきゃ、と強く思った。

 ……そんな、そんな男が、だ。あまぁいあまぁ~いピーターパンの国に建築されれば3日と持たず爆破されるであろう「市役所」なんてものが好きなわけはない。

 だが、しかし、老人になれば、どうやらそうも言ってられないようだ。まずは、大事な場面で笑かしにかからない当たり前な大人へ。そして、軽いフットワークで市役所へ赴ける立派な老人へ。そうなろうと思った一日だった。

× × ×

 妻夫木聡とマイコが結婚した報道がニュースをにぎわせている。風邪をひいてへたっていた妻がその報道を見て「大変だ。ついにその時が来た。もう終わりだ。」と絶望していた。絶望は人に合わせてその姿かたちを変える。僕はその絶望にフィットしなかった。その後、妻は寝込んだ。それが風邪なのか、絶望のせいなのかは知らないが、多分、いや、確実に、風邪だと思う。
 現実問題、勝てないのは絶望より風邪。よくわからない教訓をひとつ得た。

× × ×

 妻夫木の結婚報道についてもう一つ。とあるニュースでは、妻夫木夫妻からの結婚に関するコメントを紹介した後、数か月前に別の取材で取り上げたビールの発表会かなんかに登場する妻夫木のVTRを流していた。その内容が妻夫木がビールを飲み「ああ……幸せです!」と叫ぶもの。このふたつのニュースを連続して見せられると、妻夫木が結婚したことに対し「ああ……幸せです!」と叫んでいるように見える。全く異なる事実を二つ繋ぎ合せ、あたかも一つの出来事と見せること。いわば歴史のアイコラだ。同じアイコラなら、僕はかわいいアイドルのおっぱいが見たい。僕は、そういう人間だ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?