酒はハラスメント

『あえて言おう、カスであると』(byギレン・ザビ)
酒の飲めない、酒が弱い、『弱き者たち』にとっては、酔っぱらいはそういう風に見えてしまう。
酔っ払いは気楽なものである。
酔っ払ってるというのを利用して、暴言を吐き、暴れて、周囲に迷惑かけて。
『腹を割って話そう』と脳天気に仰るが、その末路として介抱や相手をさせられるのは、弱き者たちなのだ。
『飲ませたあんたたちも悪い』に自動的に組み込まれるのは確信犯だとしか言いようがない。
これはハラスメント以外の何物でもない。
酔いが醒めた翌日は『憶えてない』でケロッとしてて、やぁなんて右手を挙げて爽やかな挨拶してようものなら殺意さえ芽生える。
『お前はなかなか腹を割らない』って...冗談言っちゃいけねぇ。
割れる訳などない。
割らなきゃ割らないで仕方がないくらいに開き直ってさえいる。
そしてその人との『限界距離』や評価は決まるし、お互いに不本意な関係が始まる。
若者は酒を飲まないって言うだろうけど、その前にそんな酒の飲み方してりゃ嫌がられるってことをわかっちゃいないのだ。
こんなカスやクズにはなりたくはない、時間と金をこんなことに注ぎ込むほどバカバカしいことはないと。
若者の時代をとうに通り過ぎた『弱き者たち』の私だってそう思うのに。

だったら、断われって話だろうけど、会社の業務の延長線上に酒席があったら断れるだろうか。
そう、断われない。
『弱き者たち』はそういうのを回避するための防衛戦を強いられる。
その場を逃げることに、同席しても飲まずに済むことに、飲むことを最小限にとどめることを。
初めて勤めた会社の面接は、『酒いけますか?』の質問には閉口した。
『いけません』って言ったら落ちるに決まってる。
言えるわけなどなかろう。
答えは嘘でも大丈夫ですって言わなきゃならなくなる。
嘘八百で入った結果、社長以下酒乱で、酒で仕事を取って来る会社だったことがわかる。
苦痛で仕方がなくて辞めた。
面接の旅が始まり、『なんで前の会社を辞めたのですか?』って聞かれて答えは決まっていた。
『酒です』と。
『はぁ?』って口には出さずとも目が訴えてる。
『酒ですか...』と口を開いてもらって詳細を話せば、困惑したままの空気が充満して終了。
結果は全敗。
酒席や接待が重要な位置を占める営業職でもないのにだ。
協調性云々を考えたらマイナスなのだろうか。
『酒で評価されない会社がないのかなぁ...』なんて思うこと幾星霜。
転々と食いつなぎながら流れに流れて、行き着いた先の会社がそれだとわかる。
そして誘われても断る余地が残されていることにも。
何らかの形で『酒で嫌な思いをしている』のがみんなどこかにあった。
無理には飲ませない、誘わないという暗黙の了解があったから。
『弱き者たち』の一人としてこれはありがたいことだった。
社会人なら抱え込むであろう数あるストレスの一つから解放された。




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